
2020年の調査によれば、フランス人の52%は何らかのペットを飼っている。数が一番多いのは魚で約2600万匹、その次は猫で約1500万匹だ。犬は鳥に次ぐ第4位の750万匹。日本における犬猫のペット数(2022年)は約1589万匹とされ、日本とフランスの人口の差を考えると、フランスのペット数の多さがよくわかる。そのフランスにおいて、ペットビジネス、しかも亡くなったペットのビジネスが、ここのところ盛んになりつつある。
◆ペットの遺体をインテリアにする闇市場
ニュースサイト『ヴァキタ』が1月に報じた闇市場の存在は衝撃的だった。インテリア商品に仕立てられた死んだ犬や猫の毛皮や骨、顔、脚などが販売されていたというのだ。フェイスブックのプライベートグループ「MS Ostéo」で売られていた「商品」には「ロットワイラー犬の毛皮の敷物、猫の顔で作ったマスク、ホルマリン漬けの動物の胎児」なども含まれるとされる。
Un rottweiler transformé en tapis de bain…
@William_Thorp a enquêté sur ce business ahurissant. Rendez-vous sur https://t.co/dxZLqb0Pq9 pour découvrir les deux premiers épisodes de notre investigation
pic.twitter.com/IMxrKjHTQ4
— Vakita (@vakitamedia) January 17, 2023
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MS Ostéoの代表者がヴァキタに語ったところによれば、猫の頭蓋骨には30ユーロ、全身の骨には80ユーロ、猫のマスクには40ユーロという値段がつけられていた。ヴァキタは、このビジネスに利用された動物は約500匹とみる。
これらのペットの遺体は、動物病院が火葬のために引き渡した業者から流れており、解体や解剖は飼い主の許可なく行われていた。フランスでは剥製などの動物標本作成は違法ではないが、飼い主の許可なくこれを行うことは違法である。(20minutes紙、1/18)
◆飼い主が剥製を希望する例も
ペットの死後、飼い主自身がこれを剥製にしたいと希望する例も皆無ではない。北部パドカレ県の剥製師は少なくとも月に2回は依頼がくると語っている。剥製にかかる費用は300~1000ユーロ(約4万5000~15万円)だ(20minutes紙)。
また、ペットの毛から糸を紡ぐサービスも2019年に誕生した。紡いだ毛糸で小物や靴下などを編んでもらうことも可能だ。50グラムの毛糸を紡ぐのに65グラムの毛が必要で、費用は11ユーロ(約1600円)。また追加で2ユーロ払えば、その毛糸で10センチほどのハート型を編んでもらえる。
◆死後もペットとつながっていたい人々
フランスには動物用火葬場が25ヶ所、動物用墓地が40ヶ所ほどあるとされるが、どちらの数も十分とは言えない。そのあたりに注目したペット専門の葬儀サービスも、近年徐々に増えてきた。
スイスやドイツ、イギリスと異なり、フランスではヒトの墓地にペットの動物を埋葬することは認められていない。だが2022年末に、飼い主の墓へのペット埋葬を許可する法案が提出された。その前年に行われた調査によれば、ペットと飼い主を同じ墓に埋葬することに賛成する国民は68%に上った。法案が通るかどうかわからないが、この動きは死後もペットとつながっていたいと考える人の多さを物語っている。