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『キン肉マン』『北斗の拳』『シティーハンター』で主役を演じてきた神谷明の“変化”

Real Sound

 そして翌年、『北斗の拳』のTVアニメがスタートする。そこで、喋れば野太く、叫べば怪鳥のような奇声を繰り出す“マッチョなブルース・リー”といったような役を演じて、もう一段の“変化”を見せた。「お前はもう死んでいる」という決めぜりふから分かるように、感情を抑えながらも強さと凄みが伝わる演技がケンシロウには必用だった。それは、時にギャグを交えながら感情のおもむくままに喋るキン肉マンとは、まるで正反対の演技と言ってよい。

 そのケンシロウを神谷明は演じきった。『勇者ライディーン』の「フェードイン!」という高らかな叫びとはまるで違う、喉の奥から絞り出すようにして「あたたたたたたたたたたっ!」と叫ぶケンシロウの演技を見事にこなして、ケンシロウというキャラクターに漫画から抜け出してきたかのような存在感を与えた。驚くしかなかった。

 そうした“変化”をずっと聞いてきた耳には、もはや『シティーハンター』の冴羽獠は神谷明のその時点の到達点として、十分に理解できるものだった。面堂終太郎のような二枚目と三枚目を合わせ持ったキャラクター性があり、キン肉マンのような下ネタに近いギャグも時にはこなしつつ、ここぞという場面ではケンシロウのような強靱さをのぞかせ相手を圧倒する。1980年代の神谷明の“変化”が結実した存在が、冴羽獠だったのかもしれない。

 それだけに、当人の思い入れは強く、またファンの思い込みにも強いものがあって、他の声優へのチェンジを許さないところがある。もちろん、キン肉マンもケンシロウも演じ続けて欲しいが、2022年から放送された新シリーズの『うる星やつら』でキャストが一新されて、誰もがキャラクターにベストなマッチングを聴かせたように、『キン肉マン』も『北斗の拳』も新シリーズで一新されるなら、そちらがどうなるかを聞いてみたい。

 『シティーハンター』も遊技機で子安武人が冴羽獠を演じ、フランス版の実写映画では山寺宏一が吹き替えを担当したようなチェンジが行われたが、こと映画となれば、2019年の『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉 』も、現在公開中の『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』でも、神谷明がTVシリーズの時と同じキャスト陣に囲まれて冴羽獠を演じている。

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 往時のままかと言われれば、やはりどこかに年輪を感じさせるところもあって、軽さが必用なギャグに妙な深みがついてしまっている感じだが、逆に凄みをみせるところでは、年輪が大いに発揮されていて、これぞ凄腕のスイーパーといった存在感を放ってくれている。それは、次に待ち受けるだろう海原神との決着を描くクライマックスに向けて、とても重要となるものだ。

 冴羽獠が過酷な日々を経てたどりついた新宿で、槇村秀幸から託された香を守りながら持ち込まれる騒動を解決していくシリーズを作り続けるのなら、あるいはキャストの一新もあり得たかもしれないが、“変化”の先で生まれたアニメ版『シティーハンター』の冴羽獠という役に決着がつくのなら、それを自分自身でやらない道はない。『名探偵コナン』の毛利小五郎役を紆余曲折あって降板し、面堂終太郎役もケンシロウ役も後進に譲っても、冴羽獠役だけは演じ続けるという覚悟が、『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』の演技からは漂ってくる。

 だから観るしかない。この映画を。そして待つしかない。次の映画を。そこで聞かせてくれた声がもし、さらに“変化”するとしたらどのようなものになるのかも含めて、レジェンド声優の神谷明がこれから繰り出す声の技を、期して待て。
(文=タニグチリウイチ)

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