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『らんまん』神木隆之介が巧みに表現する真っ直ぐすぎる恋心 山谷花純の丁寧な芝居も光る

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『らんまん』写真提供=NHK

 朝ドラにおける「恋敵」の存在は、ヒロイン、もしくは主人公がその恋心を自覚する、思いをもう一度再認識するための大きなファクターだ。

参考:『らんまん』神木隆之介が体現する永遠の少年像 朝ドラの主人公が持つ“幼児性”の魅力

 例えば、『舞いあがれ!』(NHK総合)であれば、舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)の間に突如現れた史子(八木莉可子)がその恋敵に当たり、『らんまん』(NHK総合)では元薩摩藩士の実業家・高藤(伊礼彼方)が万太郎(神木隆之介)の恋敵となる。高藤家のサロンで開かれた西洋音楽会で、ドレス姿の寿恵子(浜辺美波)に偶然会った万太郎。しかし、高藤から腰に手を当てられ、靴を脱ぎ素足をあらわにされ、果てにはお姫様抱っこという“イチャコラ”をする(寿恵子としては、される)寿恵子を目撃してしまい、万太郎は悶々としていた。気持ち悪い、黒いもん――嫉妬である。

 邪念が消えず、どこか上の空の万太郎に、十徳長屋のりん(安藤玉恵)、えい(成海璃子)、ゆう(山谷花純)が寄り添う。「女子は恋バナが好き」というどこか勝手なイメージがあるが、万太郎の話に、「私らが聞きますよ」というようなニマニマ顔で縁側に腰を下ろす姿は、まさに多くの経験を積んできた頼もしい人生の先輩。思わず「恋バナ三人衆」と呼びたくなってしまう。

 恋バナの匂いを察知し、後からササッと縁側に座ったゆうは、ここで差配人のりんもあまり聞いたことのない故郷の話をし始める。ゆうは北陸の能登、現在の石川県の生まれ。名主の息子を好きになるも、身分の違いから一緒になることは叶わず。村を捨てて東京に出てきたゆうは薬種問屋に見初められ夫婦になり、子供も授かったが、夫の心変わりから離縁。薬種問屋の跡継ぎになるからと、子供を取り上げられたつらい過去があった。

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 第9週のタイトルになっている「ヒルムシロ」は、ゆうが名主の息子に「鳥を見に行こう」と誘った思い出の沼に浮かんでいた水草。水桶のヒルムシロにヤブジラミを乗っけて恋に悩む万太郎に、ゆうは昔の自分を重ね合わせていたのだろう。ここではりん、えい、ゆうがそれぞれの言葉で万太郎を勇気づけていくが、真ん中にいるのはやはりゆうだ。

「誰かを好きになって綺麗なままでいようだなんて、ちゃんちゃらおかしいんだよ。自分の丸ごと全部でその人のこと好きなんだからさ」

 恋心とは理屈では語れぬものだ。ゆうの言う通りに、柱に縛り付けられても心は言うことを聞かない。家に反対されて駆け落ち、というのもこれまでの朝ドラでは描かれてきた。それで言えば、身分の差から恋心を諦めようとしている、または嫉妬心が生まれているという点は万太郎とゆうの共通項だ。水桶のヒルムシロの葉っぱに小石を2つ乗せるゆう。万太郎が葉っぱをズブズブと水に沈めていたのが自身の心境を表していると捉えるならば、小石を乗せても沈まないヒルムシロは「恋は明るうて浮き立つもん」と話していた万太郎のクリアな恋心とも言える。さらにその小石は万太郎とゆう。万太郎と話すことで、ゆうもまた過去の自分を抱きしめながら、一歩前に進むことができたはずだ。どこか影のあったゆうが、晴れ晴れとした表情を浮かべる山谷花純の芝居が印象的だ。

 高藤を相手に勝利宣言をした万太郎が向かう先は、白梅堂。しかし、寿恵子は舞踏練習会のため不在で、母のまつ(牧瀬里穂)と菓子職人の文太(池内万作)が万太郎を出迎える。万太郎が寿恵子に伝えたかったのは、しばらく白梅堂には来ないということ。白梅堂の菓子も、寿恵子のことも、「好き」はより一層強くなっていくばかりだが、だからこそ自分が一人前の植物学者になってから寿恵子を迎えにきたい。植物の標本作りと検定、植物学雑誌の創刊の先に、寿恵子に見合う自分がいるのだと、万太郎は白梅堂を笑顔で飛び出し、全力で走っていく。

 路地を抜けた先には、神田の大畑印刷所。雑誌を刷るため、石板印刷を学ぶ必要が万太郎にはあった。筋肉隆々の男たちに、やかんの水をラッパ飲みする店主の大畑義平(奥田瑛二)。暑苦しい! 渋い!

(文=渡辺彰浩)

 
   

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