
今回は、髪の老化に関係すると言われる「頭皮の菌」、についてお伝えします。
髪がまとまりにくい、ぱさつく、抜け毛が増えてきた、薄くなってきた、白髪を見つけた……。そんな違和感や悩みが出てきたとき、ぜひとも始めていただきたいのが、「頭皮」のケアです。
なぜなら、髪は頭皮の中にある毛母細胞で作られているから。健康な頭皮こそが、健康な髪を育むのです。
健康な頭皮は青白い色をしている
しかし、健康な頭皮って、どういう状態を指すのでしょうか?わたしたち毛髪診断士はお客様の頭皮を見ることが多いですが、健康な頭皮は青白っぽい色をしています。
反対に、何かしらのトラブルの傾向がある頭皮は、ところどころ赤みを帯びていることがあります。
そしてこの赤みを帯びている頭皮には、ある「菌」が異常に繁殖していることが分かったという話を耳にしました。
わたしたちの体には、常にたくさんの菌が存在していて、それを常在菌と言います。全身にいる常在菌の数は約100兆個。良い働きをするものもいれば、悪さをするものもあります。
腸内細菌や、肌に存在する常在菌の話で知っている人も多いかもしれませんね。
頭皮には多くの常在菌がいる

その結果、頭皮には常在菌が1000種類くらいいて、人によって何種類の菌がいるかには個人差があるものの、日本人ほぼ全員の頭皮に共通するのは、ある3種類の菌が全体の約90%を占めているといいます。
その名前は、アクネ菌、表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムといい、この3大メジャー菌の「バランス」が整っている状態が、若くて健康な頭皮の特徴と言えるのだそうです。
では、この頭皮の常在菌、バランスが崩れてくるとどうなるのでしょうか?
過剰に増えると炎症が起こりやすくなる菌も
何らかの原因でバランスが崩れ、勢力を伸ばしてくる菌の中には、頭皮に悪さをする菌も含まれています。その一つが、コリネバクテリウムです。コリネバクテリウムは、通常のバランスの中では悪さをしませんが、過剰に増えると頭皮に炎症が起こりやすくなるといいます。
前述の大規模調査では、頭皮が炎症を起こして赤くなっている人ほど、薄毛になりやすく、白髪の本数が多いという研究結果が出ているというのです。
ちなみにアクネ菌はニキビの原因菌として有名ですが、頭皮では悪さをする菌ではないらしく、アクネ菌が多いとコリネバクテリウムに負けにくいようです。
脂っこい食事を控える

研究者からの提案は、まず食生活のコントロールです。頭皮のコリネバクテリウムは、皮脂の分泌量が増加すると、それにともなって増えることが分かっているため、脂っこい食事を控えることが推奨されます。
また、頭皮の常在菌が死滅してしまうような状態も良くないといいます。
例えば抗生物質のむやみな長期服用などは、体にとって有益な常在菌まで殺菌してしまう可能性があるため、気を付けたほうがいいそう。
もちろん治療中などに必要とされるときは重要ですが、医師の指導のもと適切な使用が望まれます。
頭皮の状態観察を

pHとは、アルカリ性、酸性の程度を示すものです。頭皮は通常、弱酸性なので、常在菌は弱酸性の環境で暮らしていると言えます。
そこへ、髪色のブリーチなどをする場合は、その薬剤はアルカリ性のため、常在菌にとっては気候が激変する過酷な環境になってしまうわけです。
pHは1週間くらいで自然に元に戻りますが、pHをコントロールするシャンプーなどを使って少しでもはやく弱酸性に戻すのがベターとのこと。
最近は、頭皮の常在菌バランスを整える頭皮用美容液もあるようですので、それを活用するのも手ですね。
頭皮の状態観察といえば、弾力、潤い、かゆみやフケの有無、におい、色などが主流だと思っていますが、これからは「菌」はどうか? という、「菌活ヘアケア」の考え方が少しずつ広がっていくかもしれません。
参考文献:「大人髪のトリセツ」筆・伊藤廉/KADOKAWA
<文・撮影/毛髪診断士 元井里奈>
【元井里奈】
東栄新薬株式会社/取締役。毛髪診断士®/サプリメントアドバイザー/メノポーズ(更年期)カウンセラー。慶應義塾大学卒。髪に悩む女性のためのサプリメント「美ルート」をプロデュース。毛髪、栄養学、女性ホルモンに関する専門知識をもとに、ヘアケアコラムの監修や執筆も行う。2児を育てるワーママでもある。Instagram:@rinam.0922、Twitter:@rinamotoi、ブログ「ワーママ毛髪診断士が教える、35歳から始める育毛・美髪ケア」