■「僕らの食卓」とは
同作は、三田織の同名人気コミックを原作に、共に食卓を囲むことで縮まっていく距離感を丁寧に描く食と家族のハートフルドラマ。育った環境の影響で誰かと一緒に食事をするのが苦手な会社員・豊は公園で年の離れた兄弟・穣と種に出会い、なぜか「おにぎりの作り方」を教えることに。それ以来、豊と穣兄弟は一緒に食卓を囲み食事をすることが増えた、やがて家族のような存在となり、豊と穣の距離も次第に縮まっていく…。
豊役を犬飼、見た目は怖いが、いつも弟の面倒を見ている家族思いの兄・穣役を飯島が演じるほか、明るく元気で上田家のムードメーカー的存在であり、穣の弟・種役で本格的なドラマ初挑戦となる前山くうがが出演する。また、穣と種の父で陶芸家である耕司役の原田龍二や、古畑星夏、市川知宏、てつじ(シャンプーハット)ら個性豊かな面々がストーリーを盛り上げる。
■豊が穣に泣かされたと勘違いして、種が泣き出す
少年時代の家庭環境で人と食卓を囲むのが怖くなってしまったと語る豊。2人に会って一緒にご飯を食べれるのが、生まれて初めて幸せだと思ったと話し、豊は感謝の言葉を述べて泣く。
そこに種が無邪気にやってきて、豊が泣いていることに気づき、穣が豊を泣かしたと勘違いして声を上げて泣く。はしゃいで笑っていたかと思えば豊のために泣く、素直に感情表現する種がかわいい。
「うるさい、うるさい」とお兄ちゃんらしく言って安心させ、無造作に種を抱いてあやす穣にもほっこりとさせられる。
■縁側で3人の平和な時間が流れる
縁側で豊の腕をしっかりと抱いて三角座りする種。「なんで泣いたの?悲しい事があったの?」と種に尋ねられて豊が黙っていると、「種がヨシヨシしてあげようか」と立って種は豊の頭を撫でる。種は大事なものをいたわるようにヨシヨシと言いながら撫で、豊は感極まって種をしっかりと抱きしめて「種くんありがとう」と言う。夕日を浴びて逆光に映える2人の姿は、後光が指しているようで尊いの一言に尽きる。
障子からひょっこりと顔つきのおにぎりを差し出し、穣が裏声で「小腹が空いた子はいねぇか?おにぎりでも食わんかね?」と声をかける。種は「出た!おにぎりマン!」と喜ぶ。
3人で縁側に座って、おにぎりマンを手にする。豊が「かわいくて食べづらいな」と言う傍から、躊躇なくガブリと大きな口でおにぎりを食べだす穣と種。彼らを見て「気にしないんだ」とポツリという豊に、フフッと笑いが溢れてしまう。
3人で黙々とおにぎりを食べて鳥のさえずりが響き、平和な時間が流れる。豊は初めて会った日のことを楽しそうに語る。種は「おにぎりマンで対決しよう!」と豊を誘い、手順を説明する種をうんうんと聴いているが、わからずに「うん?」と疑問口調になる豊が妙にかわいらしい。穣はそんな豊を微笑ましく見守っている。
純粋な種が愛おしく、豊が何度種に救われていることだろうと思うと胸がキュッとなる。豊が種と穣に出会えて本当に良かったと心から思えた。
◆構成・文=牧島史佳