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『ガンダムZZ』第七話に見た『F91』の原型 コスモ貴族主義につながる“騎士道精神”の欺瞞を読む

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 連邦側の勢力であるアーガマからすれば、コロニーへの壊滅的被害はそもそも避けなくてはならないものである。一方でマシュマーらエンドラ側の狙いもコロニーの破壊ではなく、あくまでシャングリラの住民たちを自分たちの味方につけることである。「コロニーを壊滅させては元も子もない」というのは両者に共通した前提条件であり、そうであるからこそマシュマーは全面的にアーガマへと攻撃を仕掛けることができなかった。

 しかし、今回のマシュマーは完全に業を煮やしている。コロニーに一定の被害が出るとしてもそれはジャンクヤードをこそこそ逃げ回るアーガマのせいであり、ストーリー開始当初はエンドラの主砲によるアーガマへの直接攻撃を企てていた。コロニーの内部で大型艦同士の戦闘を展開するつもりだったわけで、コロニーの住人からすればとんだとばっちりである。

 そこをギリギリのところで止めたのが、どうやらマシュマー以外のエンドラのクルーにもインストールされていた騎士道精神である。パイロットとしての誇りにかけて正々堂々と仲間の仇を討ち、武力ではなく理念でコロニーの住人を屈服させる……。パンパらエンドラのパイロットが目指したのは、そんな勝利のシナリオである。

 パンパたちは当初「後ろから敵を撃つのは卑怯だ」とトーレスの乗ったメタスを後方から攻撃することすら控えるのだが、作戦の失敗を受けてなし崩し的に武器を乱射、コロニー内への被害を考えない攻撃をかけてくる。物語上では悪役なのでこういう行動をとった……とは考えられるのだが、この「高貴な理想を抱えたエリートたちが、結局コロニー内でなし崩し的に無茶苦茶な戦法を取る」という点は、『ZZ』の5年後に公開された『機動戦士ガンダムF91』へと受け継がれているように思う。

 『F91』で悪役となったクロスボーン・バンガードは、「コスモ貴族主義」という思想を持った集団である。コスモ貴族主義とは、簡単に書けば「高貴な人間が重責を負う」というノブリス・オブリージュ的思想をベースとしつつ、既得権益を排除した階級制度社会を理想とし、その障害となる地球連邦政府を打倒することを目指す考え方だ。優れた資質を持つ(とされる)少数の特権階級がその他大勢を支配する社会を目指すが、その社会の成立・維持のためには人類の粛清すら辞さないという残虐さも秘めている。

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 思うに、このコスモ貴族主義という発想のとば口は、この『ZZ』のマシュマーやエンドラのクルーたちに現れているのではないだろうか。自分たちは愚昧な民衆の上に立つべき存在だと信じて疑わず、正々堂々と敵を撃破しようとするが、策がうまくいかないと途端にヤケクソ気味の攻撃を繰り出してくる……。ギャグっぽく演出されてはいるが、騎士道精神を振り翳しながらコロニー内で相当な無茶をする様子は、クロスボーン・バンガードの雛形のようである。首尾一貫しておらず、状況に応じて言動がコロコロと変わる自称「騎士道精神」をさらに突き詰めた先にあるのが、コスモ貴族主義なのではないだろうか。

 そんな貴族主義まがいの思想を持ったエンドラのパイロットたちは、新たに登場したルー・ルカの助けを借りたジュドーたちによって倒される。またしても「貴族主義的エリートたちが、生命力に満ちた子供たちのアイデアと度胸によって倒される」という流れが繰り返されたわけである。なんだか『F91』のストーリーの原型を見る思いだが、アーガマも補給を終えていよいよシャングリラから出港という流れ。『ZZ』のストーリーはようやく序盤を終え、次回以降はいかにして宇宙に逃れ、マシュマーの追撃を振り切るかが物語の争点となっていく。

(しげる)

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