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ヴァイス・メディア、バズフィード……無料コンテンツで苦境の新興Webメディア、活路となるのは?

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 アメリカの新興メディア「ヴァイス・メディア」が経営破綻したことが、去る5月15日に発表された。裁判所に提出した資料によると、負債総額は推定で最大10億ドル、日本円で最大1360億円にのぼるという。同社は事業を継続しつつ、今後2~3か月で資産売却といった再建の手続きを完了する予定だという。アメリカの新興メディアの間では他にも、4月20日に「バズフィード」の報道部門である「バズフィード・ニュース」が閉鎖を発表するなど、厳しい経営環境が続いている。

参考:日本新聞協会「生成AIによる見解」掲載  報道自体の「根幹」を見直す時期に?

 アメリカの新興メディアの失敗は、メディア環境をめぐる構造的な問題を孕んでおり、日本も無縁ではないだろう。新興メディアの状況に詳しい、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に今回の「ヴァイス・メディア」の経営破綻について、見解を聞いた。

「『ヴァイス・メディア』は昨今、ずっと身売り先を探していたので経営状況が苦しいのは知っていたので、ついにこの時がきたかという印象です。『ヴァイス・メディア』は、独自の動画ニュースで、メディア業界やコンテンツ業界で台頭してきましたが、Webを中心に展開する新興メディアは広告収入を軸としたビジネスモデルなので、世界的に広告事業の成長が鈍化している現在はどのメディアも厳しいはずです。2017年には『ヴァイス・メディア』の企業評価額は57億ドルでピークを迎えていましたが、実際の業績はその評価に見合わなかったと言えます。

 失敗の大きな要因の一つは、コンテンツビジネスやメディアビジネスを、ソフトウェアビジネスやオンラインサービスと同じように捉えていたことだと言われています。ユーザーがどんどん増えていけば、無料でコンテンツを提供しても広告をつけることで収益化できるという発想でしたが、実際にユーザーに課金してもらうソフトウェアビジネスとは根本的に違っていたと言わざるを得ません。また、動画ジャーナリズムそのものがコストセンターになっていたというのも大きいと思います。メディア運営には多数のジャーナリストが必要でお金がかかるのですが、無料コンテンツではその対価となるほどの収益は得られなかった。『ヴァイス・メディア』は早くから動画に参入し、YouTubeやPodcastも活用したコンテンツ配信に積極的で、新しいメディアの形を提示していたものの、限界がありました」

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 では、新興メディアのあり方には、どんな可能性が残されているのだろうか。

「米バズフィードは、今年初めにOpenAIの技術で記事作成することを発表しました。その後に報道部門を閉鎖しているわけですけれど、株価は大きく上昇していたので、AIを活用することでブレイクスルーすることへの期待は高いはずです。また、eコマースの事業者がAIを活用する際にメディアビジネスと組んで、より効果的な広告を打つなどの活路もあるかもしれません。日本では有料課金モデルやサブスクリプション型で成功しているメディア事業者はまだ少なく、従来の広告収入を軸としたビジネスモデルもしばらくは継続されていくと思いますが、AIの台頭によって、その構造は次第に変革を余儀なくされていくでしょう」

 一方、Webメディアはすでに社会に浸透しており、メディア企業の継続は今後も求められるはずだと、ジェイ氏は続ける。

「報道メディアが社会にとって重要なものであることは間違いなく、どう維持していくのかは大きな課題です。『ニューヨークタイムズ』は有料課金モデルで成功していますし、今や情報発信の方法はサイトにテキストを掲載するだけではなく、ニュースレターやメルマガ、ショート動画や音声サービスなどによって多角的に展開することもできます。独自のやり方でうまくいっているメディアもたくさんありますし、今後は生成AIの活用に踏み出すメディア企業が現れる一方、小規模でニッチなジャンルで読者と繋がり続けるメディアも増えていくのではないでしょうか。いずれにせよ、専門的な知見と経験を積んだジャーナリストや編集者は、メディア環境が変わってもなお必要とされる存在なので、形が変わりながらも存続していくはずです」

 新興メディアを巡る状況は大きな転換期を迎えているが、同時に新しいチャンスも生まれているのかもしれない。

 
   

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