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「牛乳は毒」過激な自然派夫婦の子どもが小学校になじめず不登校に。ワクチン接種させない一方、親たちだけは

女子SPA!

―連載「沼の話を聞いてみた」―

“高次元のパワーを抽入して、あらゆる病を治すヒーラー”そんな不思議な肩書の男性と結婚した姉。マルチ商法やうさん臭い健康器具に次々と手を出す母。

縁を切りたいのが本音だが、姉一家の子どもらや破滅型の母が心配で、付き合いを断つことができない。「とにかく疲れる」と、岸本レナさん(30代・会社員)はぼやく。

「姉夫婦には子どもが3人いますが、小さいころはまだよかったんですよ。甥っ子たちも、普通に楽しそうに暮らしていたので。ところが小学校にあがると、家庭の主張と世間がぜんぜん違うことに混乱しはじめたんですよね」

ウチで教えられたことと違う!?

姉はもともと自然派傾向があったが、ヒーラーである夫の影響でさらに極端な思想に染まり切っている。

姉一家の常識では「牛乳や小麦粉は毒。悪い食べ物」。なのに、給食では毎日それらが出てくる。しかもクラスメイトはみんな、それを普通においしく口にしている。

家では「常在菌が死んでしまうから、石けんで手を洗ってはいけない」と言われていたのに、学校のトイレでみんなが石けんで手を洗っている。

新しい環境でただでさえ気持ちが不安定になりがちな、小学校進学直後。どんなに不安だっただろうか。

そしてコロナ禍に突入した

「3きょうだいの真ん中である甥っ子はそうした違和感が積み重なり、学校になじめず不登校になりました。実際に彼と話しても、混乱している様子がよく伝わってきます。でも姉と母は『頭のいい子だから、先生とか大人の本音をかぎとってしまってツラくなっちゃってるのよ……』だそうです」

世間と家の常識が最も開いてしまったのは、コロナ禍である。



未曽有のパンデミックがある意味、それぞれの持つ価値観をあぶり出す機会になったことは、多くの人も感じていることだろう。

「本当によくある話ですが、ワクチンの是非です。難病も虫歯も高次元ヒーリングで治療できると信じている姉夫婦ですから、子どもたちが生まれてから一切のワクチンを打たせておらず、母子手帳のワクチン接種歴ページは真っ白。だからコロナワクチンを子どもに打つなんてとんでもない! と、接種させていません」

製薬会社の陰謀じゃなかったの?

ところが、である。

「本当に何がしたいのかまったく理解できないのですが、自分たち夫婦はきっちりコロナワクチンを接種しているんです。

それってまるで、迷惑ドライバーが自分たちだけシートベルトをつけ、暴走しているみたいじゃないですか? 製薬会社の陰謀だと熱く語っていたのは何だったのか。甥っ子たちが、ただただ不憫(ふびん)です」

責めるのではなく、歩み寄る

それでもワクチンの子どもへの影響に不安があるのだろうと、レナさんは姉に歩み寄る。

どんな点が不安なのか? 誰の話なら、安心できるのか? もしよかったら、自分が信頼している医師の話を一緒に聞きに行ってみないか? ワクチンについて、ていねいに教えてくれると言っている。

すると……、



姉が叫んだ。

「あんたは人を自分を思いどおりにしたいだけの、異常者だ!!」

未接種が職業選択の壁となる

「キレることで話を強制終了させる、姉のいつもの手口なんですけどね。

一番上の甥は中学生で、健康上の不安もさることながら、将来を考えてワクチン接種を希望しています。実は医療系を志しているんですよ。それには後々、ワクチン未接種が壁になる可能性が高い。本人もそれを気にしています」

子どもが親の極端な思想や方針を拒否することがきっかけとなり、親が生活や言動を見直したという実例も存在するが、姉夫婦の場合はまず難しそうである。

聞く耳を持たない親に悩む子ども

「未成年ですから、ワクチン接種には保護者の同意が必要です。それに子どもって、親のことをよくわかっている。絶対に否定されるうえ大騒ぎになるので、直接ワクチンを打ちたいとは言えない……と私に相談してくれています。

姉と親しくしている母が説得してくれればいいのですが、母の意見は姉とほぼ同じ。私からみたら、母が大量摂取している酒とタバコのほうがよっぽど毒だと思うんですけど」



姉夫婦はコロナワクチンは打ったものの、基本的にその他の医療は受け入れない。

目が見えない、固形物を食べられない

レナさん姉妹の親と同年代である姉の夫は白内障と糖尿病を発症しているが、一切の標準治療を拒否している。

「ここ数年はほとんど見えていないようで、要介護です。さらに歯周病も放置するので、歯が何本も抜け落ちたまま。硬いものが食べられないので、何でもペースト状にしようと姉家のミキサーがフル回転。かなり大変そうです。

それでも姉夫婦は『高次元ヒーリングのおかげで、これくらいで済んでいるんだよね!』と喜びあっている……異次元すぎてかかわり合いたくないけど、甥たちが心配なのでそうもいきません」

なんとかしたい気持ちはあるけれど

家族ゆえ、完全に縁を切ることがむずかしいという話は、筆者がこれまでに取材したきたなかでも無数にあった。特に、このように子どもがかかわっていると、それはさらにむずかしい。

レナさんはこれからも甥たちの相談に乗り、できるだけの助けをしていくつもりだという。しかし自分の仕事や家族の世話もあるのだから、とてつもなく大変なことだ。

また一般に、緊急性がないかぎり、家族であってもおいそれと子育てや教育方針に口を出しにくいのが昨今の風潮だろう。そうしたいまの世の中のあり方にも、課題がたくさんありそうだ。

<取材・文/山田ノジル>

【山田ノジル】
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru



 
   

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