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鑑定士「本物だが美術品としての価値は…」それでもご主人が歓喜したワケ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

好奇心旺盛で多趣味なご主人と明るい奥さん、すくすく育つ息子に囲まれた飼い犬・マックス。「寝て、散歩して、食べて、また眠る」それだけと侮るなかれ。家族の日常、そして奇妙な人間社会を犬の目から語るワンダフル・ストーリー。※本記事は、高見龍也氏の小説『吾輩は犬である』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

多趣味なご主人のコレクション…「棚から牡丹餅」な鑑定結果とは

そして、さっそく店内に入り、中国人の店主の方に色々と尋ね始めた。

「あそこに置いてある中国春秋時代の耳付き盃は、本物かい? ゼロが二つついて九十万円なら納得できるが、九千円なんて安い値段で買えるわけがない。偽物(にせもの)じゃないのか?」

と聞いたところ、中国人の店主は、誠に真剣な眼差(まなざ)しでご主人の顔を見ながら、

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「いや! 絶対に本物です。信じてください。保証します。中国では、農家の方々が農作業で鍬(くわ)で地面を耕していると、時々土の中から古い陶磁器を見つけることがあるんです。彼らは、品物の価値が分からないので、日曜日になると、それらの陶磁器を風呂敷に包んで上海や北京などの大都市に出かけていき、路上に風呂敷を広げて露店(ろてん)で売るのです。私のように本物か偽物かを見分けることができる鑑定眼を持っている人間は、あまりにも安い値で売られているので喜んで購入するのです」

と一気にまくし立てたそうだ。吾輩のご主人は、その中国人があまりにも自信たっぷりに理路整然(りろせいぜん)と説明するので、「うーん」と唸(うな)ったそうだ。

そして、考えに考えた末、〈よし。九千円なら騙(だま)されたと思って買うか〉と購入したそうだ。

そして、ご主人は自宅に帰って、包み紙を開け、その耳付き盃を様々な角度から眺め、手で触れ、台所から日本酒を持ってきて注ぎ、一口飲んでみたそうだ。

しかし、どんなに触れても、眺(なが)めても、日本酒を注いで飲んでも一向に真偽(しんぎ)のほどが分からない。悩んでいると、「!!!」

ハッと思いついたのは、電話帳を調べて長崎県内の骨董店を五~六軒巡(めぐ)って鑑定してもらうことだった。

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