
ABEMAがおくるスペシャルプログラム「[ AMBIENCE TOUR ] sessions」にエレファントカシマシから宮本浩次が登場した。この新たな国際的音楽プログラムは、アコースティックスタイルのエクスクルーシブなライブをロンドン・アビーロードスタジオから現場の空気感そのままに届けてくれるプログラム。いわばABEMA版の「MTV Unplugged」とでもいえる企画だ。
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エレファントカシマシとしてのデビューから30年を超えた2019年からソロ活動を開始し、これまでカバーアルバムや1stソロアルバムの発表、ソロツアーの開催など積極的な活動を見せてきた宮本。そんな宮本がアコースティックセットで挑んだこのライブから感じるのは、ミニマルな編成だからこそ際立つエレファントカシマシのフロントマンとしての宮本浩次とは違った宮本個人としての存在感である。そして、その存在感の根幹をなすのは圧倒的な「歌」のパワー。このライブを目の当たりにすると、ひとりで歌と向き合う姿にこそ、ソロとしての宮本の姿があるように思わせられる。
宮本のほかにも長くバンドのメンバーとして音楽シーンの第一線を走りながら、ソロ活動で新たな魅力を見せるアーティストも多い。たとえばB’zのボーカリスト、稲葉浩志もそのひとりだ。1997年からソロ活動を続ける稲葉。すでに5枚ものソロアルバムを発売している稲葉だが、その作風はB’zのそれとは一線を画す。B’zの幅広いディスコグラフィーを前にして一概に言い表すことはできないが、比較的チアフルでポジティブな作品が多いB’z。そんなB’zの作風、特に稲葉の担当する作詞に対して、稲葉のソロ作品はかなり内省的なものが多い。ソロ作品では、腹のうちをひっくり返したようなドロドロとした感情を吐露する詩世界が繰り広げられるのだ。そんな内省的な雰囲気は、ライブパフォーマンスにも見てとることができる。派手なステージセットを背負い、ステージを所狭しと走り回るようなB’zのライブとは対照的にシンプルなステージセットで、稲葉のボーカル一本で勝負する気概を感じるソロライブ。今年2月に開催された『Koshi Inaba LIVE 2023 ~en3.5~』では、サポートメンバーにMr.Childrenの鈴木英哉(Dr)を招くなど、ソロならではの自由度の高い活動も印象深い。先にふれた宮本がソロ活動のステージで向き合ったものが「歌」であるとすれば、稲葉が向き合ったものは「自分自身」なのかもしれない。
そして、GLAYのTAKURO(Gt)もバンド活動を継続しながらソロでも活躍するアーティストである。2016年に初のソロアルバム『Journey without a map』を発表し、翌年にはソロツアーも開催したTAKURO。いわゆる「歌モノ」のGLAYの作品とは異なり、ソロではギターインストゥルメンタルを聴かせてくれる。もちろんライブでのアプローチもGLAYでのプレイとは一味違う。GLAYのライブではステージ上手を定位置とするTAKUROが真ん中に立つソロライブでは、TAKUROらしいキャッチーなフレーズはそのままに、ロックなアレンジからジャジーなアレンジまで引き出しの多いプレイを見せてくれる。ジャンルを横断したプレイスタイルだけでなく、サックスを組み込んだ編成にも挑戦するなど、GLAYのライブとは違った表情のプレイが印象的である。そして、言うまでもなくTAKUROがソロ活動のステージで向き合ったものは「ギター」だろう。一徹してギターと向き合いながらも、ソロ作品やソロライブならではの新たなチャレンジが垣間見える。
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このように通常のバンド活動と異なる魅力を見せてくれるソロ活動。特にソロライブでは、バンドメンバーとしてステージに立つ彼らの姿とは違った一面をうかがい知ることができる。個性が前景化する自由なソロでのライプパフォーマンスに注目してみることでバンドでの活動もより立体的に見えてくるはずだ。
(文=Z11)