
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、”北関東の三銃士”と総称するイケメン俳優を紹介する。
生粋の群馬っ子・町田啓太
「南のほうに行けば、必ず海があるわけですよ。鎌倉は」鎌倉市在住の絵本作家・角野栄子の日常を捉えたNHKの番組『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』(2022年)で、散歩を日課とする角野が言っていた。その街に住む人間特有の感覚だなと思った。
同じような感覚で驚いたのが、群馬県人。彼らの場合は道に迷ったら、山を目指せばいいと聞いたことがある。海のない県である群馬だから山なのか。至極当然だが、理にかなっている。
勝手なイメージだが、確かに群馬県は山が多い気がする。春夏秋冬、山野を駆け回るわんぱく小僧たちの姿が自然と浮かぶ。地元を代表する生粋の群馬っ子、町田啓太もそのひとりだ。
豊かな自然で育んだ人間味

山々をぬってこしらえられたゲレンデを颯爽と滑り抜ける。まだおぼこい雰囲気の町田が、白銀の中を華麗なパラレルターンでシャシャッと雪をかき分ける。後に残るスノーパウダーのしぶき。
それを浴びたい。もし当時の町田を目にできるなら、もうほんとうに「私をスキーに連れてって」状態の愉快さではないか。
1987年の同名映画で原田知世がゲレンデに「バキュン」したポーズみたいに町田を撃ち抜いてみたい(いや、されたい?)。ゴーグルを外せば、日差しで眩しそうにする爽やかな眉間がのぞくだろう。
ともかく快活なスポーツマンである町田は、パイロットを志し、中学から石川県の航空学校に通うことになる。その後、今度はダンスの教員を目指して日本体育大学に入学し、上京する。
一時期は「GENERATIONS from EXILE TRIBE」候補メンバーだったこともある彼が、最終的に入団するのが、「劇団EXILE」だ。今や劇団とLDH俳優部の中心人物。
赤楚衛二主演の『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京、2020年)で大ブレイク。赤楚演じる会社の同僚・安達清に密かな恋心を寄せる黒沢優一役でにじませた健気さと実直さは、豊かな自然で育んだ人間味に他ならない。
山中柔太朗のイメージ
さて、群馬を地域的に区分すると北関東になる。群馬の他、栃木、茨城の3県で構成される北関東といえば? 町田の爽やかな話題の後でなんだけれど、やっぱりヤンキー文化だろうか。
ヤンキーのイメージだと、群馬、栃木、茨城の順でちょうど色濃くなる。栃木出身の詩人・相田みつおはなぜかヤンキーから人気があるらしい。足利市出身の相田と同郷の俳優・山中柔太朗はどうだろう?
ヤンキー感がないことはない。でもその名の通り、フワッと柔らかな手触りが、5人組ユニット「M!LK」のアイドルであることを証明している。初主演作『飴色パラドックス』(MBS、2022~2023年)で筆者がインタビューしたときには、もの静かでクールビューティな印象を受けた。
マイルドヤンキーが似合う中川大志
ヤンキーから受けるイカついイメージとはかけ離れてはいるが、山中は静かなたたずまいだからこそ、逆に猛々しいポテンシャルを感じさせもする。
ではもうすこしマイルドな意味でヤンキー感が似合う俳優はいないだろうか?
NHKのコント番組『LIFE!夏』8月11日放送に出演した中川大志がいい感じにマイルドヤンキーだった。コント名は「いるんだろ?」。中川演じるヤンキー風なチンピラ男が仲間を従えて、雑居ビルの一室にやってくる。クセの強い仕草と口調で「いるんだろ?」と見えない相手にただただ呼ぶだけ。
でもどこか都会的で、ソフィスティケートされている。東京生まれにして茨城育ち。この出自が面白い。東京と茨城を行き来するうちに彼のマイルドな雰囲気は醸成されたのだろうか。
“北関東の三銃士”
町田啓太、山中柔太朗、中川大志。群馬、栃木、茨城ゆかりのイケメン俳優たちを列挙してみる。この3人をくくる何かいい総称はないだろうか。北関東の三銃士はどうか。まさに族っぽい響きだ。爽やか系からマイルド系までさまざまな面々が揃っている。
この3人揃っての共演歴はまだないが、例えばLDHが全グループを結集させる「HiGH&LOW」シリーズのような不良映画作品で共演させてはどうか。
町田はすでにシリーズ作品で頭の切れるノボル役として出演している。クールな山中とマイルドヤンキースタイルの中川をここに配役し、“北関東の三銃士”という一派をそのまま登場させてみたいものだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu