
イギリスの昔ながらの家というと、レンガ造りがほとんどだ。レンガ造りの建物の場合、複数の窓がある。だが、窓が一部レンガで覆われているという奇妙な光景を、イギリスではよく見かけることがある。
つまり窓の役目を全く果たさず、壁の一部のようになっているのだが、実はそれにはある理由がある。
その理由を、歴史家の女性がインスタグラムで明かすと、多くのユーザーは「なるほどそういうことか!」、「自分もそうするかも」となったようだ。
イギリスでは窓の一部がレンガで覆われている
インスタグラムアカウントで、さまざまな建物についての歴史をシェアしている歴史家で作家、司会者のアリス・ロクストンさんは、4月13日にイギリスのレンガ造りの建物についての興味深い歴史について投稿した。イギリスの古い建物は、そのほとんどが小さめの窓のあるレンガ造りとなっている。
その窓の一部が、レンガで覆われている建物を目にすることも、イギリスでは少なくない。なぜ窓がレンガで覆われているのだろう?

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窓が壊れたから?かつて監禁の部屋として使われていた?様々な憶測が頭をよぎるが、それにはこんな合理的ともいえる理由があるようだ。
かつてイギリスでは窓の数に応じて税金が高くなっていた
その理由は税金に関連する。かつてイギリスに存在した「窓税(Window Tax)」によるものだ。これは、いわゆる固定資産税の一部で、窓の数に応じて税金が高くなるという仕組みだったという。
イングランドとウェールズでは、この窓税は1696年に導入され、155年後の 1851年に廃止された。スコットランドでは1748年から1851年まで窓税を課していた。
1709 年にイングランドとスコットランドが連合して税が統一されると、窓が 30枚以上ある家屋には、より高い税率が導入されるようになった。
ただし、教会などの公共の建物や年間収入200ポンド以下の農家、乳製品工場、醸造所などは免除された。貧しい人や聖職者なども免除されることがあった。
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窓をふさいで数を減らすことで税金を節約
当時、家が大きければ大きいほど、窓が多くなり、その分支払う税金が高くなる。この税金に納得がいかない人々は、光や空気が失われるのを我慢し、窓をレンガで覆い、窓の数を少なくすることで、税金の額を減らしたのだ。

意外と知られていなかったイギリスの歴史
ロクストンさんは、イギリスの窓税の歴史について、次のように説明している。当時は、窓が10 個以上ある家に住む人はほとんどの人が課税されることになっていました。動画を見たユーザーらからは、「実際にその光景を見たことはあっても、歴史については知らなかった!」という声や、次のようなコメントが寄せられた。
これは、より大きな家を持っている可能性が高いため、より裕福な人が支払うという考え方でした。
でも政府は、支払いを避けるために逃げ道を作るという国民の決意を過小評価していたのです。
新鮮な空気のために、税金というお金を吐き出すのではなく、多くの既存の窓をレンガで固めて、施設内の窓の総数を減らし、税金の支払いを回避しました。
今日見られるこの奇妙な景観は、そういう歴史の名残です。
・興味深いけど、ひどいね。窓を覆って光と新鮮な空気をあきらめなければならなかったなんて!! そもそも窓に税金がかかるなんて!
・歴史が抑圧の物語に満ちているのは魅力的だ。
・はは、この頃から「税金なんて払いたくねぇ!」って英国人がわんさかいて、政府がせっせと対応してたんだな(笑)
・窓税が廃止された500年後の今でも、そのままになってるっていうのが笑える。
・ベルギーでは、家の全体的な外観を維持するために、人々が窓をレンガで覆い、レンガの上に窓をペイントした光景を今でも見ることができるよ。

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この「窓税」は、空気や光の不足による健康や幸福度の低下をもたらし、自然の空気や光を奪う不公平なものであるという批判が高まり、著名人なども反対運動に加わったため廃止となった。
窓税が廃止された後には、窓を開けたり増やしたりする動きが活発になり、窓の形や配置にも多様性が生まれたそうだ。
ちなみに、この窓税は隣国のフランスやアイルランドでも実施されていたが、現在は廃止されているということだ。
References:People are just learning why some buildings have bricks instead of glass windows/ written by Scarlet / edited by parumo