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常に厳しい目で見られながら『キング』に成長した鎌田大地。フランクフルトを離れる“ミスターヨーロッパ”の思い「CLに出続けたい」【現地発】

SOCCER DIGEST Web

 鎌田大地がフランクフルトに別れを告げる日がやってきた。

 22-23シーズンのブンデスリーガを7位で終えたフランクフルトはこの時点で、来季のヨーロッパカンファレンスリーグへの出場権を獲得。決勝まで進出していたDFBポカールで優勝すれば、ヨーロッパリーグ(EL)に出場できるチャンスを残していた。

 今シーズン限りでフランクフルトを去ることになっている鎌田も、リーグ最終戦のフライブルク戦後に、強い意気込みを語っていた。

「チームとしてライプツィヒはすごいいいチームだと思います。ただ年間を通して毎年1勝1敗くらいの感じ。彼らは常に順位も上にいるので、実力的に言えば、彼らの方が上かもしれないですけど、実際に試合をすれば勝てる確率は五分五分くらいだと思う。チームとして求められていることをまずやって、それプラスアルファ数字の面で何かチームに残せれればと思います」
 
 決勝では、2シャドーの一角でスタメン出場した鎌田は攻守に精力的な動きを見せた。ただ最後のところでコントロールが乱れたり、タイミングが少しずれたりで願っていた「数字につながるプレー」は出せずじまい。最終的に0-2で敗れ、ライプツィヒが優勝カップを掲げるシーンを眺めなければならなかった。日本代表MFにとってはこれがフランクフルトでのラストマッチとなった。

 鎌田は良くも悪くも地元メディアから注目される選手と言える。中盤でゲームを掌握し、守備で的確な動きを見せても、それだけでは満足されない。優れた嗅覚で決定機に絡み、惜しいチャンスをつかんでも、それだけでは評価は上がらない。

それは期待値と評価基準値がかなり高く設定されているからだ。試合の流れを決定的に変えることができるだけの資質を持った選手なのだから、それができなければダメなんだという目で見られる位置にいる。

思い返せば、フランクフルトに加入した頃は懐疑的な目でみられていた選手が、そこまで厳しい目で見られるところまで成長した。感慨深いものがないだろうか。


【動画】長谷部がアシスト!鎌田がエリア外から決めた圧巻のゴラッソ
 鎌田とフランクフルトとで忘れてはならないのが、ELでの大活躍が挙げられる。特に20-21シーズンのグループリーグでアーセナル相手に放った見事な2ゴールは、いまでもフランクフルトファンの間で語り草となっている。

 そして21-22シーズンには重要なゴールとアシストを次々に決め、チームを戴冠に導く活躍をみせた。「ミスターヨーロッパ」のニックネームはファンが畏敬の思いでつけたものだ。

 本人にとってもヨーロッパリーグでの冒険は深い思い出として残っている。

「いい思い出は、ヨーロッパリーグ優勝は良かったと思うし、1年目とかは難しい思い出もたくさんありました。でも自分自身うまく成長できたと思います。(リーグ戦とかで)試合で結果を残すのと、ELで結果を残すのでは周りの見られ方もすごく変わるなというのは、僕自身感じたことでもあります」

 今季はついに世界最高峰のチャンピオンズリーグ(CL)にも初参戦。最初は鎌田もチームもうまく実力を発揮しきれなかったが、試合を重ねるごとに成長を遂げ、クラブ史上初挑戦ながらグループステージを見事に突破。決勝トーナメント1回戦では今シーズンのセリエA王者となった強豪ナポリに力負けしたが、そのどれもが特別な経験となっただろう。

「CLはもちろん特別なこと。選手としては今年26歳で、26歳でCLは別に早いわけではないし、でも遅いわけでもないと思う。ベストなタイミングでCLまで登ってこられたと思う。やはりCLに出て、CLに出続けたいなと思うようになりましたね」
 
今シーズンはボランチにもコンバートされ、中盤から優れた戦術眼で攻守に中心選手として活躍。さらには抜群のタイミングでゴール前にも顔を出し、ゴール、アシストを量産すると、ファンは“キング”の誕生を心から喜んだ。

しかし、カタール・ワールドカップを経て再開された後半戦ではチームが調子を崩していたことも影響し、前半戦のようにはゴールに絡むことができなくなっていく。すると、またメディアがざわざわし出した。守備での貢献、ゲームメイク、チャンスメークという点では変わらず高いレベルでプレーしていたにもかかわらずだ。
 
 そんな鎌田をオリバー・グラスナー監督は最後まで信頼して起用し続けた。悪いプレーをしているわけではないが、絶好調時のようなプレーを取り戻せるようにと、いろんなアプローチをしていたことを明かしたことがある。

「ダイチにこれまで彼がリーグ前期に決めてきたゴールシーンを全部見せたんだ。殆どは14~18mからのシュートだったからね。そうしたらまさにそのプレーを今日見せてくれた。相手を突破し、シュートを打ち、そしてゴールが決まった」
 
 結果だけを求めるとチームとのつながりが薄れやすく、チームプレーばかりを考えると結果につながりにくかったりする。そんななかリーグ終盤32節のマインツ戦でゴールを奪うと、そこからの3試合で2ゴール・3アシストとすぐにまた結果を残すのだから普通ではない。どちらかではなく、チーム事情やチーム内での役割との関連性でバランスを微調整していく能力がとても高いことの表れだ。

 来シーズンにどこでプレーするかはまだ確定していない。どの国のリーグで、どのヨーロッパカップ戦でその勇姿を見せてくれるのだろう。どこに行っても類まれな適正力でポジションをつかみ、そしてファンの心もつかんでくれるに違いない。

取材・文●中野吉之伴
 
   

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