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滋賀県からJリーグへ!ヴィアベンテン滋賀・村田和哉さんの壮大な挑戦

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滋賀県社会人リーグ2部で白星スタート

Jリーグが発足して30年。「オリジナル10」と呼ばれる10チームでスタートし、現在は全国60チームにまで拡大した。しかし、現在もJクラブが存在しない空白県が福井、三重、滋賀、和歌山、島根、高知の6県。その中のひとつ、滋賀県からJリーグを目指しているのがヴィアベンテン滋賀だ。

元Jリーガーの村田和哉さんが自身の33歳の誕生日でもあった2021年10月7日に立ち上げ、現在は滋賀県社会人リーグ2部に所属。5月21日に開幕戦が行われ、ヴィアベンテンは滋賀大学経済・データサイエンス学部と対戦した。

開始早々に先制を許したものの、直後に背番号11を背負う村田さんが右サイドをドリブルで駆け上がり、クロスを上げて味方の同点ゴールを呼び込むと、その後はヴィアベンテンのゴールラッシュ。5-2で白星スタートを切り、運営会社の社長と監督、選手の三足の草鞋を履く村田さんも自らフル出場で勝利に貢献した。

「先制点を取られて、またかと思いました。人生と同じで全てうまくいくわけじゃない。こういうことも想定していたので、そこから逆転して勝てたのは大きい」と安堵の表情。リーグ戦は11月まで行われ、まずは今季優勝して1部昇格を目指す。

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現役時代から滋賀県内の学校で講演活動やサッカー教室

村田さんは滋賀県守山市出身で、野洲高2年時に全国制覇。3年時は乾貴士(現清水エスパルス)らと冬の選手権に出場し、3回戦進出した。

大阪体育大では総理大臣杯で優勝し、2011年にセレッソ大阪に加入。その後、清水エスパルス、柏レイソル、アビスパ福岡、レノファ山口と移籍し、計10年Jリーガーとしてプレーした。

2021年2月22日、現役引退を発表すると同時に滋賀県初のJリーグを目指してチームを立ち上げることを宣言。周囲は冷ややかだったが、村田さんには現役時代から考えていた勝算があった。

「Jリーグは各クラブが地域密着の取り組みをしています。僕がエスパルスの時に感じたのはサッカーだけじゃなく、エスパルスは街のシンボルであり、ハブになってるんです。僕も滋賀県に思い入れがあって、漠然と大人になったら恩返ししたいなと思っていました。県庁とか、市役所とか、教員になって子供たちと関わろうとか考えていたんですが、エスパルスがJ2に落ちて日本代表の夢が遠ざかった2016年からJリーグクラブを作りたいと思うようになりました」

思い立ったらすぐ行動に移すのが村田さんの凄いところ。現役時代からシーズンオフになると自ら滋賀県内の学校に片っ端から電話をかけ、講演活動やサッカー教室などを無償で開催した。公園でサッカーをしている子供を見つけると車を止めて声をかけた。全ては引退後を見据えて故郷での認知度を高めるためだった。

「最初は当てのない学校に電話しても先生に信用してもらえなかったし、滋賀県の子供たちが僕のこと知らんやんとショックを受けました。でも、子供たちにアンケートを取ると、夢は叶わないとか無理だとかいう声が多くて、このままじゃいかんなと」

地道な活動を続けながらプレーヤーとして現役生活を全う。引退してチームを立ち上げる前に、まずはチーム名を公募した。約650件の応募の中にあったのが「ヴィアベンテン滋賀」。琵琶湖は、湖上に浮かぶ竹生島にまつられる弁才天が持つ楽器の琵琶に湖の形が似ていることに由来しており、そこから取ったネーミングだった。

携帯を持つ手が震えたスポンサーからの電話

次に選手集め。サッカーのキャリアだけでなく、人生を変えたい人や滋賀県に思い入れのある人などを条件に盛り込み、面接した上で約30人の中から10人を選んだ。

大学生から市役所職員、工場勤務者、サラリーマンなど年齢も境遇も様々ながら、熱い思いを持つ点だけは一致していた。中にはシンガポールのプロリーグでプレーしていた元選手もいた。

「サッカーを辞めた人がけっこういました。高校でサッカーを辞めた人がもう1回大人になって夢を追いかけたいとか、熱くなれるものが欲しいと。世の中は大人の挑戦を見たいんだなと分かりました。それが滋賀県民や子供たちに夢を与えると思います」

練習は水曜と金曜の夜のみ。学校や仕事を終えてから守山市内のグラウンドに集まる。それでも2022年の滋賀県社会人リーグ3部の開幕戦は26-0で大勝した。偶然にも「26」は村田さんがセレッソで初めて背負った背番号だった。

チームを立ち上げても、さらに強化するためにはスポンサー集めも必要。トレーニングやサッカー教室、講演活動などをしながら自ら企業を回り、資金集めに奔走した。大津市にある株式会社誠進堂から初めてスポンサードを了承してもらった時は携帯電話を持つ手が震えたという。

「僕らの取り組みに共感してくださって感動しました。3部リーグのチームに広告を出しても宣伝効果はないのに。グラウンド費用は高いけど、これで芝生で練習できるねと喜んだのを覚えています」

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果てしないJリーグへの道のりを一歩ずつ

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地道な活動は少しずつ実を結び、スポンサーとともにファンの数も増えてきた。3部リーグは1年で突破し、今季から2部リーグで戦うが、開幕戦では熱心なサポーターが声を枯らした。社会人リーグで応援があること自体が異例中の異例だ。

「まだまだですが、やってきたことは裏切らない。開幕戦の前日も彦根で琵琶湖の清掃活動をして、終わってから米原でサッカー教室をしました。これまで滋賀県には市民のうねり、企業のうねり、サポーターのうねりが欠如していました。県民が望んでないんです。もし清水エスパルスが消滅したら暴動が起きますよ。滋賀県にうねりを作っていくには時間がかかります。100億円あったらできるわけじゃない。地道に活動した結果、サポーターも来てくれるんです」

仮に滋賀県社会人リーグで1部昇格しても、関西リーグ2部、同1部とあり、その上にJFL(日本フットボールリーグ)がある。Jリーグ(J3)はさらにその上だ。

また、先行してJリーグを目指しているレイラック滋賀(JFL)やレイジェンド滋賀(関西リーグ1部)もある。お互いに切磋琢磨してサッカーが文化として根付き、滋賀県民が強い愛郷心と夢を持てる世の中こそが究極の目標なのだ。

最近は村田さんの携帯電話に練習生になりたいと希望するダイレクトメールが殺到しているという。選手は28人に増え、将来は市長になりたいというサッカー経験のないマネジャーも自ら希望して加わった。

撒いた種は少しずつだが着実に芽吹きつつある。いつか大輪の花を咲かせるまで村田さんの壮大な挑戦は続く。

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