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バカリズム×松田龍平による最高のコメディ 『ケンシロウによろしく』が“運命的に”面白い

Real Sound

 例えば、『恋の門』という映画がある。大人計画の松尾スズキの初監督作である、コメディ映画の傑作だ。

 “石で漫画を描くことに執着する自称漫画芸術家”というのが、松田龍平の役柄である。もちろん、バカで童貞だ。バカで童貞の役に、“松田優作の息子”という超サラブレッドを抜擢した松尾スズキの先見の明は、さすがである。

 この作品が素晴らしい理由は、全力で、命を懸けて、誠心誠意バカをやっているところだ。その姿勢の真摯さには、笑いを通り越して感動すら覚える。

 バカは、真剣にやるからこそ価値がある。監督や演者が、ゆる~くヘラヘラしながら「バカっぽく」見せているだけの映画やドラマには、1円の価値もない。2004年公開の『恋の門』から20年近く経った2023年、やっと全力でバカをやっている映像作品を観ることができた。

 それが、9月22日からDMM TVにて配信される、『ケンシロウによろしく』である。しかも主人公を演じるのは、『恋の門』の松田龍平だ。さすがDMM様、よくわかっていらっしゃる。

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 そして、脚本はバカリズムだ。完璧じゃないか。

 ヤンキー漫画の世界観をそのままOL社会に持ってきた、映画『地獄の花園』の振り切り具合。あれはまさに、命懸けのバカだった。

 またバカリズムは、同じく脚本を担当した映画『ウェディング・ハイ』において、あのEXILEの岩田剛典にウンコを漏らさせた男でもある。

 この作品中の岩田剛典も、「男前でバカ」である。「見るからにバカっぽいバカ」より、「男前なのにバカ」な方が、より純度の高いバカと言える。「バカっぽいバカ」を見ても、「ああ、見た目通りのバカなのね」としか思わない。だが「男前なのにバカ」を見ると、その落差による喜劇性、ひいては悲劇性まで醸し出してしまう。

 これは筆者の想像だが、「自らの脚本作にEXILEが出る」と聞いたバカリズムは、あえてウンコを漏らすシーンを書き足したのではないだろうか。「ウンコを漏らすEXILE」というシチュエーションには、男の浪漫をかき立てずにはいられない何かがある。

 かと思えば、2022年冬ドラマで放送された『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)のように、笑わせて最後には泣かせるような、そんなホンも書いてしまうのだ、バカリズムは。このドラマにおける、リアルで自然な会話の中にさりげなく挟み込まれた笑いには、中毒性があった。安藤サクラと夏帆と木南晴夏の「どうでもいい雑談」を、永遠に聞いていたい。

 だが、今作『ケンシロウによろしく』の会話には、そんな“自然さ”は微塵もない。

 この2つのドラマは同じコメディでありながら、ひとりの脚本家が書いたとは思えないぐらいに趣きが違う。「シリアスもコメディも書ける」という脚本家はいる。だが、「まったくテイストの違う笑い」を書き分けられる脚本家は、稀有な存在なのではないか。

 松田龍平も、体さえ鍛えれば、そのまま本当のケンシロウ役もいけそうなぐらいにカッコいい。だが彼の演じる沼倉孝一が、北斗神拳を(独学で)学んでやっていることは、風俗嬢・里香(西野七瀬)に“真のマッサージ”を教えて弟子にして月給100万円で雇ったり、妻とやりたくて仕方がない社長・野田(斉木しげる)のEDを秘孔で治したりといったことばかりだ。

 特にこのED治療のシーンは、おそらくバカリズムも全身全霊のバカを込めて書いたはずだ。そのバカリズムの魂を込めたバカに、松田龍平だけではなく、大ベテランの斉木しげるまでもが、バカにはバカをもって応えている。

「てめぇらに、今夜を楽しむ資格は、ある……!」

 副交感神経を刺激し、血流を良くする「八髎穴」というツボに百裂拳を叩き込む沼倉。徐々に膨らんでくる野田の股間。「勃ってる! 勃ってるよ!」喜ぶ野田……って、70歳過ぎた爺さんが西野七瀬に何を見せつけてるんだ。

 「お前はもう勃っている」ケンシロウそのままに決める沼倉……って、40歳過ぎたおっさんが元乃木坂のセンターの前で何をやってるんだ。

 筆者自身、「いったい何を見せられているんだ」と思うようなシーンだ。だが、このシーンを書いた張本人であるバカリズム自身、筆者とほぼ同年代である。「同年代の人間がこんなにもバカなシーンを誠意を込めて書き上げたというのに、俺はいったい何を日和っているんだ……」と、筆者は自らを恥じた。

 「もう年だから……」と日和ってしまうぐらいなら、人間はいくつになってもバカのままでいい。バカリズムに、そう教えられた気がした。

 ところで原作の沼倉孝一は、長年の鍛錬によりケンシロウと同等の肉体を作り上げた。これが鈴木亮平なら、あるいは“王騎将軍”の大沢たかおなら、きっちり体を作り込んでから撮影に臨むことだろう。

 だが松田龍平は、インタビューで「筋トレしたけど間に合いませんでした」と、悪びれもせずに答えている。この温度感、このテイストこそ、松田龍平が松田龍平たる所以である。「龍平は一生そのままの龍平でいてね」と、筆者は彼女気分で願っている。

 『北斗の拳』作画担当・原哲夫によると、ケンシロウのモデルは「ブルース・リー+松田優作」である。

 松田優作にインスパイアされて生まれたキャラがケンシロウだ。そのケンシロウにインスパイアされて生まれたキャラが、沼倉孝一だ。そして沼倉孝一を演じるのが、松田優作の息子・松田龍平である。これは単なる偶然ではない。運命だ。

 原作において、筆者がいちばん好きなシーンがある。夢の中で沼倉とケンシロウが出逢うシーンだ。嬉しいことにバカリズムもこのシーンが好きで、「ドラマに入れさせてほしい」とお願いしたらしい。

 これはつまり、「ケンシロウが初めて実写映像化される」という、歴史的快挙でもある(1995年のハリウッド版については、忘れた方が賢明だ)。ケンシロウ役のキャスティングは、まだ発表されていない。それを観るまでは、死ねない。

 てめぇらに(そして筆者に)、このドラマを楽しむ資格は、ある。

■参考
※ https://realsound.jp/movie/2023/08/post-1390361.html
(文=ハシマトシヒロ)

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