top_line

【完全無料で遊べるミニゲーム】
サクサク消せる爽快パズル「ガーデンテイルズ」

『舞いあがれ!』には“恋バナ”が多すぎた? 評価が分かれた“チーム桑原脚本”を紐解く

Real Sound

■佳晴の土下座&タックル

 一方で、明らかに不得手に見えるのが「ビジネス」「お金」の話。と言っても、幼少期・五島編あたりは、久留美の服や、久留美の家の薄暗さ・玄関を開けてすぐの場所に流しがある作りなどが生々しすぎるほどリアルだった。また、会社の倒産危機にあった浩太の工場問題や、駆け落ち同然で大学を中退しためぐみ(永作博美)の思いもあり、裕福ではないのに家族に応援されてきた悠人の私立受験、久留美の授業料免除など、教育も含めた「お金」がかなりシビアにリアルに描かれていた。

 しかし、経済格差を描く上で「持てる側」「搾取する側」を描くときに、唐突にチープになる。

 象徴的なのは、別の脚本家に交代した第18週。久留美が恋人の医師・八神(中川大輔)と婚約したくだりで登場する八神の母(羽野晶紀)と、その母に侮辱され、土下座&タックルする久留美の父・佳晴(松尾諭)のシーンなどを見て、いったん本作を脱落した人は多かったのではないか。

 さらに本作で最も視聴者の理解・共感を得られなかったのが、御園(山口紗弥加)だ。新聞記者という職業ながら、取材相手に常にタメ口で、いきなり恋バナなどを聞く馴れ馴れしさは、視聴者の反感を大いに買った。また、これまでは頑張っている人を見る側だったが、そろそろ自分も頑張る側になりたいと語って新聞記者を辞めるのも、記者という職業への侮辱のように思えた。さらに舞と起業し、「こんねくと」を共同経営するようになってからも、「うん、いいね」「いいと思う」と同意するばかりで、記者時代の経験や知識・人脈を生かすことのなかった御園。順調だと言いつつも、「こんねくと」がどのようにお金を得ているのかわからない、ちっとも忙しく見えない点も、気になっていた視聴者は多かった。

広告の後にも続きます

 もう一つ「お金」というと、八木のおっちゃんの収入源や、貴司のパリでの生活費などを心配する視聴者は多かった。企業の経営難のお金の話はするが、基本的に生活費については無頓着なのか。

■「恋愛てんこ盛り」状態

 もう一つ、食傷気味になったのは、「恋愛てんこ盛り」状態であったこと。久留美と悠人、山田(大浦千佳)と営業の藤沢(榎田貴斗)、さくら(長濱ねる)と「むっちゃん」(前原瑞樹)まではいいとして、一太(若林元太)と百貨店社員・百花(尾本祐菜)や、ノーサイドの店主・津田道子(たくませいこ)と佳晴(松尾諭)まで恋愛描写を見たかった視聴者はどれだけいただろうか。

 さらに気になるのは、「妊娠・出産・子育て」と「介護」があまりに端折られ過ぎのために、そこに愛情が感じられないこと。

 祥子が脳梗塞により麻痺が残り、東大阪で一緒に暮らすようになったのに、介護もリハビリ通所の描写は一切ない。舞と貴司の子・歩はひたすらおとなしく聞き分けが良く、病気もトラブルもなく手がかからない上、貴司はパリに行ってからも、舞を思い出すことはあっても歩を思い出すことはなく、電話も舞にしかしないこと。こんなにも育児の描写が薄いのであれば、いっそ短歌と飛行機という、それぞれに息ができる場所や夢に全てを注ぎ、「子供を持たない夫婦」という選択があっても良かったのではないか。

 最後に、恋バナなどに尺を使い過ぎたためか、肝心の「空飛ぶクルマ」開発が非常に駆け足だったことも、惜しまれる。

 総じて「幼少期・五島編」や「なにわバードマン編」など序盤があまりに繊細で深く、しみじみ良い作品だっただけに、途中から登場するキャラや展開の粗さが目立ってしまった感はある。

 本作を擬人化するなら、少々乱暴な言い方だが、日頃穏やかで物腰がやわらかな繊細そうな人の、扉の開け閉めなど生活音が意外と大きくて荒っぽかったり、家族に対しての物言いだけきつかったりするのを見てしまったようなギャップというか。「いつもぶっきらぼうでコワモテの不良が、実は雨の中で犬に傘をさしてあげていた」のと逆の現象というか。

 欲を言えば、桑原脚本のみで、桑原の思い入れのある人物、好きな世界観のみで2~3カ月の作品として『舞いあがれ!』を観てみたかったという本音は、本作の素晴らしい部分への最大限の讃辞としてご容赦いただきたい。

(田幸和歌子)

  • 1
  • 2
 
   

ランキング(エンタメ)

ジャンル