第76回カンヌ国際映画祭の授賞式が現地時間5月27日(土)20時半より行われ、是枝裕和監督作「怪物」が脚本賞を受賞した(脚本は坂元裕二が担当)。先立って発表されたクィア・パルム賞と合わせ、同作は2冠となる。授賞式後、是枝監督が日本メディア向けの囲み取材に応じた。
▲是枝裕和監督と脚本の坂元裕二
──ご自身の脚本でないというところで、客観的に語れる部分があると思うのですが、この脚本のどこが評価されたかというのをお答えいただけますか?
広告の後にも続きます
是枝 僕がそれを語るんですね……(苦笑)。えぇっと、この脚本のどこが評価されたか……難しいな。最初にいただいたプロットからこの三部構成の形でした。読み進めても読み進めても、一体何が起きているのかわからない、という本がとてもわくわくしました。これをどういう風に映像にしていくんだろうというのを、演出を任される前提でプロットを読ませていただいて、相当チャレンジをしている、方法論的にも、題材的にもかなり攻めてるなと感じたので、これはちゃんと色んなものと向き合ってちゃんと勝負しようという風に考えました。それぐらいやっぱり自分には書けない本でしたし、ストーリーテリングというものがとても無駄がなくて、とても面白かったと僕は思いました。カンヌがどう評価したかはわかりません。
──先ほど坂元さんからメールが来たというお話がありましたが、そのあと何かお話をされたりという機会はありましたか?
是枝 いや、メールだけなんですけどね。多分、起きてすぐ「怪物チームの一人としてうれしいです、感謝です」というのが来て、僕から「坂元さん、簡単なコメントいただけたら嬉しいです。簡単じゃなくてもいいです」と送ったら、「えっ、今?」と。だから、「もう少ししたら囲みがあるので」と、これを前提にお願いしたら、すぐにきて、「たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です」と。そのあとまた寝たかもしれませんね(笑)。
──監督も誰か一人を想定して映画を作っているんですか?
是枝 そうですね。必ずそうですね。
──それはどういうイメージなんでしょうか?