黒川博行の傑作小説を原田眞人監督が映画化した『BAD LANDS バッド・ランズ』(9月29日公開)で、安藤サクラと山田涼介が姉弟役として登場。特別な絆で結ばれた関係性を、息ぴったりに表現している。MOVIE WALKER PRESSでは、本作を鑑賞したお笑いカルテット「ぼる塾」のきりやはるか、あんり、田辺智加にインタビューを敢行。
インタビュー前編では、安藤演じる力強く生き抜く女性、ネリへの憧れを自分たちの経験談を交えて語ってくれた。後編では、「山田さんの見たことのない姿を目撃できる映画!」とも太鼓判を押した3人が、山田が挑んだ新境地の印象や、宇崎竜童や天童よしみら個性豊かな俳優陣が体現した、濃すぎる登場人物たちに感じた魅力を語ってもらった。
■「ジョーの儚さは、山田くんだからこそ表現できたものだと思います」(田辺)
本作は、特殊詐欺に加担するネリと弟のジョー(山田)がある夜、億を超える大金を手にしてしまったことで、様々な巨悪に狙われる姿を描くクライムサスペンス。ネリとジョーが危険の地から逃れることができるのか、二転三転する予測不能なストーリーが展開する。
――本作では役者としての活躍も目覚ましい山田さんが、純真無垢なサイコパスであるジョー役でさらなる新境地を開いています。
田辺「びっくりしました!」
きりや「めちゃくちゃカッコよかったし、サイコパスな役までできるなんて!それでいて、かわいいなと思うシーンもたくさんありました」
あんり「ジョーは銃を持つと手が震えてしまったり、ダサい一面もありますよね。最初は、“決断力があってカッコいい姉のネリ”と、“ネリに迷惑をかけるダメな弟”のコンビという印象で、『ジョー、なんでそんなことやっちゃうんだよ!』『また調子に乗って!』とダメダメなジョーにツッコミを入れながら見ていたんです。私も弟がいるので、姉の気持ちになってしまって。いつもはキラキラとしている山田さんですが、ジョー役ではちゃんとダサいところはダサく見えて、本当にすごいなと思いました」
田辺「山田くんは、どんな役でもできるんだねえ。本当にすごいよ。ダメダメなジョーだけど、だんだんとネリに執着する理由が見えてくるようなところもあって。ジョーからにじみでる儚さは、山田くんだからこそ表現できたんじゃないかという気がします。山田くんは以前、原田監督の『燃えよ剣』に新撰組の沖田総司役で出演していましたよね。私はもともと沖田が大好きなんですが、あの映画のキャスティングは『最高!』と思いました。山田くんの儚さが、沖田にものすごくハマっていました!」
きりや「山田さんの演じるジョーは、ダメなところもダサいところもすべて美しく輝いていました。銃を撃てなかったジョーが徐々に変化していくシーンなど、その切り替えやギャップにも驚きましたね」
田辺「そういえば私、一度テレビ局で山田くんに遭遇したことがあって。エレベーターに乗っていた時に、“次の階で、山田くんが乗ってくる”という気がしたんです。エレベーターが開いたら、本当にそこに山田くんがいたんですよ!それくらい、山田くんはオーラがあるんです!」
あんり「その話は私たちも聞いたんですが、『嘘でしょ。後付けでしょ』と思っています(笑)」
田辺「本当なんだって!この映画は山田さんの儚さも堪能できるし、この映画でしか見られない山田さんを目撃できます。ジョーがお風呂に入るシーンもあるんですよ!心のなかで拝みました…」
あんり「でも本当に、終盤にかけて見えてくるジョーの感情や選択は、複雑でもありすごくせつなかったよね。ネリのためにそうやって動くんだ!って。2人の絆は、最後まで目が離せません!」
■「宇崎竜童さん演じる曼荼羅のギャップにシビれた」(きりや)
――ネリとジョーの周囲には、犯罪組織や警察など、あらゆる登場人物がうごめいています。隅々まで個性豊かなキャラクターが顔を揃えている点も本作の大きな魅力となりますが、お気に入りになったキャラクターはいますか?
あんり「ネリを手助けしていく、曼荼羅(まんだら)です!」
きりや「私も曼荼羅です!演じている宇崎竜童さんも、すごくステキでした」
あんり「私は曼荼羅を見ていると、少し自分の父親を思いだすようなところもあって。うちの父親は“そこまでしなくてもいいのに”と思うような義理堅さがあって、思春期のころは『融通が効かないな!』と思ったりしていたんです。でも大人になってみると、大事にするものをしっかりと持っていることって、すごくステキなことなんだなと、だんだん父親のことがわかってきたところもあって。なんでも器用にできる人ではないからこそ、ネリも曼荼羅を信用したんだろうなと思います。また曼荼羅って、普段はだらしなくても、いざとなった時に放つ輝きがすごい。そういったギャップも魅力的でした」
きりや「そう!あのギャップにはシビれたよね。曼荼羅は、周囲から“頭がぶっ飛んでいる”と表現されたり、急に大声を出したりと、最初は私も“ちょっと怖いな”と思っていたんです。でもネリに協力して、一緒に戦うようになっていく場面はものすごくカッコよかった!“このおじさん、こんなにカッコよかったの!? ”と驚きました」
田辺「私も曼荼羅が好きですが、印象的という意味では、ネリの元彼。いつまでもネリに執着する男性なんですが、演じる淵上泰史さんがキャラクターのねちっこさを見事に表現されていて…。あの元彼、ものすごくイヤなヤツだった!イケメンでお金持ちかもしれないけれど、アイツは絶対イヤ。腹が立った!」
あんり「でもああいう男にハマっちゃうと抜けだせないのかもね。危険な男だよ!本当におもしろキャラクターばかりなんだけど、天童よしみさんが演じている特殊詐欺の道具屋の存在感もすごかった…!」
きりや「登場してきた時に、なんだかうれしい気持ちになったもん」
あんり「また言うセリフが、ものすごくおもしろいんだよね。あんなにおもしろくできるなんて、天童さん、すごいなと思った。田辺さんにも『まぁねー』(という持ちギャグ)がありますが、営業先で『まぁねー』をやるとウケる時と、ウケない時があるんですよ。喜んでくれる人もいれば、『また“まぁねー”が出たな』と思う人もいる。でも天童さんの放つセリフは、ウケない時がないと思う(笑)」
田辺「確かに!ああなりたい!」
あんり「そう考えると、この映画ってお笑い好きな人が観てもおもしろいのかなと思います。関西弁が飛び交うテンポ感や映画のなかにある笑いの感じなど、ちょっと漫才みたいなところもあって」
きりや「ツッコミ方やタイミングなど、勉強になるかもしれないね。安藤さんや山田さんは関西出身ではないのに、ものすごくナチュラルに関西弁を話していて、本当にすごいなと思いました」
■「足並みを“揃えない”のが、『ぼる塾』の武器」(あんり)
――ネリとジョーは、危険な世界を生き抜いていこうとします。芸能界を生き抜いていくうえでの、「ぼる塾」の皆さんにとっての武器とはどのようなものでしょうか。
あんり「私たち4人はみんなが好き勝手にやって、誰かに合わせようとしていないところがいいのかなと思っています。一つにまとまったことなんてなくて、誰も人のいうことを聞かない(笑)。それぞれが自立しているというか、だからこそ失敗した時も誰かのせいにすることもないんです」
田辺「足並みは揃えていないですね」
あんり「そうですね。足並みを“揃えない”ことが、武器になっているのかもしれないですね」
きりや「だからこそみんなで集まると一人一人の個性が出て、おもしろい関係性に見えるのかなと思っています。YouTubeで私たちがただご飯を食べているだけの映像でも『いま入院中だけれど、ぼる塾さんたちを見て癒されました』と言ってくれる方もいるんです。きっとそれぞれの個性が武器になって、その掛け合いを楽しんでいただけているのかも」
田辺「もともと(猫塾としんぼるという)2つのコンビが合わさって、いまの形になったのが『ぼる塾』です。2人ではできなかったり、うまくいかなかったことが、4人になったことでうまくいくようになったことも増えました」
あんり「おそらく、2人だと足並みを揃えないとうまくいかないですよね。例えばコンビで不満が生まれたとしたら、それはお互いにぶつけるしかない。そうなると、お互いの悪いところばかり見えてしまう時もあると思うんです。でも4人だと、はるちゃんがいて、田辺さん、酒寄(希望)さんもいる。冷静にその不満を聞くことができる人が仲間内にいるというのは、とても心強いことだと思います」
田辺「4人だからこそ、いろいろな関係性を結べることも強みだなと思います。あんりとはるちゃんは幼なじみだし、私とあんりなら、食べるのが大好きな2人。私とはるちゃんは一緒に住んでいたこともありますし、旅行に行くことも。そして私と酒寄さんは、11年の間、毎日連絡を取り合っています」
――皆さんがそれぞれの個性を大事にしながらも、信頼し合っていることが伝わってきます。本作のネリとジョー、曼荼羅もバラバラのように見えて、とてもいいバランスのチームでしたね。
きりや「ネリとジョー、曼荼羅の関係性はすごくすてきでしたね。3人にしかわからないような絆がありました」
あんり「名前のない関係性だよね。家族ではないけれど、まるで家族のようでもある。私はこの映画を観て、ネリはみんなに大切にされているなと思ったんです。そしてネリ自身も、ジョーや曼荼羅の気持ちを理解して、『この人は自分を大切にしてくれている。守られている』ということを自覚しているからこそ、絶望的な状況でも前に進めるんだなと。私たちも周りの人に恵まれて、大切にされていると思うんですが、ネリのように『誰かに守られている』ということを忘れずに進んでいきたいなと思いました」
取材・文/成田おり枝
ぼる塾、『BAD LANDS バッド・ランズ』で新境地を開いた山田涼介の熱演に驚愕!「この映画でしか見られない山田さんを目撃した」
2023年9月22日