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東京都内、家賃5万円。住める街は?どんな物件が?

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銀座に住むのはまだ早い(柏書房)

 本書『銀座に住むのはまだ早い』(柏書房)は、銀座好きを公言する作家が、家賃上限5万円を条件に、東京で住むことができる町はどんなところか、と東京23区を探索したエッセイである。

 千葉在住で、東京に住みたいと昔から思っているのに、まだ住めない。それなのに自作小説の登場人物の多くは東京在住というペーソス漂う好ルポルタージュに仕上がっている。

 著者の小野寺史宜(ふみのり)さんは、1968年千葉県生まれ。法政大学文学部卒。2006年「裏へ走り蹴り込め」で、第86回オール讀物新人賞を受賞。2008年、第3回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作の『ROCKER』で単行本デビュー。『ひと』で2019年本屋大賞2位。

 「ノー銀座、ノーライフ」というエッセイで、「銀座がないなら人生じゃない」と書いた小野寺さんに、「家賃5万円以内で住めそうな町を巡りましょう。東京23区すべての区に行っちゃいましょう」という依頼が、住宅関連サイトからあった。

 足かけ3年がかりの連載をまとめたもので、第1回の千代田区神保町から最終回の中央区月島まで23回分が収められている。興味のある区や町どこを読んでもいいようになっている。いくつかピックアップして紹介しよう。

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 いま、23区の平均家賃は8~9万円だそうだ。ワンルーム、管理費・共益費込みで5万円という条件は厳しい。毎回住宅関連サイト「SUUMO」で検索する。第1回は千代田区。いきなり難所を選んだが、案の定、該当する物件はない。

 いきなりのルール破りで、6万円で見つかった3畳の物件のある神保町へ行く。物件紹介ではないので、町を探索し、雰囲気をつかむのが主眼。神保町周辺には日本大学や専修大学、共立女子大学などがある。

 小野寺さんは、自分の小説の中に、これらの大学の学生を登場人物に出しているという。「東京を舞台にした小説を書くうえでとても便利なのだ」と書いている。

 物件の近くには小さな公園があった。ビルが立ち並ぶ町であっても、公園に来ると、「ある程度まとまった空を見られるのはいい。そしてそれがアパートの近くにあり、常に意識できることが大事」と評価している。

 その後、古書店街を歩き、激戦区で知られるカレー店に入り、カフェへ。「ちゃんと空もある。本の香りもある。神保町は好きな町になった。もうね、住めますよ」と結んでいる。

 江戸川区小岩では、150件ヒットした中から東小岩にある6畳のワンルームを選んだ。商店街をチェックし、目的の江戸川河川敷へ向かう。海抜が低い地域なので、階段を上り、ようやく河川敷に出る。目の前に広がる河川敷と川、その上の空を見た爽快感を讃えている。

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