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演技、音楽、脚本全てが説得力抜群の映画『怪物』 あなたの中にも“怪物”は潜んでいる?

Real Sound

『怪物』©2023「怪物」製作委員会

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、四季で1番嫌いな季節の夏が来ることを恐れている橋本が『怪物』をプッシュします。

参考:役所広司が男優賞、坂元裕二が脚本賞を受賞 第76回カンヌ国際映画祭の受賞結果を総括

■『怪物』

 第76回カンヌ映画祭にて脚本賞を獲得した映画『怪物』。待ちに待った話題作がいよいよ公開された。こんな原稿を書いていて言うのもなんだが、まずは何も情報を入れないで今作を観てほしいというのが正直な感想だ。日頃自分がどのような立場で世間や他人に対して先入観や思い込みをしているのかが試される。とは言ってもここで終わるわけにはいかないので続けさせてもらう。

 本作を観て最初に感じた心情としては、「果たしてこの作品に出てくる登場人物の考えに正解はあるのだろうか?」「そもそも正解などあるのだろうか?」ということ。日々ニュースやネット記事などで見聞きするモラルやハラスメントをテーマに、現代社会の生きづらさが描かれていく。ひとつの学校でおきた事件を軸に母親の気持ち、学校側の事情、子供たちが抱えている家庭での実態。それぞれの言い分が主観的に描かれ、観客はそれを追体験する。観るものをどんどんと巻き込んでゆくストーリー展開で、ハリウッドで言えば羅生門スタイルというところか。

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 本作がなぜこんなにも映画を観ている最中に説得力を持って自分に問いかけてくるのかを考えると、俳優陣の圧倒的な演技力が最初に思い浮かぶ。シングルマザーの麦野早織(安藤サクラ)、学校の先生の保利道敏(永山瑛太)、校長先生の伏見真木子(田中裕子)、全てのキャラクターに説得力があり、自分の心の中の正義が揺らぐ。その中でも麦野湊(黒川想矢)、星川依里(柊木陽太)、2人の子役の演技は圧巻だ。この2人の演技を見ていると絶望、希望、恐怖などが凄く表現されていて、最後には涙を流す人も多いのではないかと思う。

 本作には印象に残るシーンが多くある。筆者の記憶に残っているシーンを2つ挙げると、1つは母親である早織が学校の校長室で先生から謝罪を受けるシーンだ。映画の最初に描かれる母親目線パートの中でも印象的な場面である。本来シリアスなはずのシーンがキャラクターの言動や会話により滑稽に見えてしまう、坂元裕二らしさが表れているシーンに感じた。特に校長先生役の田中裕子の存在感がすごいので是非体験してほしい。自分の子供が通う学校にこのような対応をされたら絶望を感じてしまうだろう。このシーンは先日公開された新たな予告編でも確認することができる。

 もう1つは校長先生と湊が音楽室で話すシーンだ。詳しくは書かないが、物語の中心の事件が1つの結末に進んでいる頃、2人が楽器を拭きながら事件について話し、幸せとは何かを語る。ここでも校長を演じる田中の存在感が際立っている。どこかで聞いたことのあるような言葉なのだが心に響く言葉だった。印象的だったシーンを2つ挙げたが、書いてみると、どうやら私は田中裕子の演技にかなりくらってしまっているらしい。

 坂本龍一さんの音楽の使われ方も印象的だ。物語の転換点に坂本さんの音楽が印象的に流れるので、どこか坂本さんの音楽が流れると少し頭を整理するタイミングなのではないかと私は考えていた。

 最後に、余談にはなるが、筆者は坂元裕二脚本の『カルテット』(TBS系)で短い間だが制作部でスタッフをしていたことがある。第2話の軽井沢でのコンビニの定員役は私だ(笑)。そんな私が6年後に坂元裕二脚本の『怪物』の感想を書いているとは、何か感慨深い思いがある。

 間違いなく今年を代表する映画の1つである今作を是非劇場で観てほしい。観ている125分間、あなたも自分の中の怪物を探す旅を体験しているのかもしれない。そして明日も生きていこうと思える作品である。

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