
いよいよ最終回を迎える『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)。夏海(森七菜)と健人(間宮祥太朗)の恋を中心に、さまざまな恋愛関係が描かれてきた本作において、やはり注目されるべきはダブル主演を務めた森七菜の存在だろう。
参考:『真夏のシンデレラ』夏海と健人の前に立ちはだかる厄介な障壁 第1話を反復した描写も
森は2016年にスカウトを受けたのをきっかけに役者デビュー。Prime Videoの配信ドラマ『東京ヴァンパイアホテル』、映画『心が叫びたがってるんだ。』(2017年)、『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)など、オーディションで多くの役を勝ち取ってきた。中でも2019年のアニメーション映画『天気の子』でヒロインの天野陽菜の声優に抜擢されたことは、森にとって大きな経験になったのではないか。この作品で森は、主人公・森嶋帆高の声を担当した醍醐虎汰朗と共に、新進気鋭の若手俳優として注目される。『天気の子』は、日本での興行収入が140億円越えの大ヒット作となったことからも、当時、森と知らずに声を聞いていたという読者も多いのではないか。その後、連続テレビ小説『エール』(NHK総合)でヒロインの妹・梅を演じ、大きな黒縁の丸メガネ姿はあまりにチャーミングで印象的だった。また、火曜ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)の井上樹木役で連続ドラマ初主演を飾ることに。
森の活躍は役者にとどまらず、TVCMへの出演から音楽活動に至るまでキャリアは多岐に渡る。「オロナミンC」のCMソングにもなったホフ・ディランの同名楽曲をカバーした「スマイル」は森のパブリックイメージを強く打ち出した1曲でもあるだろう。この曲を歌っているときの森は一生懸命で天真爛漫、その一方でコロコロと変わる表情が魅力的でもあり「いつでもスマイルしようね」と歌いつつ時に口を尖らせても、なお可愛い。そう思えてしまうほど、とびきりの愛嬌を持っているのだ。等身大の魅力が詰まった歌唱姿と、自然体な芝居が持ち味の森。『この恋あたためますか』でも、気取らないありのままのかわいらしさが光っていたように感じる。
だからこそ『真夏のシンデレラ』で夏の海を舞台にラブストーリーを繰り広げる夏海役は、まさに森の魅力を開花させる役どころだったろう。夏海はビーチでタンクトップにショートパンツ、ビーチサンダルというシンプルな服装でいながらも、キラキラした夏の日差しに競り負けない存在感で輝いていた。大好きな健人との対照的な生い立ちや価値観に戸惑い、幼なじみの匠(神尾楓珠)との関係性に悩むリアルな心の動きも大変印象的だった。そして森が演じるからこそ、夏海が見せる“面倒見の良さ”や“生きる知恵”のような小ネタもまた、イキイキとした個性として表現される。健人にとって新鮮に映る夏海の伸び伸びとした生き方を体現できるところが、森の持つ芝居の良さだろう。“気取らない海辺の娘”をこんなに魅力いっぱいに表現できるのは、森しかいないのではないか。
広告の後にも続きます
いよいよ『真夏のシンデレラ』最終回では、夏の終わりとともに夏海たちの恋の行方にも決着がつくことに。楽しみと寂しさが混在する中で、それぞれの恋を見守りたい。来年の3月には、映画『四月になれば彼女は』の公開が待っている。ウユニ、プラハ、アイスランド、そして東京と、ラブストーリー史上最高峰のスケールで紡がれる純愛映画で、共演が佐藤健と長澤まさみとなれば、森にとってさらなる飛躍の作品となるに違いない。月9主演を演じきった森が、次にどんなキャリアを積んでいくのかを楽しみにしたい。
(文=Nana Numoto)