
宇宙で生命体を探すなら、それに適した形状のものが必要だ。たとえば、どんな隙間にも入り込めるヘビ型ロボットなんてどうだろう?
実際、NASAの研究チームはヘビのように細長いロボットを開発している。
手足がないヘビだがその機動力は高い。NASAジェット推進研究所(JPL)で開発されているヘビ型ロボット「EELS」は、どんな地形にも対応でき、狭い隙間をすべり降りることだってできるという。
氷に包まれた土星の衛星「エンケラドゥス」は、地下の海に生命の存在が期待されている。
いつの日かそんな氷の世界で生命体を発見するべく、現在、さまざまな環境でEELSのテストが行われているところだ。
Testing Out JPL’s New Snake Robot
新たな世界を這い回るヘビロボット「EELS」
自律走行をするヘビ型ロボット「EELS」の主任研究員、小野雅裕氏は「四輪車の設計についてはたくさんの教科書がありますが、どんなロボットも行ったことがない場所を大胆に進む自律式ヘビ型ロボットの設計について書かれたものはありません」と、プレスリリースで語る。彼らが作っているのは、そんな教科書が教えてくれないロボットだ。
EELSという名は、「Exobiology Extant Life Surveyor」の頭文字を取ったもの。ヘビ型ロボットとは言うが、名前の意味はウナギだったりする。実際、ウネウネと動き回る姿は、ヘビというよりはウナギを連想させるかもしれない。
科学者の頭にあるのがヘビだろうがウナギだろうが、彼らが目指すのはどんな地形にも対応できる、高度な機動力を持つロボットだ。
これまでのロボットは、それぞれに得意な地形というものがあった。
だがプロジェクトマネージャーのマシュー・ロビンソン氏によれば、EELSが目指すのは、「他のロボットが行けない場所に行く能力」「あらゆる地形に対応する能力」であるという。

カリフォルニア州パサデナの氷でテスト中の最初のEELSプロトタイプ / image credit:NASA/JPL-CalTech
他の探査機が到達できないような場所での活躍を目指して
全長4メートル、重さ100キロあるEELSのパワフルな移動力の秘密は、いくつものセグメントに分かれたボディにある。ネジのような10個のセグメントが回転することで、がっちり地形をとらえて前進するのだ。
2019年にプロトタイプが開発されて以来、氷河や火星を模した環境など、さまざまなところでその性能がテストされてきた。

EELS は雪の多い状況でもその能力を発揮した / image credit: NASA/JPL-Caltech
EELSが将来的に赴くことになる太陽系の惑星や衛星には、地球のような信号や道路などといったものは何一つない。そこを単独で探査するロボットは、道なき道を危険を避けながら進まねばならない。
だからEELSは自動で周囲の環境を感知して、リスクを計算し、自力で回復できるよう設計されている。
自律機能の担当者ローハン・タッカー氏は、「1.5メートルの高さを、降りれなければなりません。落ちるのではなくてね」と語る。
そのために、EELSには4対のステレオカメラと、レーザーで周囲の3Dマップを作成するLiDARが搭載されている。この3Dマップをもとに、もっとも安全なルートが導き出される。
だが最終的にどのような科学機器が搭載されるかは、まだ決まっていない。
「今のところ、自律性と機動性に重点を置いています。いずれはEELSに搭載する科学機器も検討するでしょう」とロビンソン氏。
実際にヘビ型ロボットを使う科学者の興味と要望に応じて、それを実現できるロボットをとにかく作る。それが彼らの役割だ。
近い将来、EELSが土星の衛星など生命体がいる可能性の高い星で、未知との遭遇を果たしてくれることを期待しよう。
References:JPL’s Snake-Like EELS Slithers Into New Robotics Terrain / written by hiroching / edited by / parumo