
「星空に消えた少年」MV撮影風景 佐野雄太監督・高木大地・稲益宏美
金属恵比須・高木大地の<青少年のためのプログレ入門>
第37回 プリミティヴなプログレッシヴ・アルバム『虚無回廊』制作記<後編>
「プログレッシヴ・ロック」は「進歩する音楽」である――はず。
にもかかわらず、樋口真嗣氏からこのような指摘を受けてしまった。
「常に前に進まなきゃならないのに、一人(筆者のこと)だけ引きずられて心配になっちゃう。どこが“プログレッシヴ(前進的)”なんだよって(笑)」
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しかも金属恵比須のニューアルバム『虚無回廊』発売直前に。樋口氏は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』など、過去の特撮を現代の技術をもって昇華させた映画監督。過去と現代のマッチングで成功を収めた樋口監督からの忠告ということで重みが違う。

樋口真嗣監督、『虚無回廊』を語る
『虚無回廊』はプログレを標榜しているのに「何もかもを引きずるプリミティヴ・ロック作品」であるということに気づかされてしまった。であれば、どうして「引きずられて」しまったかを研究するのもプログレ・ミュージシャンの務めではないか。
ということで『虚無回廊』制作記の後編。日記をもとに構成してみる。日記準拠のエッセイ、まるでプログレの“教祖”ロバート・フリップのキング・クリムゾンの解説みたい。プログレッシヴではないか。
前編( https://spice.eplus.jp/articles/316119 )では、2021年冬に、小松左京の未完のSF大作『虚無回廊』をコンセプトとすることと、「魔少女A」「ゴジラvsキングギドラ」を収録することが決まったことを書いた。中森明菜、ゴジラという筆者の幼少期に執着していたプリミティヴなものをアルバムの要素に詰め込み始めた事実も発覚する。が、これではとてもアルバムの収録曲数を満たすことはできない。不安を抱えながら2022年に突入することとなる。
■写譜からできた「誘蛾灯」
とにかく不安な年明けだった。ニュー・アルバムの発売日は2022年11月下旬と定めたものの曲が足りない。だからといってすぐに思いつくものではない。