古今東西、「戦争」は多くの創作のモチーフになってきた。4月にTwitter上で公開された『太陽と星とニギリメシ』は、戦争の理不尽さ、恐ろしさとともに、そのなかでも失われない人間の輝きを感じさせる良作だ。
(参考:漫画『太陽と星とニギリメシ』を読む)
アメリカ軍の四四二連隊に所属する鷲沢啓爾は日本人の両親を持つ日系アメリカ人。攻略した土地の守備を務める啓爾ではあるが、その役割は土地を守るためではなく、部隊が全滅する様子を見てドイツ軍の戦力を測るための“捨て駒”だったーー。
現在、『ビックコミックスペリオール』(小学館)で連載中の山口貴由作『劇光仮面』のアシスタントをしながら、自身の制作活動を進めていると話す作者の那須信弘さん(@nass_na)。なぜ戦争をテーマにした作品を描いたのか、現実とフィクションのバランスはどうしたのかなど話を聞いた。(望月悠木)
■本当に表現したいことを見つめて
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――那須さんは戦争をテーマにした作品が多いですが、なぜこのテーマで描くようになったのですか?
那須:もともと、漫画家としてデビューさせてもらい、何本か描いてはきたのですが、どうにも上手くいきませんでした。読者の評価もそうですが、自分自身でも「俺の描きたいのはこうじゃないんだ!」という思いが常にありました。そこで「自分が好きなものは何だろう」と模索した結果、戦争をテーマにした作品に行きました。
――そう思った要因は何ですか?
那須:もっともらしい理由があったわけではなく、調べれば調べるほど戦争がいかに異常な世界で、それをいかに知らないかをわかったことが大きいかもしれません。「それを表現することは意味のあることなのかな」と思い始めています。それが良いことなのかはわかりませんが。
――今回『太陽と星とニギリメシ』を制作した経緯を教えてください。
那須:前述したように読切が上手くいかず、自分の描きたいモノを模索していった結果たどり着いた作品です。ただ、ネームを知り合いの漫画家にも見せたのですが、「実際に傷つく人もいるんだよ」とあまり良い反応はもらえませんでした。確かに商業としてはあまり良いことではないのかもしれません。僕自身も従軍したわけでもありません。それでも、それらを全部踏まえたうえで「これを表現したい」という欲に抗えず、幸い担当も理解を示してくれて制作しました。