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『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は“革命的”作品 その凄さを解説

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 アニメーションに手描きのような風合いをプラスしていったことで革命を起こした『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)は、大きな話題となったことは確かだし、物量を飛躍させてCG本来の面白さをも追求した続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023年)も大きなインパクトを残した。だが、同じくソニー・ピクチャーズ アニメーションで制作されていた『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021年)のように、より手作りの風合いが追求された作品が、その進化を枝分かれさせている。

 本作の監督、ジェフ・ロウは、そんな『ミッチェル家とマシンの反乱』で、共同監督と脚本を手がけていた。つまり、ニコロデオン・ムービーズで手描きの質感を追求する作風をさらに進化させた、アニメーション史上の“最新形”が、本作『ミュータント・パニック!』なのである。ここまで複雑な手描きのアートを自由自在に動かした作品は、未だかつて存在しないのではないか。

 この試みは、じつは高畑勲や宮﨑駿が追い求めていた表現でもある。筆者が以前、三鷹の森ジブリ美術館企画展示 『映画を塗る仕事』展を取材したとき(※)に印象に残ったのは、宮﨑駿がイギリスのジョン・W・ウォーターハウスの油彩画に大きく影響を受け、そこにアニメ表現の理想を見出していたという、一部の展示内容だった。長い時代、アニメーションは複雑な色合いを表現できる背景に比べ、キャラクターをはじめとした動画部分はペタッとした平面的な塗り方が主流だった。ほとんどがデジタルでの制作に移行したいまも、手描きアニメーションは、そのような作風を踏襲したものが多い。だが、それは彼らがベストだと考える映像表現ではなかったのだ。

 高畑勲は、『かぐや姫の物語』(2013年)で、宮﨑駿は『君たちはどう生きるか』(2023年)の冒頭などのシーンにおいて、“全ての絵がそのまま動く”といった、フルアニメーション表現への憧れを実現させている。このような作風は膨大な時間と労力を費やさねばならないため、フレデリック・バックやアレクサンドル・ペトロフのような、数作のアニメ制作に人生の時間をほとんど費やす、ごく一部のクリエイターにしか完成させられないものだった。

 だがついに、そういった一部の“アートアニメーション”の枠を飛び出し、ハイクオリティな活劇が表現される劇場長編作品の一つの完成形として、全編が躍動する『ミュータント・パニック!』が出来上がった。これは大袈裟でなく、アニメーション表現に耽溺し、より複雑な絵を動かすことを夢見ていた多くのクリエイターにとって、積年の願いが叶ったものとして、その目に映るのではないか。

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 これはもちろん、ミュータントのキャラクターたちの面白さや、文字通りのニューヨークのアンダーワールドの雰囲気を見事に映像化した『ミュータント・パニック!』だけの成功にとどまるものではない。アーティストたちの創造性が、ほとんどスポイルされることがなくアニメーション化される時代が到来し始めたのである。この達成により、数々の新たな表現の可能性が切り拓かれた。われわれは本作『ミュータント・パニック!』を鑑賞することで、そのような革命的な技術革新の瞬間に立ち会っているのである。

参照
※ https://realsound.jp/movie/2018/12/post-295586.html

(文=小野寺系)

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