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陰陽座、約3年振りのライヴツアー『捲土重来』4/14東京公演をレポート!

DI:GA ONLINE

陰陽座特別公演2023『捲土重来』
2023年4月14日(金)TOKYO DOME CITY HALL

“妖怪ヘヴィ・メタル”という個性溢れる世界観に象徴される音楽で、長きに亘って強固なファンベースをグローバルに築いてきた陰陽座が、約3年ぶりのステージ復帰となる東名阪ツアー『捲土重来』を行った。特にその初日となる東京ドームシティホール公演は、結論から言えば、その場に集った誰もが感極まるライヴだったはずである。

暗転した舞台にメンバーが一人ずつ姿を現すたびに巻き起こる大歓声。そこで場内に流れてきたのは「焔之鳥」であり、もちろん、そこに続くのは「鳳翼天翔」だ。陰陽座を象徴する、長らく愛されてきたこの代表曲で幕を開けることは、多くのオーディエンスが予想していたことだろう。目の前の奇跡的な光景に涙しながら声援を贈り、共に歌い上げていく。<生と死の理を 来世(あす)に伝えて舞い上がれ>。最後のコーラスの一節がこれほどまで感動的に響いたことはなかったかもしれない。

それには大きな理由がある。ファンには周知の話だが、この3年もの空白期間において、実はバンドは将来を左右する重大な局面と対峙していたのである。簡潔に説明するなら、まず、2019年7月から行っていた自身3度目の全都道府県ツアー『生きることとみつけたり【参】』が、九州地区の5本を残した終盤で延期の判断がなされた。これは黒猫(Vo)に突発性難聴の疑いが生じたことが背景にあったが、その復調が進むのと相反するかのように、彼女は声帯のジストニアによる発声障害を患っていることが発覚する。

当初、黒猫はまったく声が出ず、歌うどころか話すことすらできなかったという。ジストニアには決定的な治療法が確立していないことも知られているが、実際にこの症状を理由に引退を余儀なくされたミュージシャンは少なくない。現実的な要因を踏まえれば、瞬火(Vo&Ba)、招鬼(Gt)、狩姦(Gt)も、状況次第では解散を選択せざるを得ない覚悟もあっただろう。黒猫の声なくして陰陽座は成立しないからである。

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折からのコロナ禍は通院にも支障をきたしたが、黒猫は人知れず長い時間をかけ、日々、自宅で自分の声を取り戻すための地道なトレーニングを絶え間なく続けた。文字通りに暗闇の中でかすかな光を探すような苦難だったことは想像に難くない。絶対にまた歌うのだという強靭な信念。彼女は希望を捨てなかった。そして、黒猫の懸命な取り組みをメンバーは献身的に見守り続けた。

黒猫の復調が見えてきたところで、陰陽座はひとまず音源制作へと向かい、今年1月にはアルバム『龍凰童子』をリリース。レコーディングと並行して、ライヴ活動の再開も模索する中、ようやく決まったのが今回のツアーだった。冠された『捲土重来』というタイトルの意味は推して知るべしだろう。スタジオでの録音作業とは異なるステージという環境で、黒猫が以前と同じように歌い、舞い踊ることができるのかどうか。誤解を恐れずに言えば、ある種の実験的な試みでもあったに違いない。しかし、先述した冒頭の「鳳翼天翔」で轟いた絶唱に、観客はバンドの完全復活を確信したのである。

最初のMCで瞬火はリーダーとして、ファンに謝意を表した。
「3年もの間、陰陽座を待っていてくださったことに対して、感謝を言わせてください。ホントにありがとうございます!陰陽座が踏み出す一歩をみなさんと一緒に踏めたら無上の喜びです」
すかさず「百の鬼が夜を行く」をコールすると、例によってメンバーみなアクティヴにステージを右へ左へと動き回る。間奏での黒猫の狂気の舞いもお馴染みだ。さらには「桜花ノ理」「彷徨える」「月に叢雲花に風」「ひょうすべ」「烏天狗」と初期の楽曲をメインとして、その後もセットは進んでいく。無論、そこに隠された意図もあるだろう。受け手それぞれに感じ取り方はあるとはいえ、少なくともノスタルジーに浸らせるためだけのものではない。あえて詳細は記さないが、言葉にする必要もない、陰陽座の強い絆が見えてくるものだった。

黒猫(Vo) 瞬火(Vo&Ba)

黒猫の「ホントにホントにお久しぶりです!ありがとうございます。ただいま!」との第一声に「おかえり!」と熱く返すオーディエンスに対し、「こんなにたくさんの人が待っていてくださって、またここで同じ時間、楽しんでいられることが、ホントに夢のようで……こんな幸せがあっていいのかって思うんですけど」と彼女は率直な気持ちを言葉にする。そして瞬火はファンからの熱い声援、いつまでも待つという信念が黒猫を頑張らせることができたのだと、改めて感謝しながら、「こんなときに自分に向けて歌うために作ったのかなという気がする」と作曲した20数年前を振り返りながら「塗り壁」を導いた。妖怪をモチーフにした陰陽座の楽曲は数多いが、妖怪とは人間の様々な思いを体現した存在なのだということを実感させるパフォーマンスでもあっただろう。

続いてレア曲になっている「陰陽師」をセレクトして沸かせてからは、幅広いリスナー層に支持されてきた「甲賀忍法帖」を始めとするライヴでの定番的マテリアルを立て続けに披露。本編の最後を「春爛漫に式の舞う也」で締め括ったのも爽やかな涙を誘うものだった。2014年発表の『風神界逅』に収録された楽曲で、この日の演目の中では最も新しい部類だが、タイトルにも示されているように、彼らとファンが共に思いを交歓する様が描かれたもの。今回の舞台に相応しい選曲だった。

招鬼(Gt) 狩姦(Gt)

今回のアンコールは通称“極楽地獄”と呼ばれる、激しく盛り上がる楽曲を連発する構成。当然のように観客は熱狂するが、「卍」「わいら」「悪路王」という、オリジナル・アルバムには収録されていない、シングルのカップリング曲を並べても絶大なリアクションが得られるのは、ファンが真摯に陰陽座と向き合い、その音世界に深く魅了されているからこそだろう。

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