
自分が先に旅立つことが決まっていて、その後、孤独を抱えて生きていく「不老不死」の存在を愛してしまったとしたら、いったい何ができるだろうか。3月下旬にTwitter上で公開されたオリジナル漫画『八重桜の君へ』は、想像を超えた愛の形に感動させられる作品だ。
(参考:漫画『八重桜の君へ』を読む)
桜の木の上でしか生きられない不老不死の“花の精”。その美しさに心奪われた少年・悠詩は花の精のもとに通い続ける。悠詩との花の精は2人だけの思い出を積み重ねていくが、大きくなった悠詩は「明日から毎日は来られません」と話す。ただ待てど暮らせど悠詩は姿を見せることなく、時間は過ぎていく。無限の時間を生き、”見える人”との別れを繰り返してきた花の精は落胆するが、悠詩が「あること」に人生を賭けていたことを知ってーー。
作者は、小学校時代に読んだ『東京ミュウミュウ』(講談社)に衝撃を受け、今でもフリルの描き方などはかなり影響されているという卯鳥天 赤子さん(@utyouten_akako)。美麗なビジュアルと切ない物語に魅せられる本作の制作背景など、話を聞いた。(望月悠木)
■人ならざるものでも真っ直ぐに思いをぶつける
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――『八重桜の君へ』を制作しようと思った経緯を教えてください。
赤子:編集者さんと作家さんのマッチングサイト『DAYS NEO』で『ヤングマガジン』(講談社)の編集さんに担当希望をもらい、連載に向けて『ちばてつや賞』に応募する作品を一緒に作ることになったことが最初のキッカケです。『八重桜の君へ』以外にもネームは描いていたのですが、そのネームが説教臭い内容になってしまったんですよね。ですので、『八重桜の君へ』に振り切って「とにかくビジュアル重視でセリフの少ない漫画を作るぞ」と思い立って注力しました。
――登場人物はどのように作り上げましたか?
赤子:「人の姿をした人ではない長寿の神or精霊」と「ただの人間」の組み合わせがすごく好きなので、その2人を題材にした話にすることは最初から決めていました。それから「“一途で一生懸命でちょっと抜けたところのある男の子”なら、人ならざるものでも真っ直ぐに思いをぶつけてくれるかな」と思い、まず悠詩のキャラ設定は決まりました。
――花の精はどのように決まっていったのですか?
赤子:実は編集さんとひと悶着あって花の精は女性になりました。というのも、私自身が「人でないものは無性別」というイメージがあり、なんとなく胸もなく男性の身体に近いベースのキャラ設定にしていました。しかし、その当時のネームでは「私、男だけど」というセリフのフォローが何もなくラストまで進むネームだったため、編集さんから「一応青年誌なのでBLはちょっと……」と打診がありました。「確かにそうだ!」と思ってお姉さんに変更したのですが、結果的にはより良い仕上がりとなり、私としても満足できる作品になったと思っています。