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ロックダウンがもたらした、傷ついた者の心を癒やす映画「エンパイア・オブ・ライト」

キネマ旬報WEB

わたしたちは〈映画〉を愛でている。それは、時に何かを学び、ある人生の局面を悟らせ、残酷な現実から逃避させてくれることで、己の荒んだ心を癒やしてくれるからだ。先日Blu-ray&DVDがリリースされた「エンパイア・オブ・ライト」(22)は、海辺の映画館を舞台にした作品。オリヴィア・コールマンが演じるヒラリーが、辛い過去を抱えながらも劇場で勤務する姿を描いている。本作は2022年に製作された映画の中で高い評価を受け、第95回アカデミー賞の撮影賞、第80回ゴールデン・グローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされたという実績がある。陰影ある美しい映像を紡ぐ撮影監督のロジャー・ディーキンスによる映像と、変幻自在に役を演じるオリヴィア・コールマンの演技は圧巻だ。また、「イニシェリン島の精霊」(22)などの良質な作品を世に送り出してきた、サーチライト・ピクチャーズが製作を手掛けている。 

コロナ禍は、映画と家族に対する想いを映画人たちへ促した

映画の終盤、ヒラリーが映画を観ることによって心が癒やされてゆくという場面がある。どんなときにも「わたしたちの傍には映画がある」と思わせてくれる感動的なくだりだ。今作は1980年代初頭が舞台であるため、「炎のランナー」(81)や「チャンス」(79)など、当時のイギリスで劇場公開された映画が登場。引用された作品を改めて観直したくなるような魅力が秘められている。コロナ禍によるロックダウンで世界中の映画館が閉鎖されたことは、映画を製作する側、映画を興行する側、そして、わたしたち映画を観る側も、〈映画〉に対する想いを募らせることとなった。また、コロナ禍は家族回帰が起こった要因のひとつだともいわれている。 

サム・メンデスとケネス・ブラナー、二人の監督が選んだ共通のテーマ

ロックダウンが起こったとき、ケネス・ブラナー監督は地元・北アイルランドで過ごした自身の幼少期を思い出し、「ベルファスト」(21)の物語を構築したことを述懐している。ロックダウンの状況は、暴動によって外出が叶わなかった状況と奇しくも近似していたというのだ。かような日常にあっても、映画館で家族揃って「チキ・チキ・バン・バン」(68)や「恐竜100万年」(66)を鑑賞する姿が描かれていたのは印象的だった。同様にサム・メンデス監督も、ロックダウン期間に「エンパイア・オブ・ライト」の脚本を執筆している。ヒラリーの人物像は、シングルマザーであり、精神的な病に悩まされ続けた彼の母親がモデル。つまり、この映画もまた自身の〈家族〉にまつわる物語であり、奇遇にも映画館が物語の中心になっているというわけなのである。

文=松崎健夫 制作=キネマ旬報社

 

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「エンパイア・オブ・ライト」

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