
「山地の大規模太陽光発電施設の設置をこれ以上望まないことをここに宣言する。設置計画には市民と連携し、実現しないよう強く働きかけていく」
【映像】市街地から見える山肌が削られたメガソーラー建設予定地
政府がカーボンニュートラル政策を推進する中、異例の宣言だった。現在、市内に26カ所の大規模太陽光発電施設(建設中含む)を持つ福島市。この「ノーモア メガソーラー宣言」に至った理由の1つが、景観の悪化だ。市街地からも見えるのは、山肌が削られたメガソーラー建設予定地。さらに木幡市長は、森林を伐採し山肌を削ることで、土砂災害などが懸念されることも理由として挙げた。
太陽光発電は本当にクリーンなのか。今後どう向かい合っていけばいいのか。『ABEMA Prime』で木幡市長らとともに議論した。
■福島市長「私はストレートに『いらない』と言いたい」

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宣言の経緯について、木幡市長は「太陽光発電に絡む災害が、現実にこれまで発生していること。福島市は吾妻山や花見山に囲まれた地域で、果物畑が広がる田園風景、ふるさとの光景が失われていくことへの危機感も高まっている。他の自治体が条例でやっているようなものを、福島市でもガイドラインとしてやってきたが、限界があった。条例の名前から『適正な設置および管理』などが建前上の目的になるわけだが、私はストレートに『いらない』と言いたい。これはなかなか法形式ではできないので、『ノーモア メガソーラー宣言』という形で公にした」と説明する。
東京工業大学准教授の錦澤滋雄氏は「国策として再生可能エネルギーを最優先して、全国で太陽光と、風力を増やしていく方向で動いている。一方で、地域で深刻なトラブルや反対運動が起こっているという実態もある。それは福島市だけではなく、全国各地で起こっていることだ」と指摘。「立地に適正な場所を選んで増やしていくことが最低限必要だろう」と話す。

木幡市長も否定するばかりではなく、「福島の場合、例えば津波の被災地はなかなか使い道が難しい面があり、そこなんかには太陽光発電が入っている。これはまさに地域の実情に応じた配置だ。やはり国土を使って、それぞれの土地に合った再生可能エネルギーをいかにやっていくかが大事だと思う」との考えを述べた。
錦澤氏は「平地だとあまりにも土地取得の費用がかかるということで、難しい面はあると思う。ただ、全国的に見ればメガソーラーが必ずしもいけないということではなくて、規模が大きければそれだけ発電コストが下がるメリットがある。例えば、工場の跡地とか、使われなくなった土地を有効活用するという選択は充分にある。福島の場合は林地開発を伴うケースがほとんどなので、やはり“それはやめてください”というメッセージなのだろう。全国的に見た場合は“メガソーラー=NG”ではないと思う」とした。
■「山地のメガソーラーは拒否するが、それ以外はしっかりやる」「日本全体で考える必要」

福島氏は8月31日に「福島市脱炭素社会実現実行計画」を改定し、2030年度の温室効果ガス排出量の削減目標を30%から55%に引き上げたほか、2050年度に実質ゼロを目指す。また、住宅の高断熱化、ゴミの排出抑制推進、産業ヒートポンプ普及、次世代自動車普及などを取り組み強化項目としている。