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【クイズ】日本初の映画。観客が観たスクリーンではないモノって?

<らんまん>脚本・長田育恵氏が、最終週の仕掛けを明かす キーワードは「継承」

WEBザテレビジョン

神木隆之介が主演を務める連続テレビ小説「らんまん」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)。いよいよ、9月25日より放送されている最終週「スエコザサ」にて物語は完結する。WEBザテレビジョンでは、同作の脚本担当・長田育恵氏にインタビューを実施。キャラクター作りの裏側や、最終週の仕掛けなどについて明かした。

■「みんなの行方を丁寧に追っていける媒体は、とても私に向いていたと思います」

――まずは、全130回の“朝ドラ”の脚本を書き終えての率直な気持ちを教えてください。

本当にホッとしています。無事にやり遂げられて良かったですし、チームの皆さんの思いを損ねないものを最後まで紡げたのではないかと思っています。そして、チームの皆さんを裏切らなかったことが、一番ホッとしているところです。

――長田さんの中で一番長い期間をかけての執筆だったかと思いますが、プレッシャーはありましたか?

重圧はかなりありました。深刻な話ではありませんが、電車や個室など、自分の意思で出ていけない場所にいると少しパニック症のような症状が出るのですが、今回の話を受けて帰ってきた時に、自宅で症状が出たんです。朝ドラの仕事が、始まったら終わるまで出ることができないという巨大な密室に感じたんですよね(笑)。

ですが、具体的な作業が始まると、とても自分に向いている仕事だと感じるようになりました。

年間を通じて締め切りがあったり、プレッシャーにさいなまれ続けたりと、物理的なプレッシャーは消えることなくありましたが、とにかく私は登場人物と物語を考えることが大好きなので、みんなの行方を丁寧に追っていける媒体は、とても私に向いていたと思います。他にこうして長い時間を描き出せるドラマはあまりないので、貴重な機会を与えてもらいました。

■牧野富太郎氏は「万太郎のモデルではあるけれど、全く違う人物像」

――万太郎は、当時の男子としては所属意識が希薄で、どこに行っても通用するスキルに磨きをかけ、腕一本で世間を渡っていくような人物だと感じました。さらにそれが自分の一番好きなことであることが、非常に現代的な生き方をしているように思えます。初期の構想段階で、モデルになった牧野富太郎さんの中にそういった要素を見出していたのでしょうか?

はい。牧野富太郎さんから抽出したエッセンスがまさにその部分です。初めから偉人伝をやるつもりはさらさらなく、「草花を一生涯かけて愛した」というシンプルなテーマを持った一人の人物がいて、その人物を広場に見立て、彼の元に集まる人々や関係性、ネットワーク、それぞれの人生が咲き誇るさまを描き出そうと考えていました。

なので、モデルではあるのですが、全く違う人物像として作っていました。大きな違いとしては、万太郎さんは富太郎さんに比べて、愛情が深いがゆえに弱いキャラクターになっているところです。

寿恵ちゃんや子供たちなど、草花以外にも大事なものがたくさんあり、大事なものが増えれば増えるほど、彼の活動に対する矛盾が生じてくるんですよね。

ただ、日銭を稼ぐ方が二人にとって楽かもしれませんが、「この国全ての植物を明らかにして図鑑を完成させる」という途方もない夢を結婚の盟約として掲げていた二人は、最初からそこを求めていなかった。弱さゆえに矛盾を抱えながらも、寿恵ちゃんとの約束や、高知から送り出してくれたタキさんたちの思いを力にして、光の差す方に向かうという人物像になっています。

■お気に入りの“アドリブシーン”を明かす「『寿恵子、トライ!』は全話通しての彼女のテーマ」

――膨大な物語の中でも、印象深い登場人物やシーンはありましたか?

全部が好きで、どの人物にもどのシーンにも愛着が湧いているので難しいですが…。制作チーム・俳優と渡っていく過程でたくさん愛情をいただき、俳優の皆さんからもらうものがとても大きかったと感じます。

俳優たちから生まれたものとして分かりやすく楽しかったのは、神木さんの「ズギャン!」ですね。あれを言葉にしたことは衝撃的でした(笑)。とってもチャーミングでしたね。

万太郎の「ズギャン!」を受けて竹雄(志尊淳)も後半で「ズギャン!」と言ってくれてましたね。私が脚本に込めた思いを俳優たちがキャッチアップし、それをどうチャーミングに表現するかと工夫を凝らしてくれたのがとても面白かったです。

他にもとても感動したのが、ダンスレッスンを始めた時に寿恵子(浜辺美波)がクララ先生からプランクをさせられるシーン。寿恵ちゃんがアドリブで「寿恵子、トライ!」と言ったんです。先生が『キープ』と言ったあとに『キープ』と復唱して頑張る場面だったのですが、「トライ、寿恵子」と先生が言ったあとに、寿恵ちゃんも自分で「寿恵子、トライ!」と言ってくれて…。あれは寿恵子の産声でもあり、全話通しての彼女自身のテーマを自分で言ったなと思ったんですよね。

彼女にとって最終話まで「寿恵子、トライ!」の連続。自ら社会に踏み出し、最初に踏ん張ったところで出たアドリブが自分の生涯のテーマだったというところで、すごく感動しました。

■出来上がった映像を見てから具体的に肉付けを行ったキャラクターたち

――完成した映像や視聴者の反応により、当初思い描いていたものとは展開が変わったり、ここまで出る予定ではなかったキャラクターを出演させてしまったりということはありましたか?

宮野真守さん演じる逸馬さんに関しては「生きているか死んでいるかを知りたい」という声がとても多かったので、ちゃんと生存を確認していただこうという気持ちが働きました。

キャラクターについては、出来上がった映像を見てから具体的な肉づけが日々増えていきました。例えば、前原瑞樹さん演じる藤丸のキャラクター。初登場のシーンで、元々ト書きに「ウサギ小屋でウサギをかわいがる」と書いていたのですが、実際の映像を見ると、私が想定していた距離感よりももっと近かったんです。

ビジュアルで見せていただいたことで、藤丸くんの優しさや傷つきやすさが具体的に見えてきました。「つわりには揚げいもがいいんだよ」と万太郎に作ってみせるシーンも、彼ならそういう行動をするだろうとどんどん生まれてきました。それが全キャラクターにおいて発生していたと思っていただけたら。

■神木に対する印象は「唯一無二の方」浜辺については「寿恵子さんを演じる上でこれ以上ない女優さん」

――万太郎を演じる神木さんの印象はいかがですか?

やはり神木さんは唯一無二の方だなと思います。“朝ドラ”の主人公として最高に難しい役を、素晴らしいコントロールで演じ切っていただいていると感じています。言葉の力はもちろんですが、言葉以外のところでも万太郎が思っていることをすごく表現してくれています。

万太郎は、らんまんでありつつ壮絶に孤高な主人公です。孤高だからこそ繋がり合うことの愛おしさや切なさを誰よりも痛感しているキャラクターなので、そこを体現してくれていることが、本当にうれしいですしありがたいと感じています。

――ヒロイン・浜辺さんの印象はいかがでしょう?

寿恵子さんは、大変な道を歩む万太郎に対して、太陽のような、導き手のような、凛々しく、それこそ八犬士のような「寿恵子、トライ!」を続けていくヒーローだと思います。

寿恵子さんの明るい勇敢さと、そしてそこに悲壮感が全く漂っていないところが、寿恵子さんを演じる上で浜辺さんはこれ以上ない女優さんだったと思います。

■最終週の仕掛けを明かす キーワードは「継承」

――いよいよ最終週を迎えますが、物語の着地の仕方で特に意識したことはありますか?

最終週は、私の中で割と最初から決めていた仕掛けがあります。そして、最終週では「継承」が大きなキーワードになっています。

牧野富太郎さんが生涯をかけて集めた標本の点数は40万点以上。ただ、この40万点が資料として活用されなければ、標本は生きることにはなりません。活用させたことで初めて、それを元に世界各国と標本の交換ができるようになり、日本の植物分類学の基礎として機能し、絶滅した植物も標本にあたることで辿れるようになっています。

万太郎が図鑑作りを頑張り続けるのは、次の人たちに手渡すため。手渡せなければ意味がないので、最後は“手渡すこと”をとても重要視しています。

オープニングから万太郎は、出会った植物に「おまんは誰じゃ」と語りかけることを繰り返してきています。そして、植物が種を残してまた花を咲かせていくように、語りかけた相手をその先に受け継いでいく。

この物語では、槙野万太郎が、生きとし生けるもの全てのありのままの特性を見つめ、その特性を愛し抜くまなざしが全編を通して貫かれています。全ての登場人物が最後まで自分の冒険を続けていくことになります。それぞれの行方を楽しみに、最後まで見守っていただけたらうれしいです。
 
   

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