top_line

気持ちいい!サクサク進む爽快パズルゲーム
「ガーデンテイルズ」はここからプレイ!

『らんまん』万太郎の異常なストイックさに周囲も困惑? 高知に捨ててきた“妥協”の2文字

Real Sound

『らんまん』写真提供=NHK

 胸を張って寿恵子(浜辺美波)を迎えに行ける未来に向かって、走り出した万太郎(神木隆之介)。「わしはわしにできる一番の速さで」とは言ったものの、日本に植物学の基礎を築く上で妥協は許されない。『らんまん』(NHK総合)第46話では、植物学会の会報誌を作るべく印刷所を訪れた万太郎が驚くべきストイックさを発揮する。

参考:『らんまん』奥田瑛二がいぶし銀のオーラを放つ 職人気質な万太郎とは似た者同士?

 万太郎が訪れたのは、大畑(奥田瑛二)が営む印刷所。万太郎は挨拶もそこそこに、筋骨隆々の男たちが集う作業場に足を踏み入れ、彼らの職人技に夢中となる。

 文明開化とともに印刷技術が急速に発展したこの頃、活版印刷が主流をなしていた。活版印刷とは、ハンコの原理で文字や記号を刻み込んだ版材にインクを塗り、紙に転写する印刷方法。文字を力強く表現してくれることから書籍や新聞、雑誌などの形態に向いている。

 一方で、細やかな表現はやや不向き。そこで台頭してきたのが、水と油が反発する性質を利用した石版印刷だ。これまでのように版材を彫るのではなく、石に直接描くことで細かい線や筆遣いまで伝わる印刷が可能になったのである。一つひとつの植物をよく観察し、葉縁や花弁、つぼみ、茎などの形や質感まで植物画に落とし込んできた万太郎が印刷方法として真っ先に石版印刷を選択したのはこのためだろう。実際にどの程度精巧な印刷が可能か、自分の目で確かめにきた万太郎。その熱心さに大畑も戸惑いつつ、全力で応じる。

広告の後にも続きます

 一見強面で昔気質な大畑だが、意外にも腰が低い。かの有名な歌川国芳の版を彫ったこともあるという元浮世絵の彫師・岩下(河井克夫)をはじめとした職人たちの確かな技術に誇りを持っており、その素晴らしさを万太郎に伝えようとしている。万太郎もそれを認め、このまま良い関係が築かれる……かと思われたが、万太郎のストイックぶりは並大抵のものではなかった。

 先ほどまで石版印刷の技術を褒めちぎっていた万太郎に、「こちらの画工にお任せすることはできません」と告げられ、まるでコントのような動揺っぷりを見せる大畑。どうにかこうにか怒りを抑えようとするものの、職人の腕が足らないような物言いをする万太郎に我慢ならず掴みかかろうとする大畑を妻のイチ(鶴田真由)が必死で抑える。ただ、なにも万太郎は大畑印刷所が誇る技術を愚弄しているわけではない。彼の思い浮かべる理想に、現時点での最高技術が追いついていないというだけなのだ。

 そこで諦めるのではなく、自ら石版印刷の技術を習得し、納得できるものを作り上げようとするところに万太郎の異常なまでの執念を感じる。万太郎は実家を出たあの日、土佐に“妥協”の2文字を捨ててきたのだろう。「おまんは捨てたがじゃ。ほんなら振り返りな。かわりに何をするかじゃろう」というタキ(松坂慶子)の言葉が万太郎の心に刻まれている。家を捨てた万太郎は、代わりに自分の夢を追いかけることを選んだ。妥協したらそれこそ峰屋の人々に申し訳が立たないという思いが万太郎にはある。だからこそ、失礼を承知で大学が終わった夕方の6時から夜までという限定的な時間での修行を大畑とイチに頼み込む万太郎。授業料も払うという。それはもちろん、竹雄(志尊淳)の稼ぎから出るものだろうが、万太郎にとって今は手段を選んでいる場合ではない。なぜならいち早く目標を達成し、寿恵子を迎えに行く必要があるからだ。

 その頃、しばらく万太郎が店に来れないことを知った寿恵子は寂しさを隠しきれないでいた。母のまつ(牧瀬里穂)にどういう関係なのかを問われても、説明できるほどにも万太郎のことをよく知らない寿恵子。「ただかる焼きを食べさせてあげたい」と語る寿恵子の頭の中で、<愛するものをなくして誰がたった一人生きられようか>と万太郎が意訳した西洋の音楽がリフレインする。すでに互いを想い合っているように見える2人が結ばれるのは、今のスピードではまだまだ先のように思えてしまう。そこに、忍び寄るのは妻がいながら寿恵子への想いを募らせる高藤(伊礼彼方)の影。宣言通り、できうる限りのスピードでひた走る万太郎の足元をすくうものがいないことを願う。
(文=苫とり子)

 
   

ランキング(テレビ)

ジャンル