開幕バーレーンGP、続くサウジアラビアGPと、新型車「AT04」のパフォーマンスに苦しみながらも、その力を十二分に引き出してポイント圏内に肉迫する力走を見せた日本人ドライバーに対しては、海外メディアも高い評価を下したが、言うまでもなく、それが彼を完全に満足させることはない。
オランダのF1専門サイト『F1MAXIMAAL.NL』は、角田の新たなレースに対する「空力面のアップデートが行なわれる上に、より車に慣れてきているという感覚がある」と期待のコメントの他、「昨季のレース(予選13番手・決勝15番手)の挽回がしたい。ここのコースは好きだし、ポイント争いができれば嬉しい。今週末はもう絶対に、11位フィニッシュはしたくない」という強い意気込みを紹介している。
同じくオランダのF1専門サイト『RN365』は、そんな角田を「貧弱な2023年のスタートを切ったアルファタウリの一筋の輝く光」と表現。彼とルーキーのニック・デ・フリースがともにトリッキーな車によって、「“ヒット”ではなく“ミス”と呼ぶべき幕開けを迎えた」としながらも、そのパフォーマンスはポジティブな印象を見る者に与えるものだったと称賛した。
サウジでは、チーム代表のフランツ・トストが公の場で、自チームのエンジニアに対して「彼らをもう信用していない」という厳しい言葉を発するという異常事態の中、同メディアは「角田は間違いなく、グリッド上で最もプレッシャーに晒されるドライバーだった」として、車の性能不足にもかかわらず、その手腕で状況を打破する難儀な任務を課せられていたと指摘する。
そして、「バーレーンよりもサウジのコースの方が適している」という楽観的なコメントの通り、22歳は「予選でチームメイトに約0.3秒のマージンを保ち、Q2進出はならなかったものの、決勝レースでは際立ったパフォーマンスを発揮した」。ケビン・マグヌッセン(ハース)と10位を懸けて熾烈なバトルを展開し、残り4周までその座を守り続けた。
同メディアは、「あと少しのところでポイントが指の間からすり抜けてしまい、角田は明らかにフラストレーションを感じたが、アルファタウリやレッドブル・グループのドライバーに対する“冷酷”な姿勢を考えると、彼のパフォーマンスと顕著な成長ぶりは非常にタイムリーなものだった」と綴り、トスト代表の「ユウキは多岐にわたって、大きな前進を遂げた」との賛辞を紹介している。
また、ポッドキャスト『F1 Nation』の司会を務めるリー・マッケンジー氏は、角田の今季の「成長」について、チームメイトが変わったことが影響していると指摘。アルピーヌに移籍したピエール・ガスリーとの過去2年間の関係は非常に良好なものだったが、そこでの角田は完全にチームのナンバー2ドライバーだったという。
「F1において、全てを学んだピエールがチームを去ることになった時、ユウキがどれほど打ちのめされたかが窺い知れる。それは決して大袈裟なものではないと思う。彼らの関係は、見ていて本当に素敵なものだった。それはまさに、兄と弟のような関係だった。ゆえに、ピエールがアルファタウリを去ることを知った時、大きなものを失ったと思っただろう」
そして、年上で他のカテゴリーでの実績が十分なデ・フリースがルーキーとして到来することになった時、「(F1での経験がある)ユウキには大きな役割が課せられることになり、また有能なニック(・デ・フリース)の加入によってプレッシャーも生まれた」と、一気にこれまでと置かれる立場は変わったという。
「これこそ、デイビッド・クルサード(元F1ドライバーで現コメンテーター)が言っていた、F1におけるチームメイトだ。ベストフレンドは必要ない。そして、実際にニックは自身の力を示すために、最初からチームメイトを倒したいと思っていた。それゆえに、ユウキは成長せざるを得なかったのだ」
構成●THE DIGEST編集部
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