
◆外来種3万7千種 世界規模で発見
国連生物多様性条約の科学諮問委員会である「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)は4日、地球規模の侵略的外来種に関する報告書を発表し、外来種3万7千種が人間の活動によって世界中に持ち込まれ、甚大な経済的被害をもたらしていると警鐘を鳴らした。IPBESは49ヶ国の86人の研究者からなるチームによって4年にわたり外来種を調査し、包括的な報告書「侵略的外来種とその管理に関するテーマ別評価」を初めて公表した。
同報告書は、生物多様性や生態系の破壊および喪失を促進するのと同時に、経済や食料・水確保、人間の健康などに対する大きな脅威となっていると指摘した。
侵略的外来種が世界の動植物の絶滅の60%の主要な役割を担い、2019年の世界の経済損失は年間4230億ドル(約63兆円)を超えた。1970年以来、10年ごとに4倍に損失が増えていったことの集大成であり、この傾向は続くだろうと予測した。
◆アライグマ、アジアスズメバチなど外来種増加
生物学的侵略の影響の34%がアメリカ大陸、31%がヨーロッパと中央アジア、25%がその他のアジアと太平洋地域、そして約7%がアフリカで報告されている。
ユーロニュース(9/4)は、アジアスズメバチ、アメリカザリガニ、ブタクサ、イタドリ、リス、アライグマなどの侵略者は増殖し、農作物や森林を荒らし、病気を蔓延させ、地球上の生活の質を脅かしていると述べる。
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一度の攻撃でミツバチのコロニーを全滅させるオオスズメバチは、貨物船に紛れてアジアからアメリカに到着したと考えられている。アフリカのビクトリア湖では、南アメリカ原産の浮草「ホテイアオイ」の蔓延(まんえん)によって漁業が衰退。太平洋では外来のネズミやヘビによって多くの鳥類が絶滅。また、蚊によって新たな地域でジカ熱、黄熱、デング熱などの病気が広がっている。
報告書によると、この猛威を管理するための法律や規制がある国は17%しかない。欧州委員会は1月、侵略的外来種対策を怠ったとして6つの加盟国に対し法的措置を講じている。
評価報告書の共同議長であるヘレン・ロイ教授は、「現在確認されている3万7千種の外来種のうち37%は1970年以降に報告されたものであり、その主な原因は世界的な貿易量の増加と人間の移動にある」と指摘。「侵略的外来種は生物多様性に対する大きな脅威であり、地域的・世界的な種の絶滅を含む自然への不可逆的な被害を引き起こし、人間の健康をも脅かす可能性がある」「将来的に大きな懸念事項になる」と語る。また、「通常通り」の条件下では、外来種の総数は増え続けるだろうと予測している。