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シングルマザーの正体はレジェンド級の殺し屋。チョン・ドヨン主演の胸がすくNetflix韓国映画『キル・ボクスン』

MOVIE WALKER PRESS

アジア人初の主演女優賞の快挙など、今年度の米アカデミー賞を席巻した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)。難題を抱えつつ奮闘する平凡な主婦が、突如スーパーヒーローとして世界の危機に立ち向かう極上のアクションアドベンチャーに、劇場で快哉を叫んだ観客も多いだろう。そんな方々に、ぜひ3月31日よりNetflixで独占配信中の韓国映画『キル・ボクスン』をオススメしたい。

シングルマザーのキル・ボクスン(チョン・ドヨン)は、思春期真っ只中の娘ジェヨン(キム・シア)に手を焼く平凡な主婦。しかしその正体は、仕事は必ず成功させるレジェンド級の殺し屋だった。チャ・ミンギュ(ソル・ギョング)率いる闇の仕事請負会社MK ENT.に属する彼女だったが、再契約を目前に予想外のトラブルが発生。生死を賭けた緊迫の闘いに巻き込まれていく。

■ビョン・ソンヒョン監督の美意識が放つ『キル・ボクスン』の魅力

本作を手掛けたビョン・ソンヒョン監督は、『名もなき野良犬の輪舞』(17)や『キングメーカー 大統領を作った男』(21)で知られる新鋭映画人の一人だ。ノワールを得意とする韓国映画界にあっても、彼の生み出すハードかつスタイリッシュな映像感覚や、愛ゆえにすれ違う痛切な感情のドラマ、説得力のあるディレクションは唯一無二だ。その徹底された世界観の虜となった熱心なファンも多い。

ビョン・ソンヒョン監督は本作の主人公について「キラーとして“人を殺す”職業の傍ら母として子どもを育てているというジレンマで、アイロニーを強調したかった」と明かす。そして「キル・ボクスンは、自分の仕事と子どもをとても愛する暗殺者であり、ワーキングマザーだ。MK ENT.と契約更新を控えたタイミングで、娘との仲がますます疎遠になって苦悩し、様々な人物と交錯していく。殺し屋のキャラクターを扱っているが、家族のエピソードも交えて観客の心をほぐしたかった」と紹介している。さらにこだわったアクションについては「既存の殺し屋映画とは異なるエッセンスを加えてみるのはどうかと思い、俳優と映画をキラーに置き換えて脚本を書いた」と興味深い製作意図も話している。独特の美意識が一層研ぎ澄まされ、アップグレードされたビョン・ソンヒョン監督の堅実な演出力と、カタルシス抜群の充実したアクション、深みあるストーリーに期待が高まる。

■チョン・ドヨン、ソル・ギョング…韓国映画界をリードする圧倒的名優が魅せる珠玉のドラマとアクション!

キル・ボクスンに扮するのは、ドラマ「イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜」も好評のうちにフィナーレを迎えたチョン・ドヨン。熾烈な教育バトルとラブコメディを融合させたこのドラマで、女手一つで娘を育てつつ惣菜店を切り盛りする主婦ヘンソンを天真爛漫に演じた彼女が、『キル・ボクスン』では冷静な殺し屋と子育てに奮闘する母親を演じ分け、再び新鮮な姿を見せてくれる。

ヘンソンはもちろん、世界的な名優として知らしめるきっかけとなった『シークレット・サンシャイン』(07)や、麻薬密売で投獄された無実の主婦を演じた『マルティニークからの祈り』(13)など、これまでチョン・ドヨンは時に重厚な、また時に不撓不屈な“母”の姿を見せてきた。『キル・ボクスン』については「私もまた母親と俳優という二重の人生を送っているので、『キル・ボクスン』にも大きな違和感はなかった」と、自身に引きつけつつ本作への意気込みを語った。多様な作品とキャスティングを欲していたというチョン・ドヨンは、キル・ボクスンのようなキャラクターへのオファーがとても嬉しかったそうだ。マジックペン一つで相手を一撃してしまうシーンやワイヤーアクションまで完璧にこなしたというエピソードに、彼女の作品への熱意がうかがえる。ちなみにキル・ボクスンという役名は、チョ・ドヨンの叔母の本名だという。

「今回が監督と3度目のタッグだが、出演しない理由がなかった。 共に作り上げた映画の中で最も華やかだと思い、無条件に参加した」とひときわ熱い思いを口にするのは、『名もなき野良犬の輪舞』への出演から長らく絆を深めてきた“ビョン・ソンヒョン監督の盟友”ソル・ギョングだ。『キル・ボクスン』では、殺人請負業界を支配するMK ENT.の代表取締役チャ・ミンギュとして、カリスマ性溢れる落ち着きと気迫で強烈な存在感をまとう。一方で「アクション映画ではあるが、チャ·ミンギュはキル・ボクスンに対してロマンティックな感情で接近しようとした」と変身を予告し、先の読めないストーリー展開を期待させるコメントもした。また彼は今回、本格的なアクションにも挑んだ。ロボットアームを装着するなど初めての体験に緊張したものの、次第に面白くなったと感想を伝えた。

また、『虐待の証明』(18)で家庭内暴力を受ける少女を力演した天才子役キム・シアが、キル・ボクスンの愛娘ジェヨンに扮する。他の子どもたちが制服を着て登校する中、一人私服で歩く登場シーンで、すでに彼女が校内の異端児であることが示される。 母が何の仕事をしているのか分からずもどかしさを抱え、心を閉ざす複雑な十代の少女ジェヨンをキム・シアが立体的に演じたことで、A級の殺し屋キル・ボクスンが実は娘と上手くコミュニケーションできないという葛藤に見ごたえをプラスした。

こうした主要人物に加え、より豊かさを加える二人のキャラクターの活躍も楽しみだ。堅実な社会批判とシスターフッドの痛快さを兼ね備えた『サムジンカンパニー1995』(20)や、放浪する現代女性の姿を描き高評価を得たインディーズ映画『小公女』(17)など、堅実な演技力で韓国映画界をリードしてきたイ・ソムが、『キル・ボクスン』ではMK ENT.の取締役でミンギュの妹ミンヒに扮する。彼女は、キル・ボクスンに寛大な兄が面白くない。キャリアウーマン風のスマートなルックスと茶目っ気ある表情のギャップが魅力的なミンヒが、どのようにドラマに絡むか目が離せない。

そして、ドラマや映画に限らず、ブロックバスターから独立系まで出演作は枚挙に暇がないほど絶好調な俳優ク・ギョファンも登場する。彼が演じるヒソンは、キル・ボクスンと同じくMKENT.に所属する殺し屋だ。実力はA級にもかかわらず、なぜかC級判定を受けた謎めいた人物で、武器ではなく靴を手にしたまま“仕事”を遂行しているユーモアたっぷりな姿で興味を刺激する。一方でアクションの撮影の様子を「出演陣は、各自振り付けを作って踊るように演技した」と振り返っていて、静と動が往来する熱演にも期待大だ。

『キル・ボクスン』は、第73回ベルリン国際映画祭で、エンターテインメント性に富んだ話題作が上映されるベルリナーレ・スペシャルセクションに正式招待され、映画祭執行委員長のカルロ・シャトリアン氏から「アドレナリンが湧き出る立派な韓国映画」と絶賛されるなど、すでに世界から熱視線が注がれている。この春、日本でも一大旋風を巻き起こしそうだ。

文/荒井 南
 
   

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