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工藤は実績十分でも前時代的な采配に一抹の不安…侍ジャパン新監督候補たちの「長所」と「短所」<SLUGGER>

THE DIGEST

 先のWBCで日本代表を世界一に導いた栗山英樹監督の退任が、5月30日に正式に決定した。一時は続投するのではとの観測もあったが、絶対に負けられないという厳しいプレッシャーに晒される日々を、何年も続けるのは難しいのだろう。

 当然、3年後の2026年に予定されている次回大会の指揮官は誰になるのか注目が集まっている。現段階で名前の挙がっている候補者を中心に、プラス面とマイナス面を考えてみよう。

▼工藤公康
〇:日本一5度の実績
×:オールドスタイルの采配

 今のところ最有力候補の一人と見られている前ソフトバンク監督。就任1年目の15年、さらに17年からは4年連続で日本シリーズ制覇。19、20年は2年続けて巨人に4タテを食らわせ、短期決戦での強さに定評がある。「俺が悪い」が常套句だった栗山ほどではなくとも、自身を棚に上げて選手を非難するタイプではなく、選手からの信望も得られそうだ。

 その一方で、レギュラーシーズンでは7年間で4回優勝を逃していて、巨大戦力を率いた結果としては物足りない。それ以上に気になるのが采配面。出塁率がそれほど高くない選手を1、2番に置いて送りバントを多用していた点は、スモール・ベースボールを好む人には受けが良いかもしれないが、近年の世界的な趨勢には逆行するものだ。“世界標準”に合わせた上でWBC優勝を勝ち取った栗山野球から一歩後退となっては意味がない。▼秋山幸二、落合博満
〇:ともに実績は豊富
×:現場から離れすぎ)

 こちらも日本シリーズを複数回制した経験を持つ。工藤の前にホークスを指揮していた秋山は、人間性でも申し分なく選手が「勝たせたい」と思える指揮官。13年の第3回大会では有力な監督候補と見られ、NPBからの就任要請もあったが、現役監督であることなどを理由に固辞した。

 しかしながら、最後に監督として指揮を執ったのは14年。ブランクが長すぎ、勝負勘などが鈍っている可能性は低くない。工藤と同じように、采配がオールドスタイルだった点も気になる。

 落合も09年の第2回大会の監督候補に挙げられ、断っていた。監督を退任したのは11年と空白は秋山以上に長いが、それでも中日の黄金時代を築いた勝負師には一部で根強い待望論がある。近年もYouTubeで独自の野球観を披露して多くの視聴者を集め、監督時代を描いたノンフィクションもベストセラーになるなど、世間の注目度は非常に高い。

 一方で、「とにかく勝つことがすべて」という考えで、栗山のように選手の気持ちに寄り添い実力を引き出そうとするタイプではないし、現在のトップ・プレーヤーたちとの縁も薄い。今年で70歳、本人も今さら火中の栗を拾うつもりはないのではないか。▼イチロー、松井秀喜
〇:国民的ビッグネーム
×:監督経験ゼロ

 話題性なら二人とも落合以上だ。今さら説明の必要もない大物であり、イチローはマリナーズの「会長付特別補佐兼インストラクター」、松井はヤンキースの「GM特別アドバイザー」としてメジャーリーグとの関わりを継続しているので、最新のMLBの戦術などの知識もあるはずだ。

 しかし、監督経験が一切ないまま、大きな大会で指揮するのは非常にリスキー。21年東京五輪で金メダルに導いた稲葉篤紀も監督未経験ではあったが、メジャーリーガーが不参加のオリンピックとWBCではまったく違う。そして、イチローにしろ松井にしろ、そうしたことを理解せずに大役を引き受けるようには思えない。

▼古田敦也
〇:解説者としてWBCに馴染み
×:監督としては実績不足)

 秋山や落合よりもさらに古く、07年に監督をしたのが最後でも、テレビ中継で解説していたこともあってWBCに限っては“現役感”が強い。日本代表の戦いぶりなどをつぶさに見ており、監督を任されても的外れな人選や采配はしそうにない手堅さはある。

 ただし、監督としての実績はないに等しい。ヤクルトでは捕手との兼任だったという事情はあるにせよ、1年目は3位、2年目は最下位で退任した。その後も幾度か監督候補に上がりながら実現していないのに、いきなり日本代表監督という大任を引き受けるか? 引き受けたとしても結果を出せるか? など不安は少なくない。
 ▼外国人監督
〇:外国との戦い方を知っている
×:ファンの支持を得られるか?)

 代表監督が毎回なかなか決まらないのは、優勝以外はすべて失敗と見なされて非難を浴びるため、積極的に希望する者が少ないのも理由だ。それならば、その種の重圧を感じにくい外国出身者に託す手もある。他競技では外国人の代表監督は珍しくないし、大谷翔平の縁から前エンジェルス監督のジョー・マッドンを推す声もあった。つい最近までメジャーの指揮官だったマッドンなら、各国代表の特徴も熟知しているし、最新の戦法などにも明るい。

 とはいえ、日本球界の実情は全然知らないので、日本のファンがWBCに寄せる思いの強さは理解していないだろう。ラーズ・ヌートバーが代表に選ばれた際も「日本人だけで戦えばいい」との声があったように、勝てなかったときの風当たりの強さは日本人監督の比ではなさそうだ。

 では、外国人でも名球会員のアレックス・ラミレスはどうか。日本野球に関する知識は問題なし、DeNA監督時代にはリーグ優勝こそなかったものの、17年には3位から日本シリーズへ進むなど、短期決戦での強さを見せていた。「8番・投手」といった奇策は(“否”が多めの)賛否両論だったけれども、これも型にはまらない采配ができる証だとも言えよう。反対意見は多そうだが、日・米・ラテン球界のすべてを知るラミレスは、国際大会の指揮官としては悪くないのではないか。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。
 
 
   

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