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時価数十億!?ストラディヴァリウスが高い理由

日刊ホントの話

クラシック音楽には趣味も興味もなくてね、という人でも、名器「ストラディヴァリウス」の名前や評判を聞いたことはあるでしょう。絵画でいえばルーベンス、車にたとえればロールスロイスといわれる唯一無二の存在の秘密に迫ってみました。


●そもそもストラディヴァリウスとは?

 ストラディヴァリウスは、イタリア・クレモナのストラディヴァリ父子3人(父アントニオ、子フランチェスコ、オモボノ)が17~18世紀にかけて製作した弦楽器のこと。とくに父親のアントニオが製作したものが有名です。オークションなどでは「ウン十億」と、楽器にしては破格の値段がつけられ、音楽関係者だけでなく資産家やコレクターにとっても垂涎の的として知られています。

 ストラディヴァリ父子はほぼ70年間で1100~1300挺の楽器を製作されたとされ、そのうちの約600挺が現存しています。最も多いのはヴァイオリンですが、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、マンドリンやギター、ハープまで、弦楽器ならほぼなんでもつくったようです。しかし、ヴァイオリンとチェロ以外の楽器は現存数が少ないため、公開市場にはまず出てこず、博物館や個人収集家のもとで眠っています。

 最も多く出回るヴァイオリンも非常に高価なため、所有する団体から演奏家に貸与されるのが通例。日本では日本音楽財団が最も多くのストラディヴァリウスを所有し、内外の35歳以下の若手演奏家に無償貸与しています。

●名器を演奏した古今東西の演奏家とオークション

 どんなに高価なものとはいえ、美術品ではなく楽器である以上、ストラディヴァリウスの価値は音色にあります。

 ストラディヴァリウスを愛用した著名なヴァイオリン演奏家としては、ニコロ・パガニーニ、フリッツ・クライスラー、ジャック・ティボー、ミッシャ・エルマン、ヤッシャ・ハイフェッツなどの名が挙げられます。チェロでは、ムスティフラフ・ロストロポーヴィチ、ジャクリーヌ・デュ・プレ、ヨーヨー・マなどがストラディヴァリウスを用いた名演奏を残しています。

 日本のヴァイオリニストで、ストラディヴァリウスの名を一般に広めたのは2021年に亡くなった辻久子さん。1973年に自宅を売却し、1703年製のストラディヴァリウスを購入したのは、大きなニュースになりました。その後も千住真理子さんや高嶋ちさ子さんが個人所有していることで有名です。

 国内で最も多くストラディヴァリウスを所有する日本財団が、東日本大震災の復興支援のため、オークションに出品したのが「レディ・ブラント」(1721年製)。保存状態の非常によい逸品であったため、過去最高額の1,589万4000ドル(約12億7,420万円)で落札されました。また、2022年6月には、「ダ・ヴィンチ」(1714年製)が1,534万ドル(約20億6,000万円)で落札と、歴代2位(ドル換算)を記録しました。こちらの出品者は株式会社壱番屋(カレーハウスCoCo壱番屋)の創業者で、名古屋・宗次ホールのオーナーでもある宗次徳二さんです。

●バイオリンの最高峰「ストラディヴァリウス」が高価な理由

 製作されて300年も経つストラディヴァリウスが、なぜそれほど高い評価を受けているのでしょうか。その音色は、現代の技術でも再現不可能とされています。ニスが違う、防腐処理に特別な方法を使ったなどの逸話がささやかれてきましたが、現在ではいずれも否定されています。

 最近の研究で明らかになったのは材質の違いです。ストラディヴァリ父子が活躍した17~18世紀は小氷期のちょうど中頃。夏も冬も日照時間がほとんど変わらず、一年中木の成長速度が安定しているため、均一な密度で、極めて「積んだ」木材ができたのだそうです。このことはCTスキャンによる分析でも明らかにされています。

 そのなかでも素晴らしい材料を見極めた上で、ストラディヴァリ工房の天才的な技術によってつくられた弦楽器は、初めて世に出た頃から名器の名をほしいままにしました。工房から出荷された楽器は王侯貴族に引き取られ、大事に保管されたり、彼らがパトロンとなった名演奏家の手で弾き込まれたりしてきました。

 300年間、楽器としての成熟が進むなかで、1挺ごとの個性が育ち、名器の音を誕生当時以上のものにしていると言われます。古くはマリー・アントワネットやエリザベートの聴いた楽器が、今もコンサート会場の空気を震わせると思うと、ロマンティックですね。

●科学技術では再現できないストラディヴァリウスの魔力

 このように、最適の材質、際立った技術、エイジングの三つが組み合わさって、奇跡的に生まれたのが現在のストラディヴァリウスです。現存する600挺のうち、博物館や個人コレクターの収蔵品になったものは市場に出てきませんから、常に需要が供給を上回る状態。しかも、奇跡的な組み合わせですから、新たな供給のメドはありません。

 ヴァイオリンは1000年保つともいわれる耐久性の高い楽器で、個々の楽器の音のピークがいつになるかは専門家にもわからないとのこと。しかし、日本ヴァイオリン代表取締役、中澤創太さんによると、「ストラディヴァリウスにはずれなし」。年代によって評価は違うものの、ストラディヴァリの製作技術は初期から晩年に至るまで安定していたようです。

 年始番組では芸能人の格付けチェックとしてストラディヴァリウスが登場しますが、ブラインドテストによると、現代の新作楽器との聴き分けは困難だとの結果も出ています。

 貴重なストラディヴァリウスを、世界の一流演奏家が奏でていると思うからこそ、私たちは満足するのかもしれません。伝説も希少性もまじえての評価が、ストラディヴァリウスの魔力なのでしょう。

<参考サイト>
・ストラディヴァリウスはなぜ高い? 天才ヴァイオリン職人が生み出した、世界に600挺存在する銘器の秘密!
https://ontomo-mag.com/article/column/secret-of-stradivarius-20190918/

 
   

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