
リュックでなくて冷蔵庫?どうみても山にふさわしくない装備だがそこには真面目な理由があった。
イギリスで話題を呼んだこの男性は、過酷な登山に本物の冷蔵庫を背負って挑んだ元兵士マイケル・コープランドさん(38歳)だ。
彼は先日メンタルヘルス(心の健康)のチャリティー活動のため24時間内にイギリスが誇る最高峰3座を巡るチャレンジルートを見事にクリア。
うつや不安神経症がきっかけで山登りが趣味になった経験から、同様の病に共通する「目に見えない精神的な負担」を冷蔵庫で示したマイケルさんの驚異的なハイカーぶりをみてみよう。
Man Summits Highest Peaks of UK with Fridge on his Back For Mental Health
チャリティのためイギリスで冷蔵庫を背負い登山した元兵士
すれ違ったハイカーも思わず見つめる奇妙な装備。ごつくて重い本物の冷蔵庫を背に山登りするこの男性は、38歳の元兵士マイケル・コープランドさんだ。

実はこれ、今月初め、イギリスで行われたチャリティイベントの一環で行われたもので、精神を病む人々を支える慈善団体「マインド」の寄付を募るための登山チャレンジだったのだ。
3つの最高峰を完登しタイムリミットの24時間をクリア
山登りが趣味で命知らずなマイケルさんは、5月1日早朝リュックの代わりに冷蔵庫という異例の装備で、イングランド、スコットランド、ウェールズの最高峰3座を24時間内に完登するナショナル・スリーピークス・チャレンジに挑戦。午前6時54分にスコットランドのベン・ネビス山(1,344m)のふもとを出発。湖水地方のスカフェル・パイク山(978m)、ウェールズのスノードン山(1,085m)の順で3山を完登し、タイムリミットの24時間の10分前にゴールした。

強風や氷点下の寒さ。悪天候の連続で最後は冷蔵庫と疾走
なおその日はあいにくの悪天候続きだった。
マイケルさんは途中大雨や雪、風速18mの強風など、過酷な気象条件にさらされっぱなしで、最後のスノードン山では頂上から冷蔵庫と一緒に下り坂を駆け下りたそうだ。
今回のチャレンジは山の天気の変わりやすさがテーマの映画みたいでした。特にスノードン山(1,085m)を登るときは時速40~64km の風で、誰かが自分を押し倒そうとしてるような感じでした。マイケルさんによるとベン・ネビス山とスカフェル・パイク山までは無風で助かったものの、スノードン山ではすさまじい風と30cmの積雪に加え氷点下の寒さに見舞われたという。

とにかく冷蔵庫を背負って走ってました。背中に冷蔵庫が当たってとても不快でしたがその時はやり遂げることしか頭になかった。まるでフォレストガンプの気分でした。
冷蔵庫は「精神的な負担」目に見えないつらさを可視化
にしてもなぜよりによって冷蔵庫?と聞きたくなるがマイケルさんにとってこの装備は重要な意味があった。彼のチャレンジを邪魔し続けた冷蔵庫は、今は健康な人でも背負う可能性がある「精神的な負担」の象徴だという。

この冷蔵庫は私を含むあらゆる人は何かの拍子に背負いこむかもしれないメンタルヘルスの苦しみを意味します。一見奇妙なその行動は、目に見えないそのつらさを一人でも多くの人に知ってもらうためのものだった。
うつや不安神経症を経験しロックダウンで登山が趣味に
かつて兵士だったマイケルさんは真面目な性格で、二人目のわが子誕生を機に除隊したもののしばらくは社会復帰に苦労した。うつや不安神経症になりやすい気質の一方で、人並み以上の体力に恵まれたマイケルさんは時折現れるメンタルの不調に引き込まれないよう、いつも没頭できる趣味や余分な体力を生かす手段を求めてきた。
山登りもその一つ。実はマイケルさんは根っからの山好きなどではなく、兵士をやめた後の10年間はボディビルを趣味にしていたそうだ。
ところが新型コロナのロックダウンで精神的に不安定になり、余分なエネルギーの使い道と献身の両方が叶う登山が趣味になった。

寄付金およそ120万円!メンタルヘルスのチャリティ団体に貢献
イングランドとウェールズを拠点とするマインドは、60年以上の歴史があるメンタルヘルスの慈善団体だ。同団体は、精神的な病に苦しむ人に情報やアドバイスを提供するだけでなく、病で立ち行かない人の救済手立ても模索する。また政府や自治体にも積極的に働きかけている。
なおこのチャレンジでマインドに集まった寄付金はなんと7,000ポンド(約120万円)と大成功。自身のつらい経験をもとに体まで張り、多くの反響を呼んだマイケルさんはこんな風に語っている。

私は極端に考えすぎる性格で、いつも自分は不十分だと感じています。つねにもっと多くのことをしたいと思ってるんですよ。自然に触れるのはメンタルヘルスに良いとも聞くし山登りなら筋力もついて一石二鳥かも。有り余る体力で社会貢献するマイケルさんの活躍はこれからも続きそうだね。
References:goodnewsnetworkなど /written by D/ edited by parumo