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『インディ・ジョーンズ』の世界へ誘う巨匠 ジョン・ウィリアムズの音楽 映画史に残る名曲誕生秘話、最新作での“変化”も

Real Sound

 だが今作『運命のダイヤル』の時代設定は、人類が初めて月に降り立った1969年。かつての連続活劇映画にあったような、ロマンと冒険の香りは雲散霧消している。時代錯誤なヒーローによる、時代錯誤な冒険物語。そうなるとカリカチュアされた表現は難しい。過去作に比べて、サウンド面でおとなしい印象を受けてしまうのは、おそらくそのあたりに起因したものだろう。

 そして、スティーヴン・スピルバーグという天才フィルムメーカーが降板したことも大きい。彼の演出は、いい意味でも悪い意味でも非常にエクストリームだ。笑い、恐怖、興奮、ロマンス。あらゆる要素を寸断なく、マシンガンのように撃ち続けてくる。あまりのハイテンションに、観ているこちら側の感情がグチャグチャになりそうだ。よってジョン・ウィリアムズの音楽も、あらゆる感情が次々に現れては消えていくような、とんでもなくハイスピードなものとなる。

 だが今回バトンを受け継いだジェームズ・マンゴールドは、明らかにそのような資質の持ち主ではない。ナチスの顔面が爆発したり、生贄の心臓が手づかみで取り出されるような、スピルバーグの悪趣味テイストを完全に封印している。骨太なアクションと、王道なストーリーテリングこそが、彼の持ち味。それを反映するように『運命のダイヤル』はジェットコースター的上下運動は緩和され、全体的に重厚感のあるスコアに。ライトモチーフをごった煮状態で入れまくるというよりは、1曲ごとの個性が際立った作品に仕上がっている。

叙情的で美しい「ヘレナのテーマ」

 個人的に印象的なのは、M2「ヘレナのテーマ」。インディの旧友の娘 ヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)のテーマ曲だ。インディに勝るとも劣らないくらいに冒険心が旺盛なキャラクターで、80代を迎えたハリソン・フォード演じるインディに代わって、この映画では彼女がアクションの主導権を握っている。となれば、『魔宮の伝説』のショート・ラウンド(キー・ホイ・クァン)のテーマのように、もしくは『クリスタル・スカルの王国』のマット・ウィリアムズ(シャイア・ラブーフ)のテーマのように、明るく軽快な音楽になっていてもおかしくない。

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 だが実際に「ヘレナのテーマ」を聴いてみると、ピアノが美しい旋律を奏で、木管楽器がゆったりと包み込むような、叙情的で美しい楽曲だ。そのメランコリックな調べは、どこか『レイダース』で使われていた「マリオンのテーマ」を彷彿とさせる。意識的に、インディとマリオンの冒険を反復しているのかもしれない。やんちゃな冒険家の一面よりも、女性としてのたおやかさ、優しさがフィーチャーされている。

 「ヘレナのテーマ」を軽快な「レイダース・マーチ」のように仕上げてしまうと、2代目インディとして認識してしまい、彼女主演でスピンオフが作られることを期待してしまう。偉大なシリーズの最終章を作るにあたって、ひょっとしたらジョン・ウィリアムズはそれを避けたかったのかもしれない。あくまでこのシリーズは、インディ・ジョーンズという男の冒険を描き続けてきたのだから。

 『運命のダイヤル』USプレミアには、キャストのハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、マッツ・ミケルセン、ジョン・リス=デイビス、そしてスティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・マンゴールドといった面々が勢揃いした。スピルバーグの紹介で、ジョン・ウィリアムズがオーケストラと共にサプライズで登場した瞬間、ロサンゼルス・ドルビーシアターに詰めかけたファンの熱気は最高潮に。そして自らタクトを握り、「レイダース・マーチ」を演奏したのである。

 今年91歳を迎えたマエストロは、この作品が最後の映画音楽となるだろうと語っていたが、最近はそれを撤回するようなコメントも出しており、その制作意欲はまだまだ衰えていない様子。インディの冒険は最終章を迎えても、巨匠 ジョン・ウィリアムズの冒険はまだまだ終わりを告げることはないようだ。

※1:https://www.empireonline.com/movies/features/indiana-jones-john-williams/
※2:https://jwfan.com/?p=14810

(文=竹島ルイ)

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