これに対して5月2日に猪木と坂口が謝罪、6日後の8日には坂口が単独で馬場を訪ねている。
坂口は11日開幕の「’87IWGPチャンピオン・シリーズ」に何とか長州を出場させたかったが、新日本が提示した移籍金と全日本の要求額に差があって、問題クリアとはならなかった。
「あくまでも話し合いで今シリーズ中に解決したい。金銭が折り合えば出場のGOサインになるでしょう。セコンドに付くだけでも約束違反になるけど、会場に試合を観に来るのは仕方ないだろね。強行突破はやろうと思えばできる。でも、そうしたくないから馬場さんと何度も話し合っているんですよ」と坂口は語り、長州は5月11日の後楽園ホールに来たものの、通路で試合を観るだけでアクションは何も起こさなかった。
しかし5月12、13日の札幌2連戦で、ついに長州が強行突破してしまう。
藤波VSマサの一騎打ちを観戦するためにマシン、小林とリングサイド最前列に陣取った長州は、4.27両国で乗り越えられなかった場外フェンスの撤去を要求。エキサイトした長州が、場外戦で藤波にラリアットを見舞った。
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翌13日の藤波VSマサの再戦では、マサが反則負けになるや、長州が花道を駆け抜けてきてリングに躍り込むや、猪木と藤波にラリアットを炸裂させ、さらに藤波にサソリ固め! マサ、マシン、小林と新日本マットを占拠したのだ。
控室ではマサが「なぜ馬場と猪木の間のたった1枚の紙(契約書)で長州が出られないんだ? 紙きれで選手を縛る時代は終わった!」と叫んだ。
小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。