
魅力的なボーカリストは世にたくさんいるが、特に存在感を強めているのがSUPER BEAVERのボーカル・渋谷龍太である。この記事では、なぜ自分も含めて渋谷龍太に惹かれている人たちが増えているのか、考えてみたいと思う。
(関連:「なかなか気骨ある男だ!」と渋谷龍太を絶賛する長渕剛)
SUPER BEAVERは2005年に結成し、2009年にソニー・ミュージックレーベルズの内部レーベル EPIC Records Japanよりメジャーデビューするも、2011年に所属レーベルと事務所から離れてインディーズへ戻り、2020年にSony Music Recordsから再度メジャーデビューするというキャリアを重ねてきた。
メジャーからインディーズに所属が変わったタイミングで、潮目がガラリと変わったバンドである。SUPER BEAVERがインディーズに戻った当時、ロックフェスはダンス的なビートメイクとバンドサウンドで表現する「踊らせるロック」が存在感を強めていた印象だったが、SUPER BEAVERはそのトレンドには組みいらず、自分たちの表現方法を磨いてきたバンドだった。
具体的に言えば、SUPER BEAVERは拳を突き上げたくなるようなビートメイクと、渋谷龍太の力強いMCと真っ直ぐな歌声。これらを軸にして己の表現を追求していた。少しずつ穏やかに、でも確実に、場数を踏むごとにそのパフォーマンスに刺さる人が増えていった。2023年の夏フェスには11回出演するなど、ロックフェスには欠かせないバンドへと成長している(※1)。
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また、ライブアクトでも渋谷龍太が呼ばれたり、対バンを行ったりするケースはいくつかある。例えば東京スカパラダイスオーケストラのレギュラー番組として放送されていた『TOKYO SKA JAM “8”』(スペースシャワーTV)にゲスト出演して彼らとステージを披露したほか、対バン相手としてSUPER BEAVERが参加したスカパラの全国ツアー『Traveling Ska JAMboree 2022-2023』でもゲストボーカルとして「縦書きの雨」「めくれたオレンジ」を歌唱した。なお、同ライブの「めくれたオレンジ」の模様はミニアルバム『JUNK or GEM』付属のBlu-rayに収録されている。
UVERworldのTAKUYA∞とも関係性が深く、同バンドのツアー『UVERworld ARENA LIVE 2020』で「在るべき形」を披露した過去がある。 今年春、UVERworldが日産スタジアムでライブを行った際も、渋谷龍太がコメントを寄せており、それに対してTAKUYA∞がリアクションするなど、お互いへのリスペクトも感じられる。さらにバンドとしてはエレファントカシマシやサンボマスターのトリビュート作品に参加、ソロとしてもスタジオジブリのトリビュートアルバム『ジブリをうたう』への参加が発表されており、この実績からも渋谷龍太がボーカリストとして支持されていることがわかる。
そして、意外なアーティストとの交流も。直近では長渕剛が自身のInstagramにて渋谷龍太と肩を組んだ写真を投稿し話題に。投稿の文面では長渕が渋谷のことを「この時代のヒーロー」と評した。また、木村拓哉や松任谷由実といったアーティストのラジオ番組にも呼ばれていることから、ロックアーティストとしての渋谷龍太に惹かれ、「今、話してみたい」と感じさせる要素がいくつもあったことを感じさせる。
渋谷龍太のボーカリストとしての魅力は大きく分けて二つに集約できると思う。ひとつは、ロックバンドのフロントマンらしい堂々とした佇まい。SUPER BEAVERのライブを観たことがある人であれば、渋谷のMCの熱さや、言葉の真っ直ぐさを実感する人も多いはず。熱量を持った言葉で、自分の主張や想いを言葉にしていくアーティストだからこそ、ファンはもちろんのこと、気骨のある数々のアーティストの心を動かしてきたのではないか。
また、もうひとつの理由として、単に言葉に迫力があるだけではなく、純粋にボーカリストとしての歌声が魅力的であることも大きい。SUPER BEAVERのライブは“歌”の輪郭がはっきりしているのだ。なので、どんなライブ、どんなシチュエーションでも、歌詞を“伝わるもの”として表現していき、その胸にダイレクトに届けていく。音程の紡ぎ方にも迷いはなく、ボーカルが実に伸びやかで、言葉がのったメロディに躍動感を与える。ゆえに、歌詞の表情やメッセージが鮮やかになるし、「誰が書いた」かを超えて、自分の歌にカラーを変えていく。それが結果として、ライブのゲストとして招聘されたり、数々のトリビュートに参加したりする実績を重ねることにも繋がっているように感じる。
2020年にメジャー再契約を発表し、SUPER BEAVERはタイアップ作品も数々手がけるようになった。おそらく、今後はよりSUPER BEAVERないしは渋谷龍太というボーカリストの魅力に気づく人たちが増えていくように思う。その頃には長渕剛が言葉にしたような、“この時代のヒーロー”然としたボーカリストになっているのだろう。またその一方で、渋谷龍太は飾らないスタンスでライブハウスに軸足を据えながら、パフォーマンスを重ねていくように思う。大きくなりつつも、根本は変わらない。そういう部分にも、渋谷龍太が持つボーカリストとしてのカリスマ性を感じるのである。