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『舞いあがれ!』には“理想の日本”が詰まっていた 着地点が明示されていたタイトルバック

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 朝ドラこと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)とは「梅津岩倉」の物語であった。

参考:『舞いあがれ!』ラストの舞のセリフに込められていたものは? 最終回を制作統括に聞く

 東大阪で隣同士の梅津と岩倉。町工場で共働きで忙しい岩倉浩太(高橋克典)とめぐみ(永作博美)夫妻の食生活を梅津家が経営するうめづのお好み焼きがサポートしていた。岩倉家の長男・悠人(横山裕)はお好み焼きが好物になり、実家に帰らなくてもうめづに立ち寄るくらいであった。

 浩太の会社の経営が思わしくなくなると、梅津勝(山口智充)は梅津岩倉で漫才でもやろうと励ます。その言葉はやがて、岩倉舞(福原遥)と梅津貴司(赤楚衛二)の結婚で、ある意味実現した。隣同士で、舞の部屋の窓のすぐ向こうに貴司の部屋があり、ふたりは窓越しによく語り合っていた。そのふたりが岩倉家の2階をリフォームして暮らすようになる。岩倉家の表札が「岩倉梅津」となったとき、亡くなった浩太のことが思い出され、しんみりいい感じであった。

 さらに、悠人が、舞と貴司の幼なじみ・望月久留美(山下美月)と結婚し、久留美が岩倉姓となる。仲良し3人の幼なじみが全員、梅津岩倉に。これはもう、半年かけて、「梅津岩倉」という大家族が東大阪に誕生したという大きな物語の序章だったのではないだろうか。

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 最終回、念願のパイロットとして空を飛んだ舞が「まもなく、ひとつ目の目的地に到着します」と言う。島から島へと飛ぶ空飛ぶクルマの最初の目的地の島のことを差す報告の言葉であり、物語全体における舞の状態(ようやく最初の目標に到達した)も表す。歌人でもある脚本家・桑原亮子は全編で言葉を自在に扱い、セリフに掛詞や見立てや比喩表現、本歌取りなどをふんだんに用いてきた。タイトルの『舞いあがれ!』にもいくつもの意味合いが想起できるし、舞の最後のセリフも、イマジネーションを掻き立てるセリフで〆たのだ。

 「ひとつ目の目的地」とは「梅津岩倉」ビッグファミリーの誕生と考えても間違いではないのではないか。もしかしてこれは、『ゴッドファーザー』的な物語。いや、『渡る世間は鬼ばかり』的な物語なのかもしれない。

 最強の「梅津岩倉」ファミリーのもとに、たくさんの人たちが吸い寄せられてくる。東大阪の町工場ネットワーク、大学のなにわバードマンのOBたち、五島の人たち……と舞がこれまで出会った人たちの力を集めて、空飛ぶクルマを作り、みんなの思いを乗せた代表者として空を飛ぶ。2027年、舞と「かささぎ号」の晴れ舞台を航空学校の同期たちもそろって見守る(なぜか東大阪から)。舞の人生に関係した人たちがほぼ全員が集まってきて、舞が飛ぶことを応援する様子は、こんなに何もかもが有機的に結びつくのはいくらなんでも都合が良すぎやしないかという気もしないではない。だが、これもまた、たくさんの人の思いを大事にし、誰ひとり取りこぼさない理想の社会の比喩であると考えればいい。

 飛行機は社会であり、パイロットはリーダー。『舞いあがれ!』とは、いろいろあって、おつかれ気味の日本という飛行機が、翼を休めながら、再び息を吹き返し飛ぶ日を夢に見た物語なのである。

 かくもひじょうにコンセプトの明確な作品であったが、モデルのいないオリジナルドラマであることから誤解を招くこともあったようだ。初回で舞がパイロットとして登場(幼い舞(浅田芭路)の夢)したため、主人公がパイロットになるものと思い込んだ視聴者もいた。

 中盤まで、人力飛行機に乗り、航空学校で実際に飛行機に乗り、と着々とパイロットらしく生きていた舞。それがリーマンショックと父の死によって人生の方向転換を余儀なくされるという流れは、あらかじめ飛行訓練で天候の変化によって着陸地を変更することになるエピソードによって予言されていた。

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