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『ムービング』が訴える“普通”からの解放 繰り返し観るほど見つかる自分だけの発見

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『ムービング』© 2023 Disney and its related entities

 2023年も残すところ、3カ月と少し。このタイミングで、今年を飾る韓国ドラマと出会ってしまったかもしれない。大袈裟だと思われるかもしれないが、とにかく面白い。そして、各話瞬きをしているうちに一瞬で観終わる。本記事では、そんな魅力溢れるSFアクションドラマ『ムービング』の見どころを紹介したい。

参考:『ムービング』が“地に足をつけた”ドラマとなった理由 スーパーヒーロー作品との類似点

■ムービングとは

 『ムービング』は韓国の人気作家Kang Fullの漫画を実写化した大注目の韓国ドラマ。特殊な超能力を持った親子たちが、能力を隠して生きながらも大切な誰かを守るために悪と闘う姿を描く。原作者が脚本を担当しており、製作費は約55億といわれている。ロマンチックでありながら、迫力満点のアクションとサスペンスでもあり、観る人の心を動かすヒューマンドラマでもある『ムービング』。切り取る箇所によっては全く別のジャンルに見える本作だが、散らばらずに上手くまとまって進行していくのが流石で、日本ではディズニープラスで配信中となっている。

■個性という名の超能力

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 あらすじだけ聞くと、アクションを中心としたファンタジー作品かなと想像するのだが、実際はそうでもない。「再生能力」や「飛行能力」など、登場人物はそれぞれに特殊能力を持って生きるのだが、超能力をあえて個性として描くのが本作。人とは違う何かを持っていることでの生きづらさと、“普通”からの解放。これこそが、本作のテーマの一つではないだろうか。物語の中心人物で、感情の揺れによって身体が浮いてしまうことに悩むボンソク(イ・ジョンハ)は、足首におもりをつけ、重たい水筒を抱え、自分自身を落ち着かせるために円周率を唱えて能力を必死に隠そうとする。そんな彼に、クラスメイトのヒス(コ・ユンジョン)は、“あんたは変じゃない。少し違ってて特別なだけ”という言葉をかける。超能力という非現実的な世界観を描きながら、身近で現実的な作品への昇華させていくのが新鮮なポイントとなっている。

■前後が逆転した時間軸

 劇中では、登場人物全員の生い立ちが映し出されていく。親と子両方に焦点を当てて描かれていき、物語は子どもたちの青春と学校生活から始まる。その上で、親がどのように恋愛をして、何を大切にして、子どもにどんな想いを抱いて生きてきたかが描かれていく。親の過去から子の現在という順番ではなく、あえて時間軸を逆にして描いたことで、隠されていた宝箱を開けるような感覚を味わえるのが面白いところ。ボンソクの母ミヒョン(ハン・ヒョジュ)が自身が営むトンカツ屋の屋上を幼少期のボンソクと共に誰かに見せるかのように紫色に塗ったのも、ヒスの父ジュウォン(リュ・スンリョン)が、チキン配達の際に道に迷いなかなか届けられないのも、序盤では理由が語られないが後半にいくにつれて自然と繋がっていく。親世代の視聴者からすれば、自分の子供へ深い愛情を改めて伝えたくなるだろうし、自身の親への感謝を感じずにはいられない視聴者も多いだろう。

■張り巡らされた伏線

 毎週の配信が待ち遠しくて、各話観終えた後にもう一度第1話から観て驚いた。まるで立派な木のように、一本の真っ直ぐとしたストーリーラインがありながら、左右の枝葉にびっしりと物語と伏線が張り巡らされている本作。何気ない演出やセリフ、意味深なカットなど、全てに意味があると言っても過言ではないほどに細部まで作り込まれている。学級委員長のガンフン(キム・ドフン)が食堂で喧嘩に巻き込まれた時に映る腕の火傷痕や、定住せずに車で父と移動するヒスが幼少期から身につけているカチューシャ、ミヒョンがとんかつソースにリンゴを入れるなど、なぜかリンゴに詳しそうな理由など、後から見返すとその度に新たな発見があるのが面白い。一回では見つけきれないからこそ、何周もして自分だけの発見を見つけ、味わいたくなる作品だ。

■新鮮でこだわり抜かれた演出

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