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奥野瑛太「理想像や夢を描かなくなった」 唐田えりかと語る、“好き”を続けていくこと

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唐田:全然そんなことなかったです!

ーー唐田さんは加奈の役を演じてみてどうでしたか?

唐田:子どもを持つということがきっかけで、人が強くあろうと変わろうとするのを、演じながら感じました。それは私にとって初めてで、すごく不思議な体験だったなと思います。

ーー奥野さんから見て加奈のキャラクターはどうでしたか?

奥野:まさか唐田さんがやるとは思わなかったので、ドキッとしました。いざ現場で対峙すると、唐田さんの気持ちがストレートに伝わってきて。その素敵なエネルギーに気押され、本当にいい作用というか、元気をもらっていましたね。唐田さんは、こんなに優しく物事を見つめているんだといういいエネルギーを感じました。

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唐田:嬉しいです。

ーー劇中の広志のように、自身の実体験や見たことが芝居に生かされた経験はありますか?

奥野:よく言いますよね、犬が死んじゃったときを思い出して泣くとか。僕はそういうことができなくて……。

唐田:私もできないです。

奥野:できないよね。変な話、自分の実体験を照らし合わせて泣くみたいなことが全くできない。むしろ、役がどうにかなっていって、その気持ちが認識できないレベルまで達して、気づいた瞬間に泣いてしまっているというか……泣きたくなくても泣いちゃってる、その瞬間を捉えられたなという感じです。今までその役柄で演じてきたのに、急にここだけ、「あの犬のことを思い出して泣こう」としたら、むしろ泣きながら犬の名前を言っちゃうかもしれない。でも、身につまされることはありました。広志みたいに、実家の母親と父親がなんとなく見守りながら、僕が出演したドラマを観て「どこに出てるの?」って今も言ってくれているので。電話の向こうではあんな顔しながら、「ああ頑張ってるのね」みたいなことを言ってるんだなって。そこはその都度リンクするところがありました。

唐田:私も割と芝居の中で感じられないと感情が動けないところがあります。でも、今まで生きてきた中で、例えば自分の中であのときの怒りの感情とか悔しい感情とか、ちょっとでもリンクした瞬間というのもあったりして。自分と役と両方で出ることもあります。

■理想像や夢を描かなくなった

ーー広志が自分の演技に納得できなくて、もう1回お願いするシーンがありましたが、現場でもう1回お願いしたり、自分の意見を言うときは、普段どうされていますか?

奥野:基本的に納得できないなと思うのは自分の中だけにしています。俳優と現場と作品の正義も違うと思うので、もう1回はやらないですね。

唐田:私も基本的には監督の判断に任せています。OKを出してもらったら監督がOKなんだという感覚でやっています。

奥野:だた今回、台本を読んでいて、草苅監督のパーソナルな部分が散りばめられた作品だと思ったので、最もそれがあるんじゃないかなって僕自身が思い込んでいたシーンについては、「もう1回やらせてください」とお願いしたシーンがありました。最初にやったときに監督はOKしそうになったんですけど、現場の作品作りのそれまでの流れを考えて、「それで本当にいいの?」って思えるような状態だったと僕は感じちゃって。「そんなぬるくやらないで、もうちょっとやりましょうよ~」ってことでやらせてもらいました。だからそこだけは完全に迷惑かけています。ただ、僕の正義とかっていうより、どっちかというと「大切でしょ?」っていう。「このシーンは監督にとっても大切だよね」と僕が勝手に思ったということなんですけどね。

ーー応援してくれているお母さんと広志の関係性が素敵でしたが、奥野さんと唐田さんの身近な方々はどういう形で見守ってくれていると感じますか?

奥野:年もとってきましたからね。あんまり何も言われなくなってきましたけど、僕は映画関係の大学に行きたくて北海道から上京したんです。その前は大喧嘩をしました。北海道でこういう仕事に就くことは全然想像もできない。「それで食っていくには医者になることよりも難しいことだろ!」って親父にぶん殴られて。今の時代ダメかもわからないけど、窓ガラスを割ってメチャクチャに……(笑)。

唐田:結構すごい(笑)。

奥野:そうそう。それぐらいありましたね。反対ではないんですよ。ただ、「お前それぐらいの覚悟はあるのか?」ってことだと思うんです。そういうのは親ながらあるんじゃないですかね。今は温かく見守っていただいています。

ーー唐田さんはどうですか?

唐田:今は家族、友達、みんなが応援してくれているんですけど、私は牧場でアルバイトをしていたときにスカウトしていただいたので、結構な田舎の牧場というシチュエーションに対して「スカウトなんて詐欺じゃないか」と周りが信じてくれませんでした。連絡も取らないほうがいいみたいな感じでしたね。

奥野:怪しいもんね。いきなりね。

唐田:今は応援してくれています。

ーー本作では広志が理想と現実の折り合いをつけることの難しさに直面していきますが、もともと目指していたものと現状の自分を比べるといかがですか?

奥野:こんな大人になっているはずじゃなかったですね。もうちょっと大人だったはずだなと(笑)。でもあるときから、理想像や夢みたいなものは、確かに思い描いていないかもしれないなと思います。今は「こうなりたい」っていうのはないかな。

唐田:私もそうですね。このお仕事を選んだのは自分だし。この選択した仕事を、今は責任を持ってやりたいなっていう思いでやっています。

ーー奥野さんはなぜ理想像や夢を描かなくなったんですか?

奥野:比べるものがないからだと思います。“こういう俳優さんになりたい”と思う人もいるかもしれないですけど、僕の場合は、その人と同じ作品に出ているわけじゃないし、同じ監督と巡り会えているわけでもないし、フィルモグラフィーもバイオリズムもみんな違いますから。そこに悔しいと思う感覚はなくなっちゃったんですよね。好きだからやっている、くらいかな。それが1番だと思うんですけど。

ーー好きなことを続けていく上で、今、励みになってることはありますか?

奥野:まだ僕よりも年上のおじちゃんたちがすげー楽しそうに頑張ってるんですよ。本当に親しい先輩の俳優さんたちとか、監督も含めて。そういう人たちがエネルギッシュに楽しんで現場にいる姿を見ているので、僕はそれに救われています。

唐田:お芝居をしているときは楽しいだけではないんですけど、こうやって映画が完成したときにやっぱり心から嬉しいなって思える自分がいます。だからそういう作品にこれからも出会えるように頑張っていきたいです。

(取材・文=大和田茉椰)

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