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失敗から新ビジネスを生む~異色チェーンの舞台裏!:読んで分かる「カンブリア宮殿」

テレ東プラス



日本最大のとんかつチェーン~損失2億円でも怒られない


店舗数日本一のとんかつチェーン「かつや」。看板メニューのカツ丼は一日7万食を売り上げる。揚げたてのカツを美味しく閉じ込めた「カツ丼(梅)」は572円。ボリュームたっぷりの「ロースカツ定食」(792円)のロース肉も冷凍ではなくチルドを使っている。

おいしさの秘密は、巨大チェーンにもかかわらず手間を惜しまない作り方にある。カツは店内で一枚一枚、手で仕込む。使っている生パン粉はサクサク感を生む荒めに削ったオリジナルだ。


「ちょっと力を入れただけでパン粉が細かくなってしまうので、優しく包み込むようにつけています」(営業部・樋田勇)

それでも安くできる秘密が…特注のフライヤーにある。パン粉をつけた豚肉を入れると、上下についた針金のコンベアーが回り、カツを揚げながらゆっくり移動させていく。約3分で、程よく揚がって油から出てくる。職人いらずだからこの値段で提供できるのだ。

「ごちそうだった、とんかつを低価格で手軽に食べられるようにしたい。機械の開発や食材のブラッシュアップをしています」(樋田)

「かつや」は去年、500店舗を突破。とんかつを「気軽に食べられる庶民の味」に変えて成長してきた。

「かつや」の運営会社は、とんかつ以外の専門店のチェーンも続々とオープン。15ブランドを展開している。

東京・新橋のあるビルの一角は「かつや」のグループ店が占拠状態。唐揚げブームの火付け役「からやま」に韓国料理スンドゥブの「中山豆腐店」。

去年、オープンした「肉めし岡もと」は連日、満席状態の大盛況。コンセプトは「ガンコ親父が作る市場のぶっかけ飯」だ。「特別な肉丼を目指している」と言う「肉めし」(759円)には大きな豆腐とゴロゴロした角煮や野菜が豪快に盛られている。お好みで煮卵や大根のトッピングも可能だ。


この店を作ったのが店内で働く新業態開発責任者の嶺岸悟。実はこれまでいろいろな業態に挑むも、失敗してきた。

「とんかつ店やステーキ店はありますが、両方を食べられる店がなかったのでやってみました。結果は8カ月で店を閉めました」(嶺岸)

懲りずにステーキ専門店にしてみたが、これまた失敗。結局、ふたつの業態とも1年もたず、潰してしまったと言う。

「(損害額は)2業態で2億5000万円ぐらい。でも怒られることは一切なかったです。チャレンジして失敗することは悪ではない。逆に何もしないほうが怒られます」(嶺岸)

「失敗してもお咎めなし」だから、嶺岸は新メニューも挑戦的に攻めている。

この日は、夏に出す期間限定メニューを試作。つゆだくの卵をご飯に乗せて、柔らかに煮込んだ骨付き鶏を丸ごと一本乗せる。これが親子丼だと言う。

「失敗することを考えていたら何もできない。やって失敗したら謝ります」(嶺岸)

10年間しまっていたものを嶺岸が見せてくれた。それは会社が求人用に作ったというポスター。嶺岸の写真に添えられたキャッチコピーは「二億円の損失も君が育てば投資だ」。


「個人の顔を出して『2億円の損害を出した』とアピールする会社なんてありますか。ただ、やりがいを持って仕事ができるのは非常にありがたいと思います」(嶺岸)

嶺岸は1年前、新業態を開発する子会社の社長に抜擢された。

「(収入面は)25%増ぐらいです。素敵な会社ですよね」

カツ丼から耕運機まで売る~不思議ビジネスの舞台裏


こんな外食チェーンを生んだ会社は新潟にある。連日、車が押し寄せるホームセンターの「スーパーセンタームサシ」新潟店。「かつや」の親会社アークランズは、外食とホームセンター、2本柱の異色チェーンなのだ。

なんでもあるという「ムサシ」の商品数は10万点。その品揃えに1日1万人のお客さんがやってくる。

「ムサシ」の最大の特徴が体験販売だ。店の中央に大量の土が運び込まれた。

「今、畑を作っています。『耕運機は使えるのか?』と不安になるお客が多いので、ここで体験して、使えることを体感していただく」(商品統括部・阿部晃)

「ムサシ」のコンセプトは体感できる体験型ホームセンター。耕運機は7万円から20万円以上という品揃えだが、こういう商品まで体験できる。体験販売を行うと、普段の1.5倍売れると言う。


耕運機だけではなく、売られている物の多くが試せるようになっている。例えばトイレットペーパーは、肌触りや香りを感じてから買える。

屋外では「ケルヒャー高圧洗浄機」(8万1800円)をスタンバイ。客の車を使った洗車体験を仕掛けた。洗車だけして買わない客も多いが、スタッフは気にしない。

「今回は購買につながらなくても、体験する人が1人でも増えればチャンスは来ますので」(店長・八木孝幸)

さらに駐車場にはテント型の「サウナストーブ&テント」(19万8000円)が。ロウリュウもできる本格サウナが家庭で楽しめる。

アークランズ社長・坂本晴彦(47歳)がホームセンターを体験型にしたのは、ライバルと差別化したかったからだ。その動機は危機感だ。

「従来のホームセンターのままでは衰退していく。お客様から見たら、どのホームセンターも特徴が一緒で、自宅から一番近いところでいいよね、と」(坂本)

ホームセンター業界は飽和状態にあり、全体の店舗数は増えているのに、売り上げは頭打ちが続く。つまり客の奪い合いとなっているのだ。

そこで坂本は3年前、業界をアッと言わせる行動に出た。大手「ビバホーム」の買収だ。

それまで「ムサシ」の売り上げは業界11位。しかし、6位だった「ビバホーム」を吸収することで一気に5位に躍り出た。1100億円だった売り上げは3100億円までアップ。小が大を飲み込む買収劇だった。

「自分の図体よりも大きい会社を買収するのは生き残りをかけた挑戦。業界トップを目指していきたいなと思っています」(坂本)

苦難&葛藤!創業家の呪縛~背水の陣で挑んだ秘策


埼玉・三郷市の「スーパービバホーム」三郷店。「ビバホーム」の買収で、アークランズが抱える店舗数は3倍に増えた。坂本は傘下に入った店舗を一軒一軒回り、企業文化の違うスタッフに「ムサシ」のやり方を伝えている。体験型の「ムサシ」で培った客目線の売り場づくりを「ビバホーム」にも浸透させようとしているのだ。

「会社も文化も全く違っていたので毎日が新鮮で勉強になる。確実にプラスになっています」(店長・大山貴司)

失敗を恐れない挑戦でアークランズを躍進させた坂本。その陰には、「創業家一族ならでは」の挫折があった。

創業者は坂本の祖父、坂本守夫。戦後、樺太から引き揚げ、新潟の三条で金物を買い集め、全国を行商。やがて1970年、金物卸の会社「坂本産業」を設立した。

その会社を大きく飛躍させたのが息子の3兄弟。長男が金物卸しを継ぐ一方で、次男は外食、三男はホームセンターと新たな事業に乗り出す。この三男が坂本の父・守蔵だ。父親が三つの事業を統括するグループのトップに立った2003年、坂本も入社した。

「やはり親父の後を継ぎたい。入社した時は『やってやるぞ』と超戦闘態勢でした」(坂本)

入社後、坂本はすぐに大型店の店長など、重要なポストを任されるようになる。ところが4年後、思いもよらない事態が。父親が急逝したのだ。

会社のトップには当時副会長を務めていた次男・勝司が就くことになった。突然後ろ盾を失った坂本は、それでも強気を崩さず、同じように仕事を続けた。しかし、次第に周囲から煙たがられるようになる。当時を知る商品統括部・田村崇良は言う。

「上司だろうと店長だろうと、自分が思ったことをガンガン言う。言われた通りやっても、当時の社長から『違う』と言われるので、『納得できない』と言う人は多かったかと思います」

この時、坂本は初めて自分は親の七光で仕事をしていたと気づく。

「親父が生きていた時は「守られていた」と痛烈に感じました。何もしないで批判ばかりしていた、ただのボンボンだったと」(坂本)

「このままじゃダメだ」と決意した坂本は、自分の力で外食やホームセンターのような「新たな柱となる事業を作ってみせる」と、さまざまな専門店を片っ端から見てまわり、可能性のある業種を探し続けた。

そのひとつがペットショップ。ペットは分野ごとに販売するのが当たり前。しかし坂本は、その慣習に違和感を覚えた。

そこで坂本は何でも揃うペットショップを作ったのだ。その名も「ニコペット」。そこでは犬や猫はもちろん、熱帯魚や金魚、爬虫類など、あらゆるペットをそろえて販売。ペットフードやオモチャなども思い切って多くの種類を置いた。その数、実に1万点。

さらに、商品だけでなく、サービス関係も充実させた。「トリミングサロン」の「シャンプーカットコース」が6050円~。ペットのしつけをしてくれる「ニコわん幼稚園」では専門スタッフがしつけを担当。「1カ月4回コース」2万8600円~という料金で手軽に利用でき、初心者の飼い主に好評だと言う。さらには動物病院も併設した。

坂本は「ゆりかごから墓場まで」の発想で全てをそろえた。すると1カ月の売り上げは1億円にのぼり、国内のペットショップの中でもトップクラスとなった。

ペット事業は会社の新たな柱に。坂本は自分の力で周りを認めさせ、グループのトップに登り詰めたのだ。



ホームセンターを変える!~専門店に負けない店づくり


坂本は「ニコペット」の他にも専門店に負けない品揃えの売り場を増やしている。

「スーパーセンタームサシ」新潟店の中にある「アークオアシス」は、画材や手芸用品など、さまざまな趣味の道具を揃えた売り場だ。

ここには毛筆だけで200種類。ホウキのような大きさの「羊毛大筆」(10万8000円)まで置いてある。


「ホームセンターの品揃えだとお客様のニーズに対応できない。ホームセンターの各部門が世の中の『専門店に負けない部門になる』ことを目指してやっています」(坂本)

埼玉・蕨市の「ビバモール」蕨錦町店。キャンプ用品を扱う「キャンプギア」には、キャンプの上級者にも通用する商品を集めた。例えはずっと座っていたくなる「ゆらゆらハンモックチェア」(8778円)はホームセンターでは見られない商品。大人気のLEDランタン「ライトハウス」(4180円)は品薄状態になっていて、プレミアム価格で販売しているところもある商品だ。

~村上龍の編集後記~
創業者は樺太で鋸の行商をしていた。敗戦時の生死をかけた樺太脱出。落ち着きを取り戻した北海道で鋸の行商を再開、その仕入れ先が新潟県三条だった。創業者とアークランズの「ニコペット」には共通点がある。生きものを扱うというリスクを経営者が負っているが、半端ではない。樺太から脱出してきたというリスクに重なる。坂本社長が、ペット事業を強みにしたいと「ゆりかごから墓場まで」というサービスを始めた。サービスはなかなか根付かなかった。やっと根付き始めたところだ。やることの、スパンが長い。

<出演者略歴>
坂本晴彦(さかもと・はるひこ)1976年、新潟県三条市生まれ。2003年、明治学院大学国際学部を卒業後、アークランドサカモトに入社。2021年、代表取締役社長就任。2022年、社名をアークランズに変更。

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