男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「レスになった夫婦。そのキッカケは…?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「私のこと、もう女として見れないの?」出産してから、夫に触れられない妻の不満に夫は…
このままではダメだとわかっている。何度も自分を責めたし、この問題をどうにかしようと何度も思った。
でもこうやって妻の葵から現実を突きつけられると、僕はさらに何もできなくなってしまう。
「ゆう君。私たちって、なんで一緒にいるんだろう」
葵と結婚して、5年になる。
人として大好きだし、妻として、そして莉緒の母親として本当に尊敬している。
でも僕たちの間に、男女の関係はない。そんなものがなくなってから、もうすぐ3年になる。
「家族だから、一緒にいるんでしょ?」
そう答えるのが、今の僕には精一杯だった。
A1:不妊治療で、それが“義務”になったことが大きかった。
葵と出会ったのは、友人の紹介だった。当時の僕はまだまだ遊びたい時期で、まったく結婚なんて考えていなかった。
しかし紹介された葵はとても素直で良い子で、「こんないい子がいるんだ」と驚いたことを覚えている。
適当に遊ぶ相手だったら、違う子を選んだと思う。でも葵は本命タイプの子だった。だから僕は出会ってから積極的に葵を誘った。
「俺、葵ちゃんのこと好きだわ」
「本当に…?」
「嘘言ってどうするんだよ(笑)」
結局このまま付き合う流れとなり、僕たちは良い関係を築いていた。しかし葵が33歳になるタイミングで、彼女との将来について真剣に向き合おうと決めた。
「葵、僕さ子どもが欲しいんだよね。葵は?将来のこと、どう思ってる?」
気がつけば、交際期間ももうすぐ2年になりそうだった。葵のことだから何も言わないけれど、多少なりとも結婚したい気持ちがあることはわかっていたから。
「私も子どもが欲しい。だからなるべく早く決めたいなと思ってる…。今年で、私も33歳になるでしょ?子どもを作るなら早めのほうがいいなと思って」
「そうだよね、わかった」
こうして、僕は葵にプロポーズをし、そして僕たちは晴れて夫婦となった。この時まで、僕たちはお互い愛しあい、男女の営みも積極的にあった。
しかし夫婦となった僕たちには試練が待ち受けていた。
なかなか子どもができなかったのだ。
「ゆう君。不妊治療しない?」
「もう?まだ早くない?」
葵も33歳で、僕も35歳。遅いことはないけれど、まだ自然の流れでできるのではないかと思っていた。
「そんなことないよ。一分一秒でも早いほうがいいから、次の生理が来たら病院へ行こうと思ってる」
「そっか…。葵がそう言うなら、僕もできる限りのことはするから何でも言って」
こうして僕たちは、入籍してから9ヶ月後くらいに不妊治療を開始した。しかしここから、僕たちとっては辛い時期に突入する。
検査を受けた後、お互いに異常がないことが分かったのでタイミング法に入った僕たち。
このプレッシャーが予想以上だった。
「ゆう君、今日あの日だから。絶対早く帰ってきてね」
「了解」
出かける前に念押しされる日々。最初は僕なりに頑張っていたと思う。
「あと今週はお酒飲まないでね」
「え?一杯くらいいいよね?」
「ダメだよ。子作り、もっと真剣に頑張ってよ」
「わかった…」
ただこれが続き、段々と行為自体が義務化されていき、帰る足も重くなる。
― もし今回ダメだったらどうしようかな…。俺が悪いのかな…。
葵のことは大好きだ。大好きだし愛しているからこそ結婚した。
しかし不妊治療が2年も続くと、僕たち夫婦の行為の目的はただ「子どもを作ること」であり、「お互い愛し合うこと」ではなくなっていく。
そしてそれは、娘が生まれてからさらに悪化してしまった。
A2:女性としてではなく、母としか見れなくなった。
葵が頑張ってくれたおかげで、僕たち夫婦の間に、可愛くてたまらない娘ができた。“目に入れても痛くないほど可愛い”とはまさにこのことで、ハッキリ言って僕は溺愛している。
しかし妊娠出産を経て、葵は強くなった。
大事な会食の帰り。少し遅くなってしまったのは大変申し訳ないし、葵をひとり家に残して飲んでいたのは僕が悪いと思う。
でも一軒目で切り上げて帰ってきた僕を、葵は玄関で仁王立ちして待っている。
「ゆう君、今何時だと思ってるの?」
「え?ごめん、一応早く帰ってきたつもりではいるんだけど…」
時刻はまだ22時前だ。
「私がこんなにも頑張ってるのに、なんでもっと協力してくれないの?」
「ごめん。でも今日は大事な会食だったからどうしてもパスはできなくて」
「仕事が大変なのもわかるけど、こっちだって辛いんだよ?どうしてくれるの」
「ごめん…。今からでも、何かできることあるかな?」
ちょうど授乳期間で、莉緒の夜泣きがひどかったこともあり、葵がイライラしているのはわかる。
そんな最中、僕が飲んで帰ってくるなんてあり得ないだろう。でも仕事をして家にお金を入れないと、僕たちは生きていけない。仕事の都合で多少遅くなることは、許してほしかった。
この後もしばらく葵の怒りは続き、僕は怒られるたびにどんどん萎縮していく。それに比例するように、葵のことを女性としてではなく、ひとりの母親としてしか見れなくなっていく。
そんな中ようやく授乳期間が終わり、僕たち夫婦にも余裕がうまれてきた頃。葵が、急に僕を誘ってきた。
「ねぇゆう君。今夜何時に帰ってくる?」
「どうしたの、突然」
「ううん。でも今日は早く帰ってきてほしいなと思って」
「ごめん、今日は遅くなるから先に寝ていていいよ」
丸3年、僕は葵に触れていない。
触れることはできたのかもしれないけれど、もはや腫れ物に触るような感じだった。
そして3年も触れ合っていないと、どういう感じだったのかも思い出せないし、女性としてではなく、妻という最強の人生のパートナーとしか見れない。
「ねぇ、なんで?何がダメなの?」
「ごめん、疲れてるから…」
さらに追い討ちをかけるかのように畳みかけてくる葵の言動が逆にプレッシャーになり、どんどん夜が憂鬱になっていく。
決して、嫌いになったわけではない。離婚したいわけではない。
ただ一度でも徹底的に男女“以上”の存在となった場合、そこからの再スタートは想像以上に難しく、もう一度そういう関係になることがどうしても想像できない。
― 僕たち夫婦、この先どうするんだろうか…。
僕が頑張ればいいだけの話だろうが、どうしてもそれができずにいる。
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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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2023年6月4日