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特殊メイクに魅せられた監督 監督としての腕に磨きをかけた続編 『テリファー 終わらない惨劇』

映画スクエア

©2022 DARK AGE CINEMA LLC. ALL RIGHTS RESERVED

飯塚克味のホラー道 第45回 『テリファー 終わらない惨劇』

 80年代ホラーの特徴の一つとして、特殊メイクがある。それまで実現不可能だった表現を、様々な素材を使い、我々の想像を超えたビジュアルを実現できるようになったのだ。人間がモンスターに変貌する様子や、スプラッター映画における人体破壊。それらはそれ以前のモラルを打ち砕くものとして糾弾されたが、その一方で、映像化の表現の幅が広がったとして、受け入れる若年層もいた。そして、そこから生まれた特殊メイクのアーティストたちは監督以上の注目を集めるようになっていく。『ゾンビ』(1978)のジョージ・A・ロメロ監督と組んだトム・サヴィーニや、『エクソシスト』(1973)のディック・スミス、『遊星からの物体X』(1982)のロブ・ボッティンなど、彼らの名前がクレジットされているだけで、期待が自ずと膨らんだものだ。本作の監督、ダミアン・レオーネもそんな特殊メイクに魅せられた一人だ。

 母親が大のホラーファンで、ダミアンという名前も、『オーメン』(1976)に因んで付けられたというこの監督。どのような幼少期を送ったのか、察しが付くところだが、本物の血を見るのは苦手というのが何ともかわいいところ。そんな彼は独学で特殊メイクの技術を学び、やがて特殊メイクと監督の両輪でキャリアをスタート、ついに2016年に、『テリファー』で注目を集める。

 この『テリファー』1作目、殺人鬼のアート・ザ・クラウンが閉鎖された建物の中で次々と殺戮を繰り返していくものなのだが、映画としては単調で、途中から飽きてしまう。だが、特殊メイクだけは異常なほど熱意が注がれており、そこだけをピックアップすれば、間違いなく傑作と言っていいレベルになっている。まさにかつてあったようなタイプのホラーだが、そこで終わらないのが素晴らしいところ。監督としての腕に磨きをかけ、特殊メイクへのこだわりは捨てず、6年後に続編である本作を完成させた。

 お話はシンプルそのもの。前作で死んだかに思えたアート・ザ・クラウンは復活を果たし、ハロウィンが近付く街に出現し、またもや出会った人々を片っ端から殺害していくというストレートなホラー作品になっている。今回は、主人公の女子高生シエラの日常を丁寧に描き、犠牲になる人物たちへ感情移入ができるよう、気配りがされている。クライマックスはもうやり過ぎという程、シエナとアート・ザ・クラウンのバトルが描かれるのだが、これも様々な趣向を凝らし、演出力の向上が確認できた。

 見逃してはならないのが、アート・ザ・クラウンを演じるデイヴィッド・ハワード・ソーントンのパントマイム演技だ。ジェスチャーだけで、気持ちを表し、見事に感情を伝える。監督は『ハロウィン』(1978)のマイケル・マイヤーズや、『13日の金曜日』シリーズのジェイソンなど、寡黙な殺人鬼キャラに倣ったと語っているが、そうしたこだわりが新たなホラーキャラクターを生み出したと言えるだろう。

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 あとチェックしてほしいのが、画面の色味だ。やや赤みを帯びて、退色したフィルムを思わせる色調になっている。今のデジタル時代、いつ見に行っても公開初日と変わらぬクリアな映像を楽しめるが、昔のフィルム上映では長年使い古されたプリントは、青から色が抜けていき、ちょっと赤みがかったものが珍しくなかった。監督としては、そんな名画座的な雰囲気もイメージしていたのではないだろうか。

 本作は昨年の秋、ホラー作品の『スマイル』や『ハロウィン THE END』が大ヒットを記録する中、週末興行80万ドルでスタート。その後、みるみる動員を増やし、10月末には200万ドル近くを稼ぐようになっていく。上位には何千万ドルも稼ぐメジャースタジオの大作がいるので、目立たないかもしれないが、本作の製作費はわずか25万ドル(約3,300万円)なのだから、その利益率も容易に想像できる。最終的に全米で1060万ドル、海外では440万ドル、日本円にするとおよそ20億円もの金額をたたき出したのだから、笑いが止まらないはずだ。

 すでに第3作の製作も決定している『テリファー』シリーズ。138分という長尺は、ホラー映画にしては長いと思うかもしれないが、体調を整えて、万全な状態で見に行けば、どっぷりとその世界感に浸って、最後まで楽しめるはずだ。

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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、現在はWOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』(毎週土曜日放送)の演出を担当する。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。

【作品情報】
テリファー 終わらない惨劇
2023年6月2日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて公開
配給:プルーク、OSOREZONE
©2022 DARK AGE CINEMA LLC. ALL RIGHTS RESERVED

 
   

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