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インド映画が熱い! 実話を元にした「スーパー30 アーナンド先生の教室」からインドの教育格差と新たな希望に触れる

キネマ旬報WEB

インドの格差社会の高い壁に果敢に挑み、貧しい家庭の子供たちに学びの機会と喜びを与える革新的な教育プログラムを考案し、世界から賞賛を浴びた教育者アーナンド・クマール。その半生を実話を元に描いた、「スーパー30 アーナンド先生の教室」のBlu-ray&DVDが4月28日に発売された。本作が製作されたインドの熾烈な教育現場の現状と合わせ、作品の魅力に迫った。

スケールの大きな娯楽作の南インド映画に、人々の機微を描く北インド映画

インド映画「RRR」(2021)が日本で公開されたのは昨年10月21日。それから約半年となる今もなお、全国での上映が続きヒット中だ。「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995)が1998年に打ち立てた興収4億円強という記録を2ヶ月で抜き、「RRR」の興収は4月初旬には16億円を超えたという。娯楽要素満載で、派手な展開が観客を魅了するのは南インドで作られた両作品に共通する特徴だが、「ムトゥ」の四半世紀後に作られた「RRR」はCGとVFXを駆使し、よりスケールの大きな娯楽作品となっている。
(※南インド映画の中でも「RRR」はテルグ語映画=トリウッド、「ムトゥ」はタミル語映画=コリウッド)

このスケールの大きな娯楽作、という点では、北インドのボリウッド映画ことヒンディー語映画は、南インドの大作に遅れを取っている。しかしながら、エモーショナルな表現や心にしみるストーリーテリングのうまさは、やはりボリウッド映画に軍配が上がる。特に今世紀に入ってから、ボリウッド映画は実在の人物を主人公にした作品を多く作るようになった。日本でも好評だった「パッドマン 5億人の女性を救った男」(2018)のように、市井の人がヒーローとして脚光を浴びる作品が増えたのである。今回ご紹介する「スーパー30 アーナンド先生の教室」(2019)も、そんな1本だ。

貧困から学業を断念した失意の天才数学者

舞台は北インド、ビハール州の州都パトナ。アーナンド・クマール(リティク・ローシャン)の家は父が郵便配達員で、母と弟との一家4人の生活は厳しい。数学の天才であるアーナンドは、ラーマーヌジャン賞(ラーマーヌジャンは1920年に32歳で没したインドの天才数学者。2016年のイギリス映画「奇蹟がくれた数式」の主人公)を授与されたりするものの、貧困ゆえの苦労がつきまとう。イギリスの数学専門誌を読むにも、列車の屋根に無賃乗車してベナレスの名門大BHU(ベナレス・ヒンドゥー大学)の図書館にもぐり込んで読んでいるのだ。

そんな中、図書館の事務員から、「自分の論文が掲載されれば専門誌は毎号送ってもらえる」と教えられ、見事に論文掲載を実現させたアーナンドの所には、ケンブリッジ大学からの入学許可証も届く。ところが旅費が工面できず、アーナンドは留学を断念。追い打ちをかけるように父が亡くなり、大黒柱を失った母子3人の生活は益々困窮する。恋人のスプリヤー(ムルナール・タークル)とも会えず、失意のアーナンドはパーパル(米粉せんべい)を売り歩いていたが、ある日、進学塾の経営者として金儲けに走るラッランから、彼の塾の講師に誘われる。アーナンドはたちまち人気講師となり、高額の謝礼で生活も潤った。そんな時アーナンドは、夜の宴会場の外で数学の問題を解く貧しい少年に出会う。下働きの仕事の合間に、寸暇を惜しんで数学に取り組む彼──それは少し前のアーナンドの姿だった……。

私財を投じ貧しい子供のためのプログラムを開設

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アーナンドはラッランの塾を辞め、貧しい子供たちのために無料の塾を開設する。応募者の中から選抜した優秀な30名に宿泊場所と食事を提供、このプログラムを「スーパー30」と命名して彼らを鍛えていく。彼らが目指すのは、インド随一の難関大学IIT(インド工科大)。「IITに落ちたから仕方なくMIT(マサチューセッツ工科大)に行く」と言われるほどの優秀な大学だ。

インド全土にIITは23校あるのだが、マドラス校は2022年まで数年間全インド国立大ランキング第1位をキープ、ボンベイ校とデリー校もそれぞれ3位と4位が定位置だ。これら上位の大学に入学するには、幼稚園から一貫して英語ミディアム(インドでは、主に英語を用いて授業する学校=英語ミディアム校と、ヒンディー語、タミル語、ベンガル語など地元の言語を用いる学校=現地語ミディアム校とに分かれる)の名門校で学び、進学塾にもお金を掛けられる金持ちの子弟でないと無理である。アーナンドの挑戦は無謀でしかないが、その結果は!?──本作をご覧になってのお楽しみ、である。

日本や韓国以上の受験戦争社会であるインドの姿に驚かれると思うが、さらに自分の進学塾の利益を守るため、ラッランがアーナンドの命を狙うなど、信じられないような展開も登場する。しかしながら、実在のアーナンド・クマール氏によると、本作の「90%は私の経験にもとづいています。作品に描かれているように、教育をビジネスにする人々からライバル視され、“予備校マフィア”から攻撃を受けて同僚が刺されたことがありました。私自身も暴力を受けて何度もケガをし、今は護衛を付けています」(本作の劇場用パンフレットより)という。決して話を面白くするために挿入されたシーンではないのだ。

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