
本記事は、小林正吾氏の書籍『湘南ラブストーリー 瑠璃色の朝焼け』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
運命の出会い
二人は海からボードを引き上げて砂浜の上に置き、砂浜に足を投げ出して座る。
圭が褒め言葉をかけてくる。
「千佳、今年の春から六回目で、ここまでできるようになるのはスゴイよ。店に保管してもらっている俺の道具は、いつでも千佳が自由に使ってもいいぞ」
千佳がお礼を言う。
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「ありがとう。店のオーナーが圭はウインドサーフィンも、プロ並みの腕前だと言っていたわ。その圭に褒めてもらうと、とても嬉しいわ」
二人が砂浜に座って話をしていると、海岸には朝にあまり見かけなかった軽装の若者達が歩き回っている。その若者達はウインドサーフィンをやるために来ている者達とは、明らかに人種が異なって見える。
この時期、ここの海岸にはたくさんのお洒落な海の家が建ち並び始める。その中には、バンドが生演奏し、東京や埼玉から来た若者達が集まるような劇場仕立ての海の家もある。そこではレゲエのような音楽が演奏され、若者達がそれを聴きながら飛び跳ねて熱狂しているようだ。
千佳が肩を叩いて教える。
「ねえねえ、あの海の家でバイトをしている中学の同級生が、私にこっそりと教えてくれたのよ。あそこの建物の中では大音響の音楽が流れていて、MDMAのような違法薬物も、売人から簡単に手に入るという悪い噂もあるみたいよ」
圭が嫌な顔を見せる。