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映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 — 映画『不思議の国の数学者』—

キネマ旬報WEB

謎めいた男と数学が高校生の未来を変えていく

大学受験の結果が人生を大きく左右するため、日本以上に過酷な競争を強いられている韓国の高校生たち。日本のセンター試験にあたる共通試験(修能試験)が有名だが、近年では在学中の成績をもとに書類選考によって合否を決める推薦入学が7割以上を占めているという。「不思議の国の数学者」の主人公である高校1年生のジウが、担任からより好成績を挙げやすい公立高校への転校を勧められる背景には、こうした事情がある。一度はその言葉に従いそうになるジウだが、思いがけない出会いが、行き詰まっていた彼の高校生活を変えていく。

 

人生に希望を持つことのできなかった若者が、意外な“師匠”と出会うことによって自らの進むべき道を見つけていくという王道ストーリーに、韓国の受験事情や分断国家の現実を織り込んだ今作。パク・ドンフン監督は参考にした作品としてロビン・ウィリアムズがアカデミー賞助演男優賞に選ばれた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(97)の名前を挙げているが、今作でも落ちこぼれかけた名門高校生ジウを導くハクソン役のチェ・ミンシクがすばらしい演技を見せている。韓国を代表する俳優である彼が、学問の自由を求めて韓国にやってきたものの、厳しい現実にぶつかり生きる気力を失っている人物を、繊細に表現。ジウに数学の美しさを教えながら、彼自身も人生の意味を見つけ直していくという展開に胸が熱くなる。250倍のオーディションを経てジウ役をつかんだ新人キム・ドンフィも大先輩の胸を借り、成長していく青年をのびのびと演じている。

ハクソンが愛するバッハの名曲や、円周率をもとにしたピアノ曲などの音楽、数学の魅力を視覚的に伝える映像にも工夫が凝らされている。見終わってさわやかな余韻が残るヒューマンドラマだ。

文=佐藤結 制作=キネマ旬報社
(キネマ旬報2023年5月上・下旬合併号より転載)

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「不思議の国の数学者」

【あらすじ】
エリートたちが集まる名門私立高校になじめず、苦手な数学の成績も上がらなくて転校を考えるジウ。ひょんなことから脱北者である警備員のハクソンが数学の天才だと気付いた彼は、頼み込んで個人教授を受け始める。試験のための勉強ではなく数学そのものの魅力を教えられたジウは、やがてハクソンがなぜ韓国へとやってきたのかを知る。

【STAFF & CAST】
監督:パク・ドンフン
出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュンほか

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