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念願のウィーンマラソンに参加決定!女性が涙ながらに歓喜したワケは…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

スポーツ体験記コンテスト大賞作!芸術と音楽の都ウィーン市街を舞台に開催された、ウィーンマラソンに参加した作者の経験をエネルギッシュに描き出したエッセイ。※本記事は、鈴木弓莉氏のエッセイ『滲んだ青』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】【スポーツ体験記コンテスト大賞作】「パスポートに押された出国のスタンプの青いインクに涙が落ちた」

滲んだ青

そのときにエントリーしていたマラソンは5つ、ウィーンとシカゴ、ローマにヘルシンキ、バルセロナだった。それぞれにメッセージを打ち込んだ。

2020年からエントリーをしていたこと、2021年のレースに出場する気でいたこと、ワクチンパスポートも取得済みであること、日本政府の方針で2週間の隔離がなくならないこと、自分は働いており2週間の休みを取得することは不可能であること。そして願わくば2022年に振り替えをしたいこと、もしそれが叶わないならば2021年のレースへのエントリーをキャンセルして欲しいこと。

スマホを打つ指が、悔しさで震えてた。両目からぼろぼろ涙が溢れて、枕のカバーにできた黒っこい滲みが、最初はちっこかったのに、だんだんと大きくなっていた。

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それぞれのマラソンから数日経ってぽつぽつと、規定に則り振替はできないとメッセージが届いた。運営の対応としては至極当然だ。

そんな中で、ウィーンマラソンだけだ。2022年に快く振替をしてくれたのは。

仕事帰りに届いたメッセージを読んで、目の奥がずっしり熱くなって小さく泣いた。小さなことに思うかもしれないけど、わたしにとっては大きなことだった。

展示会場に入ると、2年前にワープしたみたいだった。たくさんの展示ブースがあって、エナジージェルの売り子をしているスタッフが試供品を渡してくれた。シューズの試し履きやマッサージ体験のブースはランナーで大賑わいだし、写真撮影用のパネルには長く伸びる列がくっついていた。

人の波に乗って、そのままゼッケンの受け取りブースに到着する。3万人が参加するこの大会では、番号ごとにカウンターが分かれているので、自分のナンバーのカウンターに移動した。にこやかに対応してくれるスタッフに軽い挨拶をして、パスポートを渡す。身分証の確認をして、わたしのゼッケンが現れて、預け入れバッグにもなるプラスチックのナップザックと一緒に手渡された。

6007。ようやく受け取れた数字を大事にナップザックに仕舞い込んで、帰りの道でナップザックを握りしめて少し泣いた。

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